歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究

文献情報

文献番号
201620014A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科衛生士及び歯科技工士の復職支援等の推進に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 雄一(国立保健医療科学院)
研究分担者(所属機関)
  • 大島 克郎(日本歯科大学東京短期大学)
  • 三浦 宏子(国立保健医療科学院・国際協力研究部)
  • 八木 稔(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
  • 大内 章嗣(新潟大学大学院医歯学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 平成26年から地域医療介護総合確保基金を活用した事業が各都道府県で開始されたことを契機に、全国各地で歯科衛生士と歯科技工士に対する復職支援事業が行われるようになってきたことから、その内容を分析するとともに、今後の展開に向けて好事例と思われる事業についてまとめた。また復職支援事業は歯科衛生士と歯科技工士の需給と表裏一体をなすものであることから、需給について様々な角度から分析を行った。

研究方法
 歯科衛生士・歯科技工士の復職支援等の事例収集は、都道府県行政や関係団体を通じて収集を行い、好事例と思われたものについては資料収集を進めるとともに視察に赴き、関係者への聞き取りを行い、事例の整理を行った。需給については、医療施設静態調査(歯科診療所票、平成26年)と衛生行政報告例・厚労省報告例(昭和56~平成26年)の個票データ利用に関する厚労省より目的外利用の許可を得たデータを用いて歯科衛生士・歯科技工士の市区町村別分布や都道府県別にみた歯科衛生士数の推移の検討などを行った。また、秋田県歯科医師会に依頼した技工士不足の徴候に関する質問紙調査を実施し、歯科衛生士・歯科技工士の職業認知度に関するWeb調査のモニタに対する調査を行った。このほか政府統計の公表値や過去に研究者が行った調査データの再利用した分析として、地域保健・健康増進事業報告等を用いて地域活動歯科衛生士数の推計、社会医療診療行為別調査/統計を用いて義歯需要の推移と予測などを行った。関係者への意見聴取は2回実施下(平成28年7月と平成29年3月)。以上の研究成果は、研究班ウェブサイトに収載した。

結果と考察
 歯科衛生士に対する復職支援では、全国的には都道府県から都道府県歯科医師会が委託を受け歯科医院での復職を目指した研修会が広く行われていた。しかし、一部地域では、歯科衛生士の役割そのものが拡がりを見せていることを踏まえ、歯科医院での雇用だけでなく歯科衛生士の役割を拡げるという視点で事業が行われており、今後に向けて参考になる事例と思われた。歯科衛生士の需給については、様々な角度から分析が行われ、地理的な分布が他の歯科職とは異なっていること、地域活動歯科衛生士(在宅歯科衛生士)の数は1万7千人弱いると推定されたこと、歯科医院長が考える理想的な歯科衛生士数と現実との差から求めた歯科衛生士の不足数は4万7千人弱と推計されたことなど、が明らかとなった。
 歯科技工士については歯科衛生士に比べると復職支援事業として実施されているケースは少ないが、若い年齢層の確保が重要であり、高校生の歯科技工士の認知度が低いことが明らかになったことから就学支援が重要と考えられた。その取組として参考になる事例を見出すことができた。一方、需給については、義歯の需給を分析したところ、社会医療診療行為別調査/統計の過去の推移から、今後、義歯需要は減少するものの、そのスピードは緩やかであることがわかった。一方、衛生行政報告例から推測される歯科技工士の供給の減少スピードは比較的速く、技工士不足が懸念される予測結果が得られた。また、歯科医院に対する調査で歯科技工士不足の徴候というべき現象に遭遇している歯科医師が多いことも確認された。
結論
 歯科衛生士と歯科技工士に対する復職支援事業のあり方と需給について検討したところ、歯科衛生士に対する復職支援は単に歯科医院での雇用を目指すだけでなく、歯科保健医療全体の枠組みを拡げる役割を担う人材育成を図っていくという姿勢で取り組む必要があり、先駆的な事例を見出すことができた。歯科衛生士の需給については、様々な角度から分析を行い、複眼的な捉え方をすすめていくことが必要であることがわかった。
 歯科技工士については、今後、義歯の作成について技工士不足の事態が生じることが懸念される結果が得られたので、さらに調査を進めていく必要があるとともに、とくに中高生に対する就学支援を通じて職業認知度の向上を図ることが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-09-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-09-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620014C

成果

専門的・学術的観点からの成果
歯科衛生士については、「不足」の実態について、従来よりも明らかにすることができた。また、復職支援事業については、復職先が歯科医院だけでなく幅広く捉えたモデルを示すことができた。歯科技工士については、今まで需給についての分析が欠けていた面があり、今回の研究により、「義歯の供給不足が近い将来生じる」という仮説を今後懸念される政策課題として提示できた。
臨床的観点からの成果
今回の研究により、義歯の供給不足は比較的短期的な政策課題であることを示した点は、対応が急務であることを示したという意味で、ひとつの成果であったと考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
2018.5.15より検討が開始された厚労省の「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」は、本研究班の成果によるものと考えられる。
その他のインパクト
業界誌(月刊歯科医療経済 2017;76号:19-21)の歯科技工の将来像に関する特集においてインタビュー記事が掲載され、研究代表者・安藤の技工士不足に対する懸念が紹介された。2018.6.21日本経済新聞で「歯科技工士 なり手不足」と題する記事が掲載された。

発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
2018.5.15より厚労省で「歯科技工士の養成・確保に関する検討会」が開始された。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
大島克郎、安藤雄一
Web調査を用いた歯科衛生士・技工含む医療関係職種等の認知度にする研究 調査を用いた歯科衛生士・技工含む医療関係職種等の認知度にする研究 -高校生の約半数が歯科技工士という職種を全く知らなかった-
日本歯科医療管理学会雑誌 , 52 (4) , 200-210  (2017)
原著論文2
大島克郎、安藤雄一
医療施設静態調査を用いた歯科診療所に就業する歯科衛生士および歯科技工士の推移と市区町村別分布
ヘルスサイエンス・ヘルスケア , 17 (1) , 4-10  (2017)
原著論文3
大島克郎、安藤雄一、鈴木文登、藤原元幸
歯科診療所における歯科技工状況と歯科技工士数減少に関する兆候の実態把握 秋田県歯科医師会会員を対象とした質問紙調査による分析.
日本歯科医療管理学会雑誌 , 53 (1) , 64-71  (2018)
原著論文4
大島克郎、安藤雄一
定期歯科受診は親に対し子の職業として歯科医師・歯科衛生士に興味をもたせる
日本歯科医療管理学会雑誌 , 54 (1) , 48-57  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-05-13
更新日
-

収支報告書

文献番号
201620014Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,480,000円
差引額 [(1)-(2)]
20,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 65,110円
人件費・謝金 0円
旅費 217,356円
その他 1,198,521円
間接経費 0円
合計 1,480,987円

備考

備考
自己負担額987円

公開日・更新日

公開日
2018-06-07
更新日
-