文献情報
文献番号
201618015A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の医療体制の整備に関する研究
課題番号
H27-エイズ-指定-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科)
研究分担者(所属機関)
- 伊藤 俊広(独立行政法人国立病院機構仙台医療センター HIV/AIDS包括医療センター)
- 山本 政弘(国立病院機構九州医療センター AIDS/HIV総合治療センター)
- 岡 慎一(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
- 豊嶋 崇徳(北海道大学大学院医学研究科(北海道大学病院))
- 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院 感染管理部)
- 渡邉 珠代(石川県立中央病院 免疫感染症科)
- 白阪 琢磨(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センターエイズ先端医療研究部)
- 藤井 輝久(広島大学病院 輸血部 (広島大学病院))
- 宇佐美 雄司(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 歯科・口腔外科)
- 池田 和子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院 エイズ治療・研究開発センター)
- 吉野 宗宏(独立行政法人国立病院機構大阪南医療センター 薬剤科)
- 本田 美和子(独立行政法人国立病院機構東京医療センター)
- 葛田 衣重(千葉大学医学部附属病院)
- 小島 賢一(荻窪病院 血液科)
- 内藤 俊夫(順天堂大学医学部 総合診療科研究室)
- 安藤 稔(東京都立府中療育センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
97,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
抗HIV療法の進歩による生命予後の改善により重要度を増した長期療養環境整備に対しては、社会一般に対するHIV感染症/エイズに関する正しい疾病知識の積極的普及啓発が必要となる。
一方で、拠点病院に定期通院中のHIV感染者及び患者(以下HIV陽性者)の地域・施設間格差は非常に大きいこと、また、診療経験が少ない拠点病院が多いことが各都道府県レベルもしくはブロックレベルでは学会等で報告されている。すなわち、地域のHIV陽性者の診療状況や個々の医療・福祉へのニーズ及び地域で利用可能な医療資源等を十分に把握した上で普及啓発を展開する必要があると考えられる。
そこで、本研究では、研修対象の基礎的資料とすべく全国の拠点病院のHIV陽性者の受診状況及び重点課題である歯科及び透析領域の対応状況を調査した。また、各ブロックや職種毎の研修の実施状況を調査し課題の抽出を試みた。
一方で、拠点病院に定期通院中のHIV感染者及び患者(以下HIV陽性者)の地域・施設間格差は非常に大きいこと、また、診療経験が少ない拠点病院が多いことが各都道府県レベルもしくはブロックレベルでは学会等で報告されている。すなわち、地域のHIV陽性者の診療状況や個々の医療・福祉へのニーズ及び地域で利用可能な医療資源等を十分に把握した上で普及啓発を展開する必要があると考えられる。
そこで、本研究では、研修対象の基礎的資料とすべく全国の拠点病院のHIV陽性者の受診状況及び重点課題である歯科及び透析領域の対応状況を調査した。また、各ブロックや職種毎の研修の実施状況を調査し課題の抽出を試みた。
研究方法
全拠点病院に対し自治体を介して調査票を郵送し、2011年~2015年の年次別新規受診者数、2015年末時点での定期通院者数と地域、施設毎の状況、チーム医療加算算定の有無、歯科診療の対応状況、透析導入と維持透析への対応状況について情報提供を受け解析した。実施した研修については、全国8ブロックの研修・教育の対象および機会設定の目的、実施実績及び研修・教育の効果及び研修・教育効果の評価方法と課題等について考察した。
結果と考察
拠点病院のHIV陽性者の受診状況等については、47都道府県の担当者を介して全383施設に調査票を送付し、377施設から情報提供を受けた。2011年から2015年までの未治療HIV感染者/エイズ患者の年次推移で、全ての調査対象項目の結果の報告があったのは277施設であった。各年毎の未治療者の総数と動向は発生届に基づくエイズ動向委員会の新規感染者及び患者の数と動向にほぼ一致した。377施設中356施設で2015年末時点の定期通院者数の回答があり、定期通院者数0人の86施設を除く270施設の定期通院者数の合計は21,228人で、その80%以上が関東・甲信越、近畿、東海に集中していた。施設毎でみると、1,000人以上は5施設、200人以上は17施設、100人以上は42施設であった。
