大都市圏における在宅医療の実態把握と提供体制の評価に関する研究

文献情報

文献番号
201620021A
報告書区分
総括
研究課題名
大都市圏における在宅医療の実態把握と提供体制の評価に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-012
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
石崎 達郎(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 田宮 菜奈子(筑波大学 医学医療系)
  • 福田 治久(九州大学大学院 医学研究院 )
  • 光武 誠吾(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,160,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
大都市圏は人口規模が大きくかつ急速な高齢化を迎えており、大都市圏特有の高齢化を見据えた在宅医療提供体制の整備が急務であるが、在宅医療の実態は明らかでない。本研究は、後期高齢者医療広域連合レセプトデータを分析して在宅医療提供に関連するエビデンスを創出し、在宅医療推進の手立てを検討することを目的とする。
研究方法
レセプトデータを用いて、1) 在宅医療患者の特性と在宅訪問診療の実態把握(東京都の後期高齢者における在宅医療の実態把握、大都市圏の二次医療圏別在宅医療患者割合と各種社会指標との関連)、2) 在宅医療患者の入院医療の実態把握、3) 在宅医療に関連する医療提供量・費用分析(経管栄養実施患者における在宅医療および入院医療の医療費比較)を実施した。また、厚生労働省「在宅医療にかかる地域別データ集」と総務省統計局「統計でみる市区町村のすがた2014」を用い、4) 全国市町村別にみた在宅死亡割合と地域特性に関する研究を実施した。
結果と考察
東京都の後期高齢者における在宅医療の実態把握:東京都の後期高齢者における在宅医療患者数は月約7万人、75歳以上人口の約5%を占める。訪問診療の場は居住系施設が過半数を占めており、居住系施設における高齢者医療介護ケアの提供について検討が必要である。保険証住所地は都内だが実際は都外の居住系施設等に住んでいると考えられた在宅医療患者が1割程度存在する可能性があり、実際の居住地を把握して在宅医療需要を正しく推計する必要がある。
大都市圏における二次医療圏別にみた各種指標と在宅医療患者割合の関係:在宅医療患者割合が低い二次医療圏では、慢性期病床や高齢者施設等が充実していたことから、要介護高齢者の生活場所として、在宅よりも施設が望まれている可能性が考えられる。
在宅医療患者の入院医療の実態把握:在宅医療患者の入院先医療機関は86%が都内で完結していた。しかし、東京都内に保険証住所地があっても実際は都外で生活している者が存在する可能性が考えられることから、今回の入院医療都内完結割合は過大評価された可能性がある。
全国市町村別にみた在宅死亡割合と地域特性に関する研究:医療提供者側の要因として看取りを実施する診療所や訪問看護ステーションといった在宅看取りを支援するサービスの多寡が、在宅死亡割合と関連していた。また、死亡者および家族の生活環境に関わる要因として、経済力や家族介護者の存在、住環境が在宅死亡と関連していた。
大都市圏における在宅医療の実態把握と提供体制の評価に関する研究:経管栄養実施者を対象に、肺炎、脳血管疾患後遺症、認知症について、在宅医療と入院医療の費用を比較したところ、在宅医療群で消費されていると考えられる介護費用を加味しても,在宅医療群の方が医療資源投入量は少ないことが示唆された。
結論
東京都の後期高齢者における在宅医療の実態は、居住系施設における訪問診療が過半数を占めており、居住系施設のケア提供のあり方、ケアの質保証等が、大きな課題である。住所地特例として自治体が把握されている者以外にも、住所地を異動していない場合も考えられ、このような患者の居住地の把握方法を検討し、在宅医療需要を正しく把握することが必要である。
大都市圏における二次医療圏別にみた各種指標と在宅医療患者割合の関係では、東京都では在宅医療利用者の割合も医療資源の分布も二次医療圏間で差を認めた。在宅医療患者が地域で安心して生活を継続するため、隣接する二次医療圏で補完し合いながら、在宅医療サービスを継続的に提供する必要がある。
全国市町村別にみた在宅死亡割合と地域特性に関する研究では、自宅での死亡に関連する市町村の要因を明らかにするために、医療、社会経済要因との関連を探索的に分析したが、今後はその他のデータベースを用いることで、在宅死に関わるその他の要因を検証するとともに、個人を単位とした研究を進めていく必要がある。
大都市圏における在宅医療の実態把握と提供体制の評価に関する研究においては、今後は多変量解析手法を用い、患者属性を調整した費用比較分析の実施が必要である。

公開日・更新日

公開日
2017-12-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-12-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620021Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
7,999,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,738,830円
人件費・謝金 1,808,788円
旅費 1,095,506円
その他 516,791円
間接経費 1,840,000円
合計 7,999,915円

備考

備考
実支出額は7,999,915円であったが、返還は1,000円単位で行わなければならないため、補助金確定額は7,999,000円となり、差異が生じた。

公開日・更新日

公開日
2020-05-26
更新日
-