首都直下型地震・南海トラフ地震等の大規模災害時に医療チームが効果的、効率的に活動するための今後の災害医療体制のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201620016A
報告書区分
総括
研究課題名
首都直下型地震・南海トラフ地震等の大規模災害時に医療チームが効果的、効率的に活動するための今後の災害医療体制のあり方に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-007
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小井土 雄一(独立行政法人国立病院機構災害医療センター 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 山田 憲彦(防衛医科大学校 幹事(空将))
  • 定光 大海(国立病院機構大阪医療センター 救命救急センター 診療部長)
  • 松本 尚(日本医科大学 救急医学 教授)
  • 本間 正人(鳥取大学医学部 救急災害医学 教授)
  • 森野 一真(山梨県立中央病院 救急センター 副所長)
  • 中山 伸一(兵庫県災害医療センター センター長)
  • 近藤 久禎(国立病院機構災害医療センター 臨床研究部 政策医療企画研究室長)
  • 阿南 英明(藤沢市民病院 救命救急センター センター長 救急科主任部長)
  • 石原 哲(白鬚橋病院 名誉院長)
  • 高橋 毅(国立病院機構熊本医療センター 副院長 救命救急センター長)
  • 海野 信也(北里大学医学部 産科学 周産期医学 教授)
  • 甲斐 達朗(大阪府済生会千里病院 救命救急センター 救急(外科)顧問)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
11,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、南海トラフ地震、首都直下地震等の大規模災害時に医療チームが効果的、効率的に活動するためにDMAT、災害医療コーディネーター、EMIS等の情報システムの研究を進め、マニュアルやガイドラインを策定し、災害医療全体の改善を図ることを目的とする。
研究方法
東日本大震災以降、様々な医療チームが整備されてきている。DMATに関して、局地災害対応や消防との連携に関しては、緊急消防援助隊訓練等でDMATと連携した実働訓練が行われている。また大規模災害については、内閣府「大規模災害時医療活動訓練」が開催され、自衛隊等との広域搬送訓練等が実施されている。しかし、大規模災害時DPAT、JMAT、日本赤十字社救護班等の医療チームや各職能団体・学会などとの連携および訓練に関しては十分とはいえない状況がある。また、被災地に多く集まる医療チームの派遣調整を行うことを主目的とする災害医療コーディネーターの業務や指揮系統に関しての標準化は不十分である。これらのことから、大規模災害時におけるDMATと他の医療チーム等との連携システムの構築、消防・自衛隊等の他機関との連携に関する問題点の抽出、災害医療コーディネーターの市町村レベルでの活動の標準化、EMISの改善に係る提言等を行う。また、DMATと関係機関が有機的に連携するためのロジスティックスの強化が必要である。これらを通じて発生が切迫していると考えられる、首都直下地震や南海トラフ地震等の大規模災害に備える。
平成28年熊本地震では東日本大震災以降構築してきた新しい災害医療体制の真価が問われた事例であり、その活動の評価・検証を追加で実施する。
結果と考察
平成28年熊本地震における医療活動について、平成29年1月11,12日に熊本市において、熊本地震医療救護検証会を行った。熊本県、保健所、DMAT、日本赤十字社、JMAT、DPAT、被災病院などの代表140名が参加して行われた。災害医療コーディネート体制に関しては、本研究策定ガイドラインにおいて、県庁、二次医療圏、市町村の三層構造を提唱してきたが、阿蘇地域で県庁、保健所、各市町村の3層による調整が図られ、良好な結果であり、ガイドラインが活かされた。EMISに関しては、アクセス数の最高値は、熊本地震において11.7万件/時に達したが、サーバー稼働はいずれも正常であった。なお、熊本県においてEMIS登録の全病院化が達成できていなかったため、臨時登録作業を行なっての対応を余儀なくされた。熊本地震においては10か所の病院避難が行われたが、その適応、手段の検討以外にも病院避難を支援するDMATの安全管理が今後重要であることが確認された。また、各組織間の連携については、情報共有の困難性が指摘された。
熊本地震検証以外の研究では、南海トラフ地震等の甚大災害では、被災地の重症患者を被災地外へ搬送する従来のDMAT基本指針では対応しきれない可能性が高く、新たな代替え活動指針の検討を行った。長期間被災地内で医療を継続する体制を具体的に検討した。また、被災地外へ搬送する手段として、列車を用いた広域医療搬送の可能性についても検討を行った。
周産期・小児医療提供体制に関する研究においては、小児周産期災害リエゾン研修会のカリキュラム・教材を作成し、研修会を開催した。本研究班では、地域においてその役割を担うことが期待される災害時小児周産期リエゾンの役割を明確化し、人材養成を行うとともに、各地域のネットワーク形成を支援した。
熊本地震においては、県レベル、二次医療圏レベル、市町村レベルの医療救護調整が、災害医療コーディネーターを中心に行われたことは、東日本大震災からの進歩と考えられた。また、その本部機能をロジスティックスの専門家が支援したことも改善点であった。一方で、様々な課題も新たに出た。主な課題として、二次医療圏、市町村レベルの災害医療コーディネートの標準化、DMATの安全管理、病院避難のあり方があげられた。DMAT安全管理に関しては、引き続きこの研究班で検討する必要があると考えられた。
結論
平成24年3月に厚生労働省医政局長通知で「災害時における医療体制の充実強化について」において今後の災害医療の目標9項目が示され、本研究班はこれら目標の具現化に貢献してきた。熊本地震においては、正にその真価を問われたが、この5年間の研究が活かされたと考える。しかし、熊本地震で新たな課題も再び抽出されたので、当研究班は更なる検討課題を持つことになった。

公開日・更新日

公開日
2017-12-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620016Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,800,000円
(2)補助金確定額
11,800,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 2,777,465円
旅費 5,898,958円
その他 2,523,577円
間接経費 600,000円
合計 11,800,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-01
更新日
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