歯科診療情報に関わる電子用語集構築とその有効性検証に関する研究

文献情報

文献番号
201620008A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科診療情報に関わる電子用語集構築とその有効性検証に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
玉川 裕夫(大阪大学 歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 青木孝文(東北大学 大学院情報科学研究科)
  • 齊藤孝親(日本大学 松戸歯学部)
  • 鈴木一郎(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 末瀬一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
885,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科診療で使われる用語を網羅的に収集した電子用語集を作成し,それらを用いて,身元確認や在宅診療の場での診療情報共有を,過不足なく行えるか検証することである.
研究方法
歯科診療で用いられる専門用語は,これまで学会ごとに編纂され,紙の用語集として長年流通してきた.同時に,電子レセプト請求に必要な診療行為や歯の部位をあらわすコードも,標準コードとして整理され,現在では継続的な改訂が行われている.しかし,歯科診療で用いられる用語を体系化しコンピュータで読み取れる形で階層化した電子用語集は存在していない.今後の地域医療連携を視野に入れて歯科デジタル基盤を考えると,電子用語集は単なるリストではなく粒度にあわせた階層構造を持っており,場面にあわせてどの階層のどの表現を使用するか明示的になっている必要がある.各医療機関で蓄積している電子情報を情報粒度に合わせて変換できてはじめて,相互利用が可能となるからである.
結果と考察
本研究では,まず,現在歯科・口腔外科領域で使われている用語を網羅的に収集しそれらを体系づけ,口腔状態を過不足なく表現できる階層構造付の標準用語集を構築した.次に,それらを用いて身元確認や診療情報提供あるいは在宅診療の場面それぞれに適した粒度(抽象度)で歯科診療を記述できるかどうかを検証した.本研究の特色は,用語とその使われ方を含めた標準規格を提案するところにある.
用語の収集・階層化とそれらの検証の2段階にわけることができ,初年度は階層化を行う.歯の状態については,階層を付与した案を厚生労働省の “歯科診療情報の標準化に関する検討会”に提出し,災害時対応に軸足をおいた”身元確認に資する歯科情報(標準データセット)案”として平成27年11月25日に承認された.また今年度は,災害時の身元確認だけでなく,診療情報共有,在宅診療などのモデルケースに対して,階層構造を検証した.その結果は,日本歯科医師会が受託した「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」で採用され,複数社の歯科ベンダが保持している電子データを変換でき,且つその結果をHL7形式にまでコンバートできることが確認されている.
結論
現在,歯の状態については厚生労働省の” 歯科診療情報の標準化に関する検討会”で作業が進んでいるが,本研究ではさらに視野を拡げ,歯周組織等の軟組織,顎骨等の硬組織の病態,そして歯と合着していない歯科技工装置を含めて体系化,初診時の口腔診査情報として共有できることを目標に,必要な用語収集を行った.乳幼児健診や学校検診あるいは成人の歯周疾患検診の内容をふくめ,口腔状態を表現するために現在日本で使われている用語をほぼ網羅している.また,粒度こそ粗いがWHOの口腔診査情報に関するコードも含まれていることから,国境を越えて情報交換を行える可能性が高まった.今後は,歯科医療のデジタル基盤を確立するため,情報共有のプロトコールの標準化に発展させることが望まれる.

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201620008B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科診療情報に関わる電子用語集構築とその有効性検証に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-010
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
玉川 裕夫(大阪大学 歯学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 青木孝文(東北大学 大学院情報科学研究科)
  • 齊藤孝親(日本大学 松戸歯学部)
  • 鈴木一郎(新潟大学 医歯学総合病院)
  • 末瀬一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科診療で使われる用語を網羅的に収集して電子用語集とし,身元確認や在宅診療の場でそれらを用いた診療情報共有が過不足なく行えることを検証すること.
研究方法
初年度は,日本の歯科・口腔外科領域で使われている用語を網羅的に収集し,それらを歯の状態,軟組織の状態などとして体系づけた.用語には口腔状態を過不足なく表現できるような粒度(抽象度)を与え,階層構造を持たせた.これを口腔状態のスナップショットと呼ぶこととし,全体像を厚生労働省の”歯科診療情報の標準化に関する検討会”に報告した.
2年度目は,日本歯科医師会が平成28年度事業として受託した「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」とタイアップし,拡張歯式コード仕様に盛り込まれていなかった項目を検討した結果,歯科健診に関与する項目を追加できた.
結果と考察
初年度は,研究協力者の青木とともに,災害時の身元確認を視野に入れた歯科情報の整理を行い,平成 27 年 11 月 25 日に厚生労働省で開かれた”歯科診療情報の標準化に関する検討会”に用語集の一部を資料として提出した.これは”身元確認に資する歯科情報(標準データセット)”として承認された.
2年度目は,災害時の身元確認だけでなく,診療情報共有,在宅診療などのモデルケースに対して,階層構造を検証した.その結果は,日本歯科医師会が受託した「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」で採用され,複数社の歯科ベンダが保持している電子データを変換でき,且つその結果をHL7形式にまでコンバートできることが確認されている.

