医療安全指標の開発及び他施設間比較体制の検討と病理部門等と安全管理部門との連携が院内の医療安全体制に与える影響に関する研究

文献情報

文献番号
201620011A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全指標の開発及び他施設間比較体制の検討と病理部門等と安全管理部門との連携が院内の医療安全体制に与える影響に関する研究
課題番号
H28-医療-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
  • 内藤 善哉(日本医科大学大学院 統御機構診断病理学)
  • 長谷川 友紀(東邦大学医学部 社会医学)
  • 後 信(九州大学病院医療安全管理部)
  • 小松 康宏(聖路加国際病院 腎臓内科)
  • 尾林 聡(東京医科歯科大学大学院 医歯学総合研究科 生殖機能協関学)
  • 鳥羽 三佳代(東京医科歯科大学医学部附属病院クオリティ・マネジメント・センター)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部診療情報分析部)
  • 森脇 睦子(東京医科歯科大学医学部附属病院クオリティ・マネジメント・センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
(1)医療安全に特化した指標を開発し、(2)病理部門や臨床各部門、医療安全管理部門との連携が安全確保に与える効果を検証し、(3)自院の安全体制を多施設と比較・評価するシステムの構築を検討する。
研究方法
1)分析対象:指標作成の試行調査では、東京医科歯科大学医学部附属病院の平成26年度から平成28年度のDPCデータ及び電子カルテ内の診療録データを用いた。全国展開に向けた汎用性に係る調査では、DPC調査研究班がデータ収集している約1500病院の平成26年度のデータを用いた。また、医療事故調査制度に関わる全国の基幹病院ならびに関連施設を対象に、病理部門と医療安全部門との連携に関する調査を行った。病理部門と医療安全管理部門との連携の可能性については、医療法施行規則に基づいて実施されている医療事故情報収集等事業で収集された「病理に関連した医療事故」から、病理に関する主な医療事故事例を使用した。2)分析方法:本研究は次の3段階で実施した。研究1では、専門家により医療安全に特化した臨床指標の洗い出し、我が国の医療機関における当該指標による算出の意義等を検討し、必要な指標案を検討した。研究2では、研究1で開発された指標をDPC調査研究班のデータにより算出し、病床規模、病院機能、症例規模別の分析から、汎用可能性に関する検証を行った。必要に応じて算出ロジックの再考案も実施した。研究3では、病理部門や各臨床部門と安全管理部門との連携体制が院内の医療安全体制に与える影響に関して、病理医が医療安全や診療・治療方針決定に関する質問紙調査を実施し、病理医がどう関与していくことが医療安全の推進に役立つかを調査、検討した。
結果と考察
1)研究1:ベンチマーク用の指標6指標とDPCデータや電子カルテデータを使用して内部管理用のモニタリング指標19指標の開発を行った。ベンチマーク指標については、国内外で既に使用されている安全指標で、DPCデータで計測可能なものから、(1)ある程度活用されていて信頼性がある、(2)目的の事象を反映できる、(3)患者にとって重要なアウトカムに繫がる、(4)介入によって改善できる、の4つの視点で「指標1:脳卒中患者に対する静脈血栓塞栓症の予防対策の実施率」、「指標2:手術ありの患者の肺血栓塞栓症の予防対策の実施率」、「指標3:手術ありの患者の肺血栓塞栓症の発生率」、「指標4:中心静脈注射用カテーテル挿入による重症な気胸・血胸の発生率」、「指標5:75歳以上退院患者の入院中の予期せぬ骨折発症率」、「指標6:経皮的心筋焼灼術に伴う心タンポナーデ発生率」を選定し、東京医科歯科大学医学部附属病院のDPCデータで実際に計測しその手法の精度等について検証を行った。2)研究2:ベンチマーク用の6指標をDPC調査研究班で収集しているデータにより計測した。その結果、「指標1」が36.7%(SD=25.2)、「指標2」が91.8%(SD=9.9)、「指標3」が0.38%(SD=2.9)、「指標4」が0.30%(SD=0.8)、「指標5」が0.65%(SD=1.0)、「指標6」が0.31%(SD=0.9)であった。特定機能病院区分別では「指標6」を除く5つの指標で実施率及び発生率に有意差を認めた。3)研究3:現在120施設から質問紙の回答が得られている(回収率88.9%)。「病理に関連した医療事故」には、検体が病理部門に提出される前の段階でエラーが発生した事例から、病理検査報告書が完成して返送された後の報告書確認の段階の見逃し事例まで、様々な段階における事例が報告されていた。
結論
特定機能病院の有無、病床規模や症例規模により実施率や発生率が異なるものがあった。DPCデータ上の限界もあるが、わが国の医療安全体制の実態の一部を反映できるものと考える。病理部門と医療安全管理部門との連携については、単純に医療安全管理部と病理部との連携だけではなく、病理検査の検体を提出して、病理検査報告書を確認する診療科も病理に関するチーム医療の一員としての役割を果たす枠組みの構築が重要である。院内に散在するデータを利活用し、人的資源を最低限に抑え院内の医療安全をモニタリングするための指標を開発し、わが国の実態を明らかにした。統一された算出方法で数値化できることは、医療の質の可視化と改善活動、医療安全文化の醸成の推進力になると考える。

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201620011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,000,000円
(2)補助金確定額
4,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 885,546円
人件費・謝金 352,070円
旅費 1,495,137円
その他 1,267,247円
間接経費 0円
合計 4,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
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