National Clinical Databaseを用いた領域横断的なアウトカム解析による医療の質の向上に関する研究

文献情報

文献番号
201620026A
報告書区分
総括
研究課題名
National Clinical Databaseを用いた領域横断的なアウトカム解析による医療の質の向上に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-017
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
岩中 督(東京大学医学部附属病院 小児外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高本 眞一(三井記念病院 心臓血管外科)
  • 後藤 満一(大阪府立病院機構大阪府立急性期・総合医療センター)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院 心臓血管外科)
  • 橋本 英樹(東京大学大学院医学系研究科 保健社会行動学)
  • 宮田 裕章(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学)
  • 掛地 吉弘(神戸大学大学院医学系研究科 食道胃腸外科学)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学医学部 臓器再生外科学)
  • 高橋 新(慶應義塾大学医学部 医療政策・管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,916,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動 研究分担者 高橋 新 東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座( 平成28年4月1日~28年8月31日)→ 慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室(平成28年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究はNCDとの連携の下で,より良い医療を長期的に提供できる体制を構築するため,臨床現場との横断的な連携により体系的なデータ収集と実証的な分析を行うものである.様々な背景を変数として,アウトカムの解析を行い,関連因子の整理を行う.さらに,結果予測が可能となるプログラムの開発や,説明変数に対する介入方法の検討・試行・確立などを行い,アウトカムを改善させるために必要な事項の整理を行う.
研究方法
NCD症例登録はWebを介して行い,施設診療科を単位としてデータの蓄積を行った.2016年度の分析として,2015年1月1日~12月31日に手術を受けた症例について,外科専門医制度に基づき,外科専門医制度上で認められる術式に関する全体の①手術症例数,②外科専門医制度上の7つ各領域(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,③各領域の主な術式の手術件数を分析した.また,様々な背景を変数としたアウトカム解析を行い,関連因子の整理を行うため,消化器外科領域における4術式(低位前方切除術,右半結腸切除術,膵頭十二指腸切除術,肝切除術)を対象に死亡あるいは術後合併症などのアウトカムを従属変数に設定し,χ二乗検定による単変量解析を行う.さらに,新規領域の参画として,形成外科領域および泌尿器科領域のシステム設計検討状況報告と病理領域における症例登録状況についても報告する.
結果と考察
2016年12月時点では4,500以上の施設が参加し,700万以上の症例情報が集積されている.2015年に実施された手術について,外科専門医制度上認められる術式に関して登録された施設診療科を対象に,①手術症例数,②7つの領域別(消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児)の手術症例数,③領域ごとの主なNCD術式別の手術件数を分析した.その結果,2015年の登録施設・診療科数は3,712施設5,395診療科が手術症例の登録を行い,2015年の登録手術件数は1,466,831件であった.NCDにおける領域別の手術症例数,各領域の主要な術式の詳細な手術件数も明らかとなった.
 新規参画領域についても,今年度から病理科による症例登録が正式に稼働している.また,形成外科領域および泌尿器科領域については,平成29年度からの症例登録開始に向けて,学会内に設立された検討委員会を約1ヶ月に1度の頻度で開催しデータベース構築に向けた打合せを行っている.形成外科領域および泌尿器科領域において,今年度内にシステム構築が概ね完成し,テスト運用を経て来年度の運用開始を予定している.
施設における診療提供体制に関する情報と症例データを用いたアウトカムに影響を及ぼす因子の整理では,死亡と術後合併症の発生について解析を行なった.専門医数やCancerBoardなど各種カンファレンスの開催といったストラクチャーとプロセスの両面で死亡と術後合併症に影響をあたえることが示唆された.これまでにもカンファレンスの開催や専門医数によるアウトカムへの影響について報告されており,それらを裏付ける結果であった.
結論
本研究により,NCD における 2015 年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,手術症例数,消化器・腹部内臓,乳腺,呼吸器,心臓・大血管,末梢血管,頭頸部・体表・内分泌外科,小児の7 つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.病理領域においては,2016年度より症例登録が開始しとなり,2017年3月時点で922施設より約11,000件の登録がされている.また,形成外科領域および泌尿器科領域については2017年度の症例登録を予定しており,2016年度内に入力に関する仕様が確定され,システムのテスト運用が開始された.本稼働に向けて最終調整を行っている.
さらに,施設機能情報と症例データを用いた死亡と術後合併症に関する因子の要因分析では,専門医数やCancerBoardおよび各種カンファレンスの開催,チームでの手術・術式決定プロセスの重要性についてこれまでの先行研究と比較した上でも明確なものとなった.
今回は消化器外科領域に限定した解析であったため,同様の手法を他領域に拡大させることや今回の研究では実施されていない都道府県や二次医療圏,地区町村といった「地域」単位での評価(距離による影響や地域特性など)について今後行うことで,より詳細な医療の質評価に繋がることが期待される.

公開日・更新日

公開日
2017-09-11
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620026C

収支報告書

文献番号
201620026Z