結論
現在,歯の状態については厚生労働省の” 歯科診療情報の標準化に関する検討会”で作業が進んでいるが,本研究ではさらに視野を拡げ,歯周組織等の軟組織,顎骨等の硬組織の病態,そして歯と合着していない歯科技工装置を含めて体系化,初診時の口腔診査情報として共有できることを目標に,必要な用語収集を行った.乳幼児健診や学校検診あるいは成人の歯周疾患検診の内容をふくめ,口腔状態を表現するために現在日本で使われている用語をほぼ網羅している.また,粒度こそ粗いがWHOの口腔診査情報に関するコードも含まれていることから,国境を越えて情報交換を行える可能性が高まった.今後は,歯科医療のデジタル基盤を確立するため,情報共有のプロトコールの標準化に発展させることが望まれる.

公開日・更新日

公開日
2018-02-21
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-02-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620008C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では,歯科・口腔外科領域の用語を網羅的に収集しそれらを本系づけ,口腔状態を過不足なく表現できる階層構造付の標準用語集構築を目的に,まず関連用語を整理して体系づけた。次に,日本歯科医師会が平成28年度事業として受託した「歯科診療情報の標準化に関する実証事業」とタイアップし,用語集の網羅性と機能を確認,当初より広い範囲で歯科診療情報の受け皿にできた.同事業では,この用語集をもとに国際的な標準コードのHL7に変換し,SS-MIX2形式で電子保存することができた.
臨床的観点からの成果
本研究では診療所だけでなく妊産婦健診,歯周病健診あるいは高齢者口腔検診に視野を拡げ,歯と合着していない歯科技工装置を含めて体系化,初診時の口腔診査情報として共有できるコード体系を構築した.
平成30年(2018年)3月には日本歯科医師会から”歯科情報の利活用及び標準化普及事業報告書”として仕様書を実運用結果が報告された.
ガイドライン等の開発
第8回厚生労働省歯科診療情報の標準化に関する検討会(2016年3月23日)
「口腔状態の標準データセット」として承認された.
第11回厚生労働省歯科診療情報の標準化に関する検討会(2017年3月15日)
日本歯科医師会が受託した実証事業で,「歯科診査情報標準コード仕様(Ver.1.0)」が承認された.
第2回歯科情報の利活用及び標準化普及に関する検討会(2018年3月28日)
厚労省における保健医療情報分野の標準規格として認められた。(2021年3月26日)
その他行政的観点からの成果
画像情報の事実上の国際標準であるDICOMに関して,日本歯科放射線学会から2015年12月3日にシカゴの北米放射線学会(RSNA)で開催されたDICOM ワーキンググループ22(dentistry)のミーティングで,朝日大学の勝又明敏教授が口腔状態のスナップショットのコード体系を DICOMタグとして収載することを提案し,検討されることになった.
その他のインパクト
日本歯科放射線学会は,歯科医学会のプロジェクト研究「画像データを中心とした歯科医療情報標準化(歯科におけるDICOMの整備と展開)」に関するワークショップ2016年3月13日に開催し,歯科画像情報とスナップショットとの連携について検討, DICOM仕様拡張も視野にいれて進めることとなった.

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
4件
医療情報学,46-49,2015.歯科放射線,97-106,2016.医療情報学 36(Suppl.), 34-37, 2016.医療情報学 36(Suppl.), 106-107,2016.
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
3件
第35回医療情報学連合大会,2015年11月1日,沖縄.第36回医療情報学連合大会,2016年11月21日,横浜.第37回医療情報学連合大会,2017年11月21日,大阪.
学会発表(国際学会等)
1件
DICOM WG22 Meeting,How about incorporating "dental data set" into a DICOM tag?,2015/11/02, Chicago.
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
厚生労働省検討会,「口腔状態の標準データセット」.日本歯科医師会,「歯科診査情報標準コード仕様(Ver.1.0)」.日本歯科医師会,「歯科情報の利活用及び標準化普及事業報告書」
その他成果(普及・啓発活動)
1件
日本歯科医師会,「口腔診査情報CSV形式データからHL7への変換仕様(Ver.1.0)」.

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
2021-11-09

収支報告書

文献番号
201620008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,149,000円
(2)補助金確定額
1,149,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 407,614円
人件費・謝金 0円
旅費 350,880円
その他 63,875円
間接経費 264,000円
合計 1,086,369円

備考

備考
当初想定していた人件費・謝金は,おもに紙媒体で収集した用語の入力作業に関するものであったが,診療関連資料のスキャン後にOCR(光学的文字認識)と日本語形態素解析ツール(MeCab)を組合わせた自然言語処理をもちて,品詞解析までほぼ自動で行えたことで,入力作業がほぼなくなったため.

公開日・更新日

公開日
2018-06-18
更新日
-