歯科技工業の業務形態の実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201620005A
報告書区分
総括
研究課題名
歯科技工業の業務形態の実態把握に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 博信(福岡歯科大学 咬合修復学講座 冠橋義歯学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 秀夫(新潟大学大学院 予防歯科学)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科審美学室)
  • 大久保 力廣(鶴見大学 歯学部 有床義歯補綴学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
965,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CAD/CAM装置の導入、大規模の歯科技工所の増加や海外の歯科技工所とのやりとり等の多くの要因によって、歯科技工の業務形態の変化が起こってきており、歯科技工士の就労状況の変化も起こってきている。そこで、本研究の目的はこれらの現状を把握すること、また今後の歯科技工士のあり方のモデルについて考察を加えることである。
研究方法
【調査①】第一の調査分析対象は、日本歯科技工所協会とし、 74社の歯科技工所を調査対象した。調査内容は、アンケート形式により、勤務先の業務形態、作製物の担当状況、納品までの期間、補綴物の製作課程などについて調査をし、特にCAD/CAM装置の導入前後で歯科技工士の就労状況に変化があったかなどについて意見を求め、分析を行った。
【調査②】第二の調査分析対象は、小規模(5名未満できれば2名以下、家族経営等で実務をこなしている)の歯科技工所で、CAD/CAMシステムの導入とは関係なく、比較的経営が安定していると思われる歯科技工所55社を対象とした。調査はアンケート形式により、勤務先の業務形態、作製物の担当状況、納品までの期間、補綴物の製作課程などについて調査し分析を行った。
【調査③】第三の調査分析対象は、昨年実施した歯科技工士会に所属する会員を対象とした調査の392名分データのうち、再度の詳細な分析を行い、今後の参考となるような有用なデータを解析した。
【調査④】調査②の調査分析対象のうち、特徴があると思われる技工所5カ所をピックアップし、現地に赴き実地調査した。
結果と考察
【調査①】調査した歯科技工所の平均従業員数は88.2名と大規模であるが、最小が4名と少なく、最大は720名と人数に大きなばらつきがあった。大規模歯科技工所では「スキャニングからCAD/CAM技工まですべて行っている」が83.3%で多くを占め、これが大規模歯科技工所の現状であることが伺えた。また、CAD/CAMシステム導入後の作業効率を全体でみると、「作業効率が良くなった」が60.0%、「収入が上がった」が51.4%など、ポジティブな意見が多くみられ、CAD/CAM技工の影響は大きいものと考察できた。
【調査②】【調査④】調査②の歯科技工士会所属の小規模歯科技工所の調査での回答数は、依頼した55歯科技工所中、回収は29通(52.7%)であった。歯科技工士数(開設者を含む)が2.1人であった。一日あたりの勤務時間は「10時間以上」が6割以上を占めており、長時間勤務の実態がみて取れる。このうち、CAD/CAM装置を導入している歯科技工所は3割強であり、比較的経営状況の良い小規模歯科技工所では自費を中心にCAD/CAM装置を早期に導入しており、高い値であった。また、歯科補綴物の担当形態を保険診療分の歯科補綴物でみると有床義歯系(部分床義歯)では、「実績なし」が62.1%と高い率を示した。これは小規模の歯科技工所で有床義歯の歯科技工を扱っていない傾向があることが伺われた。すなわち、今回調査した小規模歯科技工所ではクラウン・ブリッジ系技工に特化した歯科技工を行っている傾向が伺えた。また、調査④の実地調査に協力を得たオピニオンリーダーの歯科技工所も同様の傾向で、受注している歯科医院数は、「6~10診療所」がほとんどであった。複数の診療所との取引が必要な傾向が推察できた。
【調査③】調査③の調査、すなわち昨年度の歯科技工士会を対象としたアンケート調査の詳細分析では、勤務時間が10時間以上において、平均作製個数が多い順にみると、「従業員1人・40歳未満」と「従業員5人以上・40歳未満」が最も多く、一日あたりの勤務時間では、60歳代になると10時間以上が30.2%、70代になると11.8%まで減少する。今後の歯科技工士の減少(人手不足)、歯科技工士の長時間労働ならびに高齢化は憂慮すべき問題であると推察される。また、一方で小規模でも、やり方次第では順調な経営環境を維持しているオピニオンリーダーも存在することも本調査から明らかになった。
結論
大規模歯科技工所ではCAD/CAM利用の歯科技工が積極的行われおり、歯科技工の分担作業が進んでいることが伺えた。一方、1-2名の歯科技工士で営んでいる小規模技工所では、ある程度特化した歯科技工、特にクラウン・ブリッジ系に特化した歯科技工所が多いことが推察できた。
昨年度の調査の詳細分析から、60歳を超えると、急に歯科技工実績が低下していく事実が示された。このため今後の歯科技工士の不足が懸念される。また、クラウン・ブリッジ、インプラントの分野ではCAD/CAMを利用した修復の割合が増加するなど、歯科技工所ならびに歯科技工士の構造変革が求められており、歯科技工士のあり方、さらに教育・研修のあり方について、関係各位の協力が強く求められていると思われた。

