小児救急・集中治療提供体制構築およびアクセスに関する研究

文献情報

文献番号
201620004A
報告書区分
総括
研究課題名
小児救急・集中治療提供体制構築およびアクセスに関する研究
課題番号
H27-医療-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
市川 光太郎(北九州市立八幡病院 小児救急センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松裏 裕行(東邦大学医療センター 大森病院)
  • 吉澤 穣治(慈恵会医科大学)
  • 船曳 哲典(藤沢市民病院 こども診療センター)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部 救急医学講座)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 小児救急を家庭看護力醸成としての救急オンライン充実や病院前救護の中心として#8000の電話相談の拡充、初期二次救急医療の地域間格差の解消へのアプローチ、小児集中治療施設と既存救命センターとの更なる連携医療の拡充、小児救命センターの施設数増加とその品質管理の方法論の検討等を行い、総合小児救急医療として、網羅的に研究して、地域毎の、子ども達を安心・安全に養育できる環境作りの政策提言を目標とする。
研究方法
①子ども救急オンライン:配布用の広報カード作成や動画作成等に夜啓発活動の一環とした。サイトのアクセスログ解析により利用実態の検証を行うこととした。アクセスログの分析は、サイト利用の曜日・休日/平日の区分、利用時間帯、検索Key word、諸外国からのアクセス状況、アクセスに用いたデバイス(PC/スマートフォン/携帯電話)による差異の検討を行う。②#8000:応需不可率の改善を含め、周知普及啓発とともに電子マニュアルの整備拡充 を行い、電話対応者の質の向上と対応者同士の問題点の共有システムの構築、そして、相談内容等のデータバンク構築(全国センター)のための検討を行う。③初期・二次小児救急医療:1年目は全国924施設に対して、この10年間の患者動向調査を行った。2年目は未整備地区の把握の一貫として小児人口減少下における小児医療へのアクセスの解析と直近病院の機能の解析を行う。④成人救命センターにおける重篤小児治療:小児救急医療の集約化・広域化が行われてきたが、既存救命センターと小児医療機関との連携強化方法の検討、円滑な救命センター利用・連携のための後方搬送(戻り搬送)におけるコスト分析と課題の把握を行った。⑤小児救命救急・集中治療:1年目のデータを分析して2年目は小児救命救急センターの評価指標の提案、転送基準・転送方法・指導要領・対応用量の提案、小児重症系レジストリの包括的レビュー、小児重症系統合レジストリ策定のための基盤調査、小児重症系統合レジストリの提案に結びつけた。
結果と考察
①子ども救急オンライン:紹介動画作成・DVD化を行い公共施設での利用を促すようにするとともに、広報カード等のダウンロード可能体制の構築を行った。アクセスログ・ユーザーの評価を反映する方法の1つとしてもITの有用性・費用対効果の点で優れ、大規模災害での救護所における医療情報の提供の1手段としても有効性が期待される。②#8000:周知度改善策の「それいけ!アンパンマン」の広報利用は順調に全国に拡がり、さらに、「電話相談対応者の広場」を開設し、電話対応者の質問疑問の解決対策構築と質の向上を行った。#8000を充実せるためには全国データベースセンターの必要性が示され、今後の施策の基本となる。③初期・二次小児救急医療:過去10年間の小児科外来数・入院患者数の推移を調査し、子ども人口は8.4%減少し、全体で外来患者数23.6%、入院患者数15.9%減少していた。過疎地では外来・入院ともに40%減少し、一般病院では外来・入院が10%・20%と減少していた。また、最短医療機関までの距離が20km以上の市町村を「小児医療アクセス困難地域」と考え、アクセス困難地域数は467市町村であり、78.6万人(全小児人口の4.9%)が居住していた。2010年のデータでは小児人口が半減するごとに、病院までの距離が10km増えていた。「小児医療アクセス困難地域受入れ病院」に対する政策的支援が必要である。④成人救命センターにおける重篤小児治療:小児救急医療の集約化・広域化に伴い救命センターへの集約と分散という観点から昇り搬送・下り搬送の実態の検討を行ったが、地域小児医療機能の有用活用には転送問題は拡充には不可欠で有り、施策に直結する課題であり、成人救急医療含めて、転送医療の経費等も政策関与が必要であり,その明確な数字が示されたので、今後の施策への活用が可能である。⑤小児救命救急・集中治療:全国症例登録制度を構築して小児救命センターの品質強化を図る必要があることが判った。さらに、品質評価指数や症例レジストリの基盤を整えることで、救命救急センター同様に、公正な施設評価が可能である。さらに、教育研修体制指針・転送基準などは、具体的なプロトコル・ガイドライン等として施策応用可能である。
結論
