文献情報
文献番号
201620007A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全管理部門への医師の関与と医療安全体制向上に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(名古屋大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 遠山 信幸(自治医科大学 医学部)
- 南須原 康行(北海道大学 医学部附属病院)
- 浦松 雅史(東京医科大学 医学部)
- 兼児 敏浩(三重大学 医学部附属病院)
- 西原 広史(北海道大学 大学院医学研究科)
- 細川 洋平(京都府立医科大学 大学院医学系研究科)
- 福田 治久(九州大学 大学院医学研究院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,618,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
平成19年の診療報酬改定結果の検証、ならびに平成22・23年の医療安全体制整備に関する厚生労働科学研究等により、本邦の医療安全管理活動において医師の関与が乏しいことが指摘されている。一方、医師が関与することが望ましい業務内容や、医師の関与により、どの程度医療安全が向上するか、といった点については明らかになっていない。また、死亡事故発生時における病理医との連携のあり方について、検討された報告はない。
そこで我々は、医療安全管理活動における医師の関与のあり方について検討し、具体的な取り組みを提言することを目的に、2か年計画で調査研究を行った。本報告は、その2年目の研究成果を取りまとめたものである(1年目の研究成果については、平成27年度報告書参照)。
そこで我々は、医療安全管理活動における医師の関与のあり方について検討し、具体的な取り組みを提言することを目的に、2か年計画で調査研究を行った。本報告は、その2年目の研究成果を取りまとめたものである(1年目の研究成果については、平成27年度報告書参照)。
研究方法
2年目は、1年目に行った1次アンケートの結果を解析、興味深い特徴を示していた病院(6施設)を訪問し、ヒアリング調査を行った。これらの結果を踏まえ、より詳細な分析を可能とするための質問票を作成、精神科単科病院を除く全国の病院(7582施設)に対し2次アンケート調査を行い、結果を解析した。また、病理医の意識調査のための質問票を作成し、日本病理学会北海道支部に所属する医師を対象にパイロット調査を行った。その結果を検討し、日本病理学会にアンケート調査を依頼した(2017年3月現在、調査進行中)。
結果と考察
医療安全に専従・専任する医師が配置された病院では、そうでない病院に比し、職員・医師の報告行動が有意に活性化されていた。また、日常的な改善活動もさることながら、特に重大事例の予後判断や治療連携、病理医や放射線科医との連携、医療事故調査、再発防止策の立案といった、有事における業務が活発に行われていた。一方、専従医師が配置されていても、病床規模によって重大事例への判断や対応が大きく異なるなど、課題も存在した。また、病理医は医療安全関連解剖に協力的な意向を示しつつ、第三者性の確保も重視していた。解剖の際には、医療安全担当医師と病理医の情報共有が必要と考えられた。
結論
本調査結果より、専従・専任医師の配置は、医療安全業務全体の質向上に大きく貢献すると考えられた。積極性の高い医師を専従で配置することが望ましいが、配置が困難、コンピテンシーが不明、キャリアパスが不安定、といった課題も窺えた。今後は、医師医療安全管理者の業務指針や教育プログラムの整備を行い、人材養成を図るとともに、できるだけ多くの医療機関で、医師が中~長期的に医療安全活動に関与し続けられるような支援体制(加算措置など)を導入することが望ましいと考えられた。
公開日・更新日
公開日
2017-06-05
更新日
-