公開日・更新日

公開日
2017-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201620005B
報告書区分
総合
研究課題名
歯科技工業の業務形態の実態把握に関する研究
課題番号
H27-医療-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 博信(福岡歯科大学 咬合修復学講座 冠橋義歯学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 宮崎 秀夫(新潟大学大学院 予防歯科学)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科審美学室 )
  • 大久保 力廣(鶴見大学 歯学部 有床義歯補綴学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
CAD/CAM装置の導入等の多くの要因によって、歯科技工の業務形態の変化が起こっており、歯科技工士の就労状況の変化も起こってきている。本研究の目的はこれらの現状を把握すること、また今後の歯科技工士のあり方のモデルについて考察を加えることである。
研究方法
【平成27年度調査①、分析平成27、28年度】日本歯科技工士会に所属する約1,000名の会員に対し、アンケート形式により、業務形態、作製物の担当状況、納品までの期間、補綴物の製作課程などを調査・分析をした。【平成27年度調査②】アメリカ合衆国大学歯学部病院3カ所、歯科技工所5カ所を訪問し、担当者へ歯科技工士の就労状況の変化に意見を求めるとともに、第一の調査分析と比較を行った。【平成28年度調査①】日本歯科技工所協会(大規模歯科技工所)を対象に、勤務先の業務形態、作製物の担当状況、納品までの期間、補綴物の製作課程などを調査し、特にCAD/CAM装置の導入前後で就労状況に変化について分析を行った。【平成28年度調査②】小規模(おおむね2名以下、家族経営等)の歯科技工所で、比較的経営が安定していると思われる歯科技工所55社を対象として、業務形態、作製物の担当状況、納品までの期間、補綴物の製作課程などを調査し、分析を行った。【平成28年度調査③】上記③の技工所から5カ所をピックアップして、就労の時間、歯科技工士の就労状況の変化について実地調査を行った。
結果と考察
【平成27年度調査①、分析平成27、28年度】392名の回答者のうち、一日あたりの勤務時間は全体の約8割が「8時間以上」となっており、5人以上の歯科技工所でも64.3%が10時間以上であった。歯科技工物の作製状況をみると「保険診療分」のうち、有床義歯系では「複数人で分担して製作」が25.3%、「実績なし」が30.6%であり、製作課程を分担している実情が明らかになった。28年度の詳細分析で、一日あたりの勤務時間は、60歳代で10時間以上が30.2%、70代で11.8%まで減少する。今後の高齢化による歯科技工士の減少、及び長時間労働は憂慮すべき問題であることが推察された。【平成27年度調査②】アメリカ合衆国の3歯学部病院ならびに5歯科技工所の調査では、CAD/CAM導入が急速に進んでおり、導入の前後で、就労状況の変化が大きいことが推察できた。また、女性歯科技工士の就労者も、我が国と比べて多く、歯科技工士の就労状況も変化していることが推察できた。【平成28年度調査①】42社の回答で、従業員数が88.2人、歯科技工士数が61.8人、うち女性の歯科技工士数が18.1人であった。CAD/CAM技工業務は、「あり」が90.5%と高く、大規模の歯科技工所では比較的早い時期から行っており、83.3%はスキャニングからCAD/CAM技工業務全体を行っていた。また、小規模歯科技工所等との連携、あるいは業務分担がなされていた。歯科技工士が、特定の歯科補綴物の製作に携わる業務の仕方に関する評価について、『良いと思う』が3割程度高くなっていたが、分担と分業とは別物であるとの指摘があり、今後の課題となることが考察できた。【平成28年度調査②、③】29社の回答では、歯科技工所の歯科技工士数(開設者を含む)が2.1人で、一日あたりの勤務時間は「10時間以上」が6割以上を占めており、長時間勤務の実態が読み取れる。このうち、CAD/CAM装置を導入している歯科技工所は3割強であり、比較的経営状況の良い小規模歯科技工所では自費を中心に早期に導入していた。また、歯科補綴物の製作担当のうち有床義歯系(部分床義歯)では、「実績なし」が62.1%と高い率を示した。今回調査した小規模歯科技工所ではクラウン・ブリッジ系技工に特化した歯科技工を行っている傾向が伺えた。また、調査④の実地調査に協力した歯科技工所も同様の傾向で、歯科技工の分業あるいは分担が進んでいることが本調査からも推察できた。
結論
大規模歯科技工所ではCAD/CAM利用の歯科技工が積極的行われおり、歯科技工の分担作業が進んでいることが伺えた。一方、1-2名の歯科技工士で営んでいる小規模では、ある程度特化した歯科技工、特にクラウン・ブリッジ系に特化した歯科技工所が多いことがわかった。60歳を超えると、急に歯科技工実績が低下していく事実が示され、今後の歯科技工士の人員確保が懸念される。一方、クラウン・ブリッジ系、及びインプラントの分野ではCAD/CAMを利用したセラミック修復の割合が大幅に増加するなど、歯科技工所ならびに歯科技工士の構造変革が待ったなしで求められており、歯科技工士のあり方、さらに教育・研修のあり方について、関係団体の協力が強く求められていると思われた。

公開日・更新日

公開日
2017-09-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620005C

収支報告書

文献番号
201620005Z