 救急オンラインを用いた家庭看護力醸成、#8000の利用度増加による病院前救護、過疎地区を中心とした新しい初期二次救急医療体制の構築、既存の救命センターの活用と連携、そして小児救命センターの拡充など多岐面にわたり、既存の医療資源を有効活用しての小児救急医療の効率化を図るべきである。さらには集約化・広域化に伴う高次医療施設における集約化・分散化(下り搬送等を含め地域転送体制の拡充)を行い、地域毎の包括的体制作りが必要と考えられた。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201620004B
報告書区分
総合
研究課題名
小児救急・集中治療提供体制構築およびアクセスに関する研究
課題番号
H27-医療-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
市川 光太郎(北九州市立八幡病院 小児救急センター)
研究分担者(所属機関)
  • 松裏 裕行(東邦大学医療センター 大森病院)
  • 吉澤 穣治(慈恵会医科大学)
  • 船曳 哲典(藤沢市民病院 こども診療センター)
  • 有賀 徹(昭和大学医学部 救急医学講座)
  • 清水 直樹(東京都立小児総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
小児救急を家庭看護力のボトムアップ更に電話相談(#8000)による病院前救護から初期二次医療の地域格差の将来見込みの検討、既存救命センターでの重篤小児医療の展望、小児救命センターの品質評価に伴う小児集中治療のボトムアップや既存救命センターとの連携など三次救急まで網羅的に研究して、地域のメディカルホームを創り、子ども達を安心・安全に養育できる環境作りの政策提言を目標とする。
研究方法
①子ども救急オンライン:配布用の広報カードを作成や動画作成等による啓発活動を一環とした。サイトのアクセスログ解析により利用実態の検証を行った。アクセスログは、サイト利用の曜日・休日/平日の区分、利用時間帯、検索Key word、アクセスに用いたデバイス(PC/スマートフォン/携帯電話)による差異を検討した。
②#8000:応需不可率の改善を含め、周知普及啓発とともに電子マニュアルの整備拡充を行い、電話対応者の質の向上と対応者同士の問題点の共有システムを構築した。相談内容等のデータバンク構築(全国センターの創立)のための検討を行った。
③初期・二次小児救急医療:1年目は全国924施設に対して、この10年間の患者動向調査を行った。2年目は未整備地区の把握の一貫として小児人口減少下における小児医療へのアクセスの解析と直近病院の機能の解析を行った。2010年のデータでは小児人口が半減するごとに、病院までの距離が10km増えていた。
④成人救命センターにおける重篤小児治療:1年目は全国救命センターの小児救急医療のアンケート調査を、2年目は円滑な救命センター利用・連携のための後方搬送(戻り搬送)におけるコスト分析と課題の把握を行った。
⑤小児救命救急・集中治療:1年目に小児救命センターのサイトビジット行い、そのデータを元に2年目は小児救命センターの評価指標の提案、小児重症系統合レジストリ策定のための基盤調査を行った。
結果と考察
①子ども救急オンライン:アクセスログ・ユーザーの評価を反映する方法の1つとしてもITの有用性・費用対効果の点で優れているため、これを拡充させ、大規模災害などで救護所における医療情報の提供の1手段としても有効性が期待される。
②#8000:電話対応者の質の向上には、電話対応者の質問疑問の解決対策構築が必要で、さらに#8000を充実せるためには全国データベースセンターの必要性が示され、今後の施策の基本となる。
③初期・二次小児救急医療:少子化の比率以上に過疎地域での小児患者の外来・入院が減少していることから、過疎地域の小児救急医療体制の再考が必要で、2040年には小児人口が 2010年比で 4 割以上減少する市町村が6 割を超えると予測され、これらの市町村から直近病院までの距離が10km伸びる可能性がある。「小児医療アクセス困難地域受入れ病院」に対する政策的支援が必要である。
④成人救命センターにおける重篤小児治療:地域小児医療機能の有用活用には転送問題は拡充には不可欠で有り、施策に直結する課題であり、成人救急医療含めて、転送医療の経費等も政策関与が必要であり,その明確な数字が示されたので、今後の施策への活用が可能である。
⑤小児救命救急・集中治療:小児救命救急センターの品質評価指標・施設間交流と教育研修体制指針・転送基準などは、具体的なプロトコル・ガイドライン等として施策応用可能である。
結論
2か年の研究事業にて、家庭看護力醸成・病院前救護に関しては充実してきているが、更なる普遍的体制の構築が求められる。初期二次救急医療では少子化により過疎地区で更なる小児医療アクセス困難地区が増えそうであり、家庭看護・病院前救護の充実と重ね、過疎地区小児医療の対応が求められる。救命救急医療では既存の医療資源を有効活用しての小児救急医療の効率化を図り、高次医療施設における集約化・分散化(下り搬送等を含め地域二次病院転送体制の拡充)をさらに行い、地域毎の包括的体制作りが必要と考えられた。さらに、小児救命センターの施設数増加を図るべきであるが、その品質の高度化・均一化を図るためにも重篤小児総合レジストリ策定を行い、具体的なプロトコル。ガイドラインの設置が不可欠である。

