文献情報
文献番号
201620001A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装するためのデータ解析・活用方法の開発
課題番号
H27-医療-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 大坪 徹也(京都大学 医学研究科)
- 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
- 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
- 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
当研究は、地域医療構想・地域医療計画の効果的な具現化・実装に貢献するために、疾病別の機能分化・拠点化と連携強化等を含む具体的な設計方法とそのためのデータ解析方法を研究開発する。また、比較参照により内容向上を促進するために、全国地域医療計画全国データベースを構築し、その効率よい活用に向けて検討する。
研究方法
地域医療構想に役立つための解析の方法について、以下のデータベースを使い、具体的な疾患事例を用いて検討した。
①約500(詳細情報有す)と約1000病院の経年的DPCデータ
②府県下全市町村の国保・後期高齢者医療制度の数年間のレセプト
③医療資源等含む行政統計
④レセプト・ナショナルデータベースNDBからの抽出データ
などを単独または組合せで使用して解析し、その結果の活用方法を検討した。さらに、全国の医療計画の内容を瞬時に比較するシステムを開発するためのステップとして、全国の都道府県の医療計画をデータベース化し人工知能(AI)を用いて自然言語解析を行い比較参照機能の向上を目指した。
①約500(詳細情報有す)と約1000病院の経年的DPCデータ
②府県下全市町村の国保・後期高齢者医療制度の数年間のレセプト
③医療資源等含む行政統計
④レセプト・ナショナルデータベースNDBからの抽出データ
などを単独または組合せで使用して解析し、その結果の活用方法を検討した。さらに、全国の医療計画の内容を瞬時に比較するシステムを開発するためのステップとして、全国の都道府県の医療計画をデータベース化し人工知能(AI)を用いて自然言語解析を行い比較参照機能の向上を目指した。
結果と考察
重要領域における結果は以下の通りである。
(1)医師数および診療科別医師数の地域間格差:医師数自体は増加傾向にあるものの、都市で元々医師密度が低い地域を除き、全ての地域で需要調整人口対医師数が減少していた。地域間格差は、とくに内科、外科、産婦人科で悪化傾向にあった。地域格差は拡大傾向にあり、医師数の地域間格差や診療科偏在に対してさらなる対策を講じる必要がある。
(2)在宅医療提供体制における地域差と医療機関毎の機能評価:2014年度の医療機関数は707が訪問診療を実施していた。在宅時医学総合管理料算定、看取り実施のある医療機関数は年々増加していたが、医療機関毎の実施率には幅が見られた。訪問診療においては高齢化進行速度と現在の提供体制バランスにおける多様性を考慮しつつ、市区町村別に医療計画を検討する必要性がある。
(3)救急要請から病院到着までの時間に対する病院照会回数の影響:解析対象は43,663例で、救急搬送時間の平均は44.5分、照会回数は平均1.8回、照会回数が増加するほど搬送時間は延長していた。救急要請を1回断るたびに6.3分搬送時間が長くなっていた。搬送先の速やかな決定を可能にする、より効率的なシステムの開発・導入の余地がある。
(4)入院時期の死亡への影響:重症市中肺炎の週末入院における退院時死亡率が平日入院と比べて高いことが明らかとなった。これは、臨床ガイドラインに従った細菌学的検査の実施割合が低いことに影響を受けている可能性がある。一方で、学会期間の入院と在院死亡との関連性は乏しかった。
(5)肺炎発症・薬剤耐性菌の経済的負担:特定健診データを用いた肺炎発症予測にて高性能なモデルを構築した。当モデルを用いることで、肺炎発症リスクの低い65歳以上及び、肺炎発症リスクの高い65歳未満を同定し、より適切な肺炎球菌ワクチン接種に繋がる可能性がある。また、市中肺炎では、約0.7%にMRSA感染症がみられ、MRSA感染症により在院日数は約1.4倍、医療費は約1.7倍,死亡率は1.9倍の増加がみられた。さらに、MRSA感染により、医療費は約3.5%、在院日数は約3.0%、死亡率が約3.1%増加すると推計された。
