へき地医療において提供される医療サービスの向上とへき地医療に従事する医師の労働環境改善に係る研究

文献情報

文献番号
201620020A
報告書区分
総括
研究課題名
へき地医療において提供される医療サービスの向上とへき地医療に従事する医師の労働環境改善に係る研究
課題番号
H28-医療-一般-011
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
梶井 英治(自治医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 前田 隆浩(長崎大学 医学部)
  • 谷 憲治(徳島大学 病院総合診療部)
  • 井口清太郎(新潟大学大学院 医歯学総合研究科)
  • 今道 英秋(自治医科大学 医学部 )
  • 澤田 努(高知県高知市病院企業団立高知医療センター総合診療科)
  • 森田 喜紀(自治医科大学 医学部 )
  • 小谷 和彦(自治医科大学 医学部 )
  • 古城 隆雄(自治医科大学 医学部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、社会変化に応じた適切なへき地医療の提供体制整備と、へき地医療に従事する医師などのキャリアパスや労働環境整備のあり方について多面的な分析と検討を行うことである。また、厚生労働省が主催する全国へき地医療支援連絡会議においてグループワークの企画・運営による支援を行うことである。
研究方法
 都道府県、へき地を有する市町村、へき地診療所に従事する医師・看護師について自記式質問紙調査を実施するとともに、全国へき地医療支援機構等連絡会議において、へき地保健医療計画に関するグループワークを企画、運営も行った。
結果と考察
1)都道府県のへき地医療提供体制に関する調査
 へき地診療所の経営形態、医師配置の現状、将来のへき地医療体制に対する都道府県が認識している課題や検討状況が明らかになった。また、修学資金対象者と自治医科大学卒業医師に対する期待される役割の違い、新しい専門医制度への対応状況についても把握した。さらに、将来のへき地医療体制や医師のキャリア形成について検討する場の有無や、都道府県の課題認識、リーダーシップへの期待についても明らかになった。
2)市町村のへき地医療体制に関する調査
 全国のへき地診療所に関する医師・看護師数、対象人口などの情報を収集した。調査の結果、予想以上にへき地医療支援機構による代診調整を受けている市町村が少ないことが明らかになった。今後、へき地を抱える市町村の高齢化・過疎化の進展により、常勤医師の配置は益々困難な状況下に置かれる。そのため、へき地医療拠点病院からの医師派遣などによる「面で支える医療」について検討すべき状況となってくることから、へき地医療支援機構との連携も不可欠な時代になってくると思われた。
3)へき地に勤務する医師に関する調査
 診療業務については、後方病院との連携が課題となっており、勤務環境としては研修機会の確保、行政の支援、協力等の課題があげられた。診療能力の研鑽については、平日に研修日がある者は約3分の1で、学会や講習会等で診療所を離れる場合には、休診にするという回答が4分の1にみられた。専門医取得については、3割が専門取得に向けての研修を希望していたが、順調に研修を受けている者は、1割に満たず、へき地勤務の医師が専門医研修を受けることは事実上難しい実態であった。2025年の医療提供体制に向けての問題は、5割が医師、看護師の確保を問題視しており、望ましい経営形態として4割が診療所のグループ化を、3割が出張診療所化と回答していた。
4)へき地に勤務する看護師の看護実践能力向上のための研鑽と看護体制の現状
 へき地診療所看護師の研鑽の場は十分ではなく、ICTを活用した研鑽機会の確保や代替看護師確保のための仕組みづくり等が必要と思われた。また、特定行為に係る研修については、一定の受講ニーズがあることが明らかになったため、身近なところで研修を受講できる体制づくりが必要であると思われる。今後の看護体制検討のあり方として、市町村やへき地医療拠点病院がリーダーシップを発揮し、協議の場を確保し、市町村や住民、へき地診療所、へき地医療拠点病院、その他の関係機関をメンバーとして検討していくこと等が求められる。
5)平成28年度 へき地医療支援機構等連絡会議の支援
 平成29年1月30日に厚生労働省で開催された全国へき地医療支援機構等連絡会議において、「第11次へき地保健医療計画を振り返り、積み残された課題」、ならびに「次期計画(医療計画と統合)の策定、実行を踏まえた方向性について」をテーマとしたグループワークを企画し、研究班は各グループにおいてファシリテートを行った。積み残された課題として、人材不足(医師、看護師不足等)、人材育成(自治医科大学卒業医師、地域枠の学生)、各関係機関、部署間の連携不足(へき地医療支援機構、地域医療支援センター、大学等)、人口減少等への対応(患者数や無医地区の減少)等があがった。また、次期計画の方向性として、人口減少・高齢化への対応(診療所のグループ化やICTの活用等)、地域枠医師のキャリア支援、へき地医療の将来ビジョンの共有、関連機関(拠点病院、へき地医療支援機構等)との協力体制の構築、連携等があがった。
結論
 都道府県、市町村、へき地診療所に勤務する常勤医師、看護師を対象とした自記式質問紙調査と、平成28年度全国へき地医療支援機構等連絡会議への支援を行った。へき地医療の現状と課題、専門医制度や特定行為に係る研修への対応と課題、2025年以降のへき地域医療体制への検討状況等について明らかになった。また、全国へき地医療支援機構等連絡会議では、第11次へき地保健医療計画を振り返り、積み残された課題と次期計画(医療計画と統合)の策定、実行を踏まえた方向性について、活発な議論が行われた。

公開日・更新日

公開日
2017-12-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
分担研究報告書
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分担研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-12-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,133,370円
人件費・謝金 0円
旅費 344,960円
その他 1,521,670円
間接経費 0円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
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