公開日・更新日

公開日
2018-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201620004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
病院前救護における家庭看護力醸成のスキル(小児救急モバイル、#8000など)の普及による保護者の子どもの健全育成の意識啓発、初期二次救急の10年間の推移による少子化・過疎地域対策、既存の救命センターの小児救急医療の実態調査による地域基幹病院小児科等との連携方法の模索と集約化重点化の課題、小児救命救急センターの拡充方法、質の担保、重篤小児のレジストリ開発などへの提言は小児救急全体の活性化に有用である。
臨床的観点からの成果
少子化により過疎地区で小児救急医療アクセス困難地区が増えるため、家庭看護力醸成・病院前救護・電話相談事業の充実を諮る必要がある。救命救急医療では既存の医療資源を有効活用しての小児救急医療の効率化を図り、高次医療施設における集約化・分散化(下り搬送等を含め地域二次病院転送体制の拡充)を行い、地域毎の包括的体制作りが必要である。小児救命センターの品質の高度化・均一化を図るためにも重篤小児総合レジストリ策定を行必要がある。
ガイドライン等の開発
#8000の電話応対者に応対マニュアルを作成し、全国へ交付し、その使用に
おける課題問題点の収集を行った。
その他行政的観点からの成果
過去10年間の小児科外来数・入院患者数の推移を調査し、子ども人口は8.4%減少し、全体で外来患者数23.6%、入院患者数15.9%減少していた。過疎地では外来・入院ともに40%、一般病院では10%・20%と減少していた。また、アクセス困難地域数(医療機関までの距離が20km以上)は467市町村、78.6万人(全小児人口の4.9%)が居住していた。2040年には小児人口が 2010年比で 4 割以上減少する市町村が6 割を超え、「このアクセス困難地域に対する政策的支援が必要である。
その他のインパクト
#8000に周知において、「それいけ!アンパンマン」を広報利用し、塩崎厚労省大臣にTV等のメディアに登場して貰い、かなりの周知度アップが認められた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
11件
学会発表(国際学会等)
3件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
清水直樹
ILCOR: Pediatric basic life support and pediatric advanced life support
Circulation , 132 , S177-203  (2015)
原著論文2
清水直樹
Family presence during pediatric tracheal intubations.
JAMA Pediatr , 170 (3) , e154627-  (2016)

公開日・更新日

公開日
2018-06-06
更新日
-

収支報告書

文献番号
201620004Z