(6)急性心不全症例における院内死亡と入院医療費の決定要因の相違:予測院内死亡率と予測入院総医療費とでそれらの影響因子は異なった。同一のケースミックス分類を死亡と医療費両方の予測に用いることには問題があり、区別する必要があることが示唆された。
(7)ICU入室患者のマルチタスク学習によるリスク予測: ICU入室患者の死亡リスク予測を、疾病を単位としたマルチタスク学習として定式化することで、“疾病によって死亡リスクを説明するルールが異なる”という疾病コンテキストを考慮し、より妥当なリスク調整アウトカム指標を用いてICU治療のパフォーマンスを評価する方法を開発した。
(8)医療計画の全国参照データベース構築に向けて―自然言語解析の活用:自然言語解析のための辞書の拡充のために機械的な処理の応用を試みた。これらのデータベースと自然言語解析をより発展させることで、全国の医療計画の地域間比較・参照を容易にし、医療計画内容向上に資することが期待される。
(1)医師数および診療科別医師数の地域間格差:医師数自体は増加傾向にあるものの、都市で元々医師密度が低い地域を除き、全ての地域で需要調整人口対医師数が減少していた。地域間格差は、とくに内科、外科、産婦人科で悪化傾向にあった。地域格差は拡大傾向にあり、医師数の地域間格差や診療科偏在に対してさらなる対策を講じる必要がある。
(2)在宅医療提供体制における地域差と医療機関毎の機能評価:2014年度の医療機関数は707が訪問診療を実施していた。在宅時医学総合管理料算定、看取り実施のある医療機関数は年々増加していたが、医療機関毎の実施率には幅が見られた。訪問診療においては高齢化進行速度と現在の提供体制バランスにおける多様性を考慮しつつ、市区町村別に医療計画を検討する必要性がある。
(3)救急要請から病院到着までの時間に対する病院照会回数の影響:解析対象は43,663例で、救急搬送時間の平均は44.5分、照会回数は平均1.8回、照会回数が増加するほど搬送時間は延長していた。救急要請を1回断るたびに6.3分搬送時間が長くなっていた。搬送先の速やかな決定を可能にする、より効率的なシステムの開発・導入の余地がある。
(4)入院時期の死亡への影響:重症市中肺炎の週末入院における退院時死亡率が平日入院と比べて高いことが明らかとなった。これは、臨床ガイドラインに従った細菌学的検査の実施割合が低いことに影響を受けている可能性がある。一方で、学会期間の入院と在院死亡との関連性は乏しかった。
(5)肺炎発症・薬剤耐性菌の経済的負担:特定健診データを用いた肺炎発症予測にて高性能なモデルを構築した。当モデルを用いることで、肺炎発症リスクの低い65歳以上及び、肺炎発症リスクの高い65歳未満を同定し、より適切な肺炎球菌ワクチン接種に繋がる可能性がある。また、市中肺炎では、約0.7%にMRSA感染症がみられ、MRSA感染症により在院日数は約1.4倍、医療費は約1.7倍,死亡率は1.9倍の増加がみられた。さらに、MRSA感染により、医療費は約3.5%、在院日数は約3.0%、死亡率が約3.1%増加すると推計された。
(6)急性心不全症例における院内死亡と入院医療費の決定要因の相違:予測院内死亡率と予測入院総医療費とでそれらの影響因子は異なった。同一のケースミックス分類を死亡と医療費両方の予測に用いることには問題があり、区別する必要があることが示唆された。
(7)ICU入室患者のマルチタスク学習によるリスク予測: ICU入室患者の死亡リスク予測を、疾病を単位としたマルチタスク学習として定式化することで、“疾病によって死亡リスクを説明するルールが異なる”という疾病コンテキストを考慮し、より妥当なリスク調整アウトカム指標を用いてICU治療のパフォーマンスを評価する方法を開発した。
(8)医療計画の全国参照データベース構築に向けて―自然言語解析の活用:自然言語解析のための辞書の拡充のために機械的な処理の応用を試みた。これらのデータベースと自然言語解析をより発展させることで、全国の医療計画の地域間比較・参照を容易にし、医療計画内容向上に資することが期待される。
結論
地域医療構想・地域医療計画を効果的に実装する上で必要な基本情報を、各種大規模データから可視化し、具体的課題をも抽出した。これらの成果を最大限に活用し、全体最適を目指して地域レベルでシステムを再構築する必要がある。また、全国の地域医療計画については、データベース化や自然言語解析を発展させて比較・参照を容易にし、計画内容の向上に資することが期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-12-22
更新日
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