チーム医療加算算定施設は、拠点廃止の愛媛労災病院、チーム医療加算に関する回答がなかった3施設(定期受診者数231名)の合計4施設(全て拠点)をのぞいた379施設(定期受診者総数21,228人)で検討した。算定は64施設(16.9%)で、ACC、ブロック拠点及び中核拠点病院68施設での算定施設は29施設(42.6%)であった。チーム医療加算算定64施設の定期通院者数は15,319人(73.0%)であった。非算定の要因は専従看護師の配置困難であった。
拠点病院で歯科診療科を有するのは382施設中288施設で、そのうち、222施設でHIV陽性者の歯科処置が可能であった。透析導入の可否については回答のあった333施設中、216施設で可能であった。216施設中、導入可能な腎代替療法の種類については171施設から回答があり、血液透析は151施設、腹膜透析は85施設、移植は3施設(重複含む)という内訳であった。維持透析に関しては回答のあった332施設中、135施設が実施していた。歯科、透析領域においては曝露事象発生時の支援体制構築が重要であり、定期的な研修による知識の更新と研修機会を利用した歯科医師や透析医とHIV感染症診療従事者との連携構築を図る必要がある。
各ブロックにおける研修は、拠点病院に定期通院中のHIV感染者及び患者の地域・施設間格差は非常に大きいことや診療経験が少ない拠点病院が勘案された結果、研修は地域の医療・福祉従事者を対象とした知識普及・啓発を目的とするものが大半を占めた。今後、医療・福祉従事者が、定期通院者数が多い施設で実際に診療・支援経験を積むことができる仕組みの構築が求められる。
チーム医療加算算定施設は、拠点廃止の愛媛労災病院、チーム医療加算に関する回答がなかった3施設(定期受診者数231名)の合計4施設(全て拠点)をのぞいた379施設(定期受診者総数21,228人)で検討した。算定は64施設(16.9%)で、ACC、ブロック拠点及び中核拠点病院68施設での算定施設は29施設(42.6%)であった。チーム医療加算算定64施設の定期通院者数は15,319人(73.0%)であった。非算定の要因は専従看護師の配置困難であった。
拠点病院で歯科診療科を有するのは382施設中288施設で、そのうち、222施設でHIV陽性者の歯科処置が可能であった。透析導入の可否については回答のあった333施設中、216施設で可能であった。216施設中、導入可能な腎代替療法の種類については171施設から回答があり、血液透析は151施設、腹膜透析は85施設、移植は3施設(重複含む)という内訳であった。維持透析に関しては回答のあった332施設中、135施設が実施していた。歯科、透析領域においては曝露事象発生時の支援体制構築が重要であり、定期的な研修による知識の更新と研修機会を利用した歯科医師や透析医とHIV感染症診療従事者との連携構築を図る必要がある。
各ブロックにおける研修は、拠点病院に定期通院中のHIV感染者及び患者の地域・施設間格差は非常に大きいことや診療経験が少ない拠点病院が勘案された結果、研修は地域の医療・福祉従事者を対象とした知識普及・啓発を目的とするものが大半を占めた。今後、医療・福祉従事者が、定期通院者数が多い施設で実際に診療・支援経験を積むことができる仕組みの構築が求められる。
結論
全国の拠点病院の調査により、地域及び施設間で定期通院者数が大きく異なる中、各ブロック及び職種の代表者を中心に積極的な知識普及のための研修の場が設けられていた。現在大きな課題であるHIV感染症の診療従事者の育成に関しては、現場の負担は大きいものの人材育成と維持のために診療の場の提供を主とした研修機会の設定が求められる。また、我が国における優れた抗HIV療法の成績を受け、今後は医療・福祉従事者をはじめとしてより多くの国民へのHIV感染症/エイズに関する正しい知識普及をはかる必要がある。
一方、行われている多くの研修の効果の検証は十分ではない。定量化及び短期的な効果判定は困難であるが、方策について検討を行う必要がある。
一方、行われている多くの研修の効果の検証は十分ではない。定量化及び短期的な効果判定は困難であるが、方策について検討を行う必要がある。
公開日・更新日
公開日
2017-06-06
更新日
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