文献情報
文献番号
201619007A
報告書区分
総括
研究課題名
B型・C型肝炎による肝硬変、肝がん患者における医療費等の実態調査
課題番号
H28-肝政-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
伊藤 澄信(独立行政法人国立病院機構本部 総合研究センター)
研究分担者(所属機関)
- 考藤 達哉(国立国際医療研究センター 肝炎・免疫研究センター)
- 八橋 弘(国立病院機構長崎医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
National Database(NDB)から得られる情報を解析し、B型・C型肝炎による肝硬変及び肝がん患者における総医療費等費用分布及び医療内容等の実態等を明らかにする。肝硬変及び肝がんの患者に対する更なる支援の在り方について検討するための基礎資料及びその他の肝炎対策に反映するための基礎資料を作成する。
研究方法
平成24年4月から平成28年3月までの4年分のNDBデータから傷病レコード、傷病名レコードに肝炎、肝硬変、肝がんに関連する傷病名(238傷病)が記載されたレセプトを一度でも有したことがある患者を抽出し、データマートを作成した。検査だけの病名、予防投与ならびに未治療キャリアを除外するために、肝炎、肝硬変、肝がんの治療薬が用いられていない患者、ならびに肝炎ウイルス再活性化で予防投与の疑いのある患者は除外し、B・C型肝炎の病名が混在している場合は一定基準で整理した。さらに肝硬変の病名が記されている患者のうち、非代償性と明示されているか、非代償性肝硬変に用いる医薬品が記載されていれば非代償性と整理し、解析対象データセットを作成した。
結果と考察
NDBから抽出されたデータは計392億項目で、医科レセプト9.8億レセプト、DPCレセプト0.2億レセプト、調剤レセプト6.2億レセプトの計16億レセプト、2,521万人分となった。そのうち、傷病コード、医薬品コードをもとに、肝炎等に関連する医薬品・診療行為の算定があった患者を分析対象とした。C型肝炎については2012年度548,811人、2013年度518,464人、2014年度495,011人、2015年度471,986人、B型肝炎ウイルス感染については2012年度148,180人、2013年度152,405人、2014年度159,218人、2015年度169,968人を分析対象とした。
C型肝炎ウイルス感染に起因する肝炎等の傷病の記載があった患者は、年齢階級別では70~79歳の患者数が多く、人口当たりでは佐賀県、和歌山県、広島県の順で多かった。年間総医療費は平成27年度に大きく増加しており、内服の抗ウイルス剤の費用が著しく増加した。肝癌の治療として肝切除術、RFA等は約15%(医療費は2割強)、血管塞栓術や肝動注化学療法等は2割強(医療費は3割)を化学療法は3%(医療費は4%)であったが、全体の6割で診療行為・医薬品が算定されていなかった。肝癌患者のうち、2012年度上期に肝癌でなかったものの2012年度下期に肝癌がみられた新規肝癌患者の患者数推移は2012年度下期から2013年度上期にかけて前年度比で約2割減少し、その後は15%前後ずつ減少していた。
B型肝炎の傷病の記載があるものの、肝炎ウイルス再活性化に係る予防投与等、は平成24年度の83,403人から27年度の138,953人へ4年間で約1.7倍と急増していた。年齢階層別には60~69歳の患者が多く、人口当たりでは鳥取県、北海道、広島県に多く、群馬県、茨城県、長野県に少なかった。医療費は患者数の増加に伴って年度ごとに増加した。B型肝炎、代償性肝硬変では2割弱、非代償性肝硬変では約4割、肝癌では約5割の患者が入院していた。肝癌の治療として肝切除術、RFA等は約15%強(医療費は25%)、血管塞栓術や肝動注化学療法等は約15%(医療費は25%強)、化学療法は3%(医療費は約7%)であったが、全体の65%で診療行為・医薬品が算定されていなかった。2012年度下期に初めて肝癌がみられた新規肝癌患者は2012年度下期から2013年度上期にかけて前年度比で約25%減少し、その後は2014年度上期まで約15%ずつ、2015年度下期まで約10%ずつと徐々になだらかに減少していた。
C型肝炎ウイルス感染に起因する肝炎等の傷病の記載があった患者は、年齢階級別では70~79歳の患者数が多く、人口当たりでは佐賀県、和歌山県、広島県の順で多かった。年間総医療費は平成27年度に大きく増加しており、内服の抗ウイルス剤の費用が著しく増加した。肝癌の治療として肝切除術、RFA等は約15%(医療費は2割強)、血管塞栓術や肝動注化学療法等は2割強(医療費は3割)を化学療法は3%(医療費は4%)であったが、全体の6割で診療行為・医薬品が算定されていなかった。肝癌患者のうち、2012年度上期に肝癌でなかったものの2012年度下期に肝癌がみられた新規肝癌患者の患者数推移は2012年度下期から2013年度上期にかけて前年度比で約2割減少し、その後は15%前後ずつ減少していた。
B型肝炎の傷病の記載があるものの、肝炎ウイルス再活性化に係る予防投与等、は平成24年度の83,403人から27年度の138,953人へ4年間で約1.7倍と急増していた。年齢階層別には60~69歳の患者が多く、人口当たりでは鳥取県、北海道、広島県に多く、群馬県、茨城県、長野県に少なかった。医療費は患者数の増加に伴って年度ごとに増加した。B型肝炎、代償性肝硬変では2割弱、非代償性肝硬変では約4割、肝癌では約5割の患者が入院していた。肝癌の治療として肝切除術、RFA等は約15%強(医療費は25%)、血管塞栓術や肝動注化学療法等は約15%(医療費は25%強)、化学療法は3%(医療費は約7%)であったが、全体の65%で診療行為・医薬品が算定されていなかった。2012年度下期に初めて肝癌がみられた新規肝癌患者は2012年度下期から2013年度上期にかけて前年度比で約25%減少し、その後は2014年度上期まで約15%ずつ、2015年度下期まで約10%ずつと徐々になだらかに減少していた。
結論
本研究では、NDBから得られる情報を解析し、B型・C型肝炎による肝硬変及び肝がん患者の全国的な総医療費等費用分布や医療内容の実態等を分析した。C型肝炎ウイルス感染に起因する肝炎等の患者は減少する傾向がみられる一方、B型肝炎ウイルス感染に起因する肝炎等の患者は増加する傾向がみられた。また、年間総医療費は、C型肝炎におけるインターフェロンフリーの直接作用型抗ウイルス薬の開始に伴い、2015年度から大きく増加し、B型肝炎等においても、患者数の増加に伴って増加していた。患者1人当たりの医療費負担も、医薬品費、非代償性肝硬変、肝癌における入院費用、肝癌における手術費用や抗がん剤治療に係る費用等、医療費が高額となるケースが一定程度存在していることが示された。今後、医療費助成等のより有効な支援のあり方について検討していくうえで、本研究の成果が活用されることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-06-28
更新日
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