非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

文献情報

文献番号
201618012A
報告書区分
総括
研究課題名
非加熱血液凝固因子製剤によるHIV感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究
課題番号
H27-エイズ-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
木村 哲(公益財団法人エイズ予防財団)
研究分担者(所属機関)
  • 柿沼 章子(社会福祉法人はばたき福祉事業団)
  • 照屋 勝治(国立国際医療研究センター病院)
  • 江口 晋(長崎大学大学院)
  • 遠藤 知之(北海道大学病院)
  • 三田 英治(国立病院機構大阪医療センター)
  • 四柳 宏(東京大学医科学研究所)
  • 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院)
  • 藤谷 順子(国立国際医療研究センター病院)
  • 大金 美和(国立国際医療研究センター病院)
  • 中根 秀之(長崎大学大学院)
  • 今井 公文(国立国際医療研究センター病院)
  • 潟永 博之(国立国際医療研究センター病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
43,462,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関変更  研究分担者 四柳 宏  東京大学医学部附属病院→東京大学医科学研究所(平成28年7月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染血友病等患者はHIV感染自体あるいは抗HIV薬の副作用による糖代謝や脂質異常に加え、合併するHCV感染症の進行、高齢化と関節症悪化による日常活動能の低下、精神的な問題等々を抱えている。この研究は患者参加型で患者の日常生活状況とニーズを明らかにし、患者にとって最良の長期療養体制を見出すことを目的とした。
研究方法
研究は下記の1から5のサブテーマに分け、連携しながら同時進行で行った。
1. 全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究
2. 合併C型慢性肝炎に関する研究
3. 血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究
4. HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究
5. HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究
結果と考察
サブテーマごとに記載する。
1.全国のHIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究:
聞き取り調査において、生活実態把握と相談機能をあわせた支援を行った。「訪問健康相談」は11人に実施でき、10名において相談に対する信頼感が得られ、また、生活閉塞感の緩和、支援伴走者がいることへの安心感、将来の療養に対する安心感などが生まれ、高い利用満足度を得た。今後、推進すべき施策の一つと考えられる。
全国拠点病院調査ではDAA治療による治癒が24%あり、自然治癒およびインターフェロン治療による治癒と合わせ全体の77%が治癒しているという結果であった。
2.合併C型慢性肝炎に関する研究:
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者に対する非侵襲的な肝線維化・門脈圧亢進症評価ツールとして提唱したAPRI、FIB4につき、2015年1月以降の上部消化管内視鏡施行症例のべ69人で前向きな検討を行い、カットオフ値の感度・特異度が良好であることを確認した。
患者参加型で行った直接作用型経口抗HCV薬(DAA)によるHIV/HCV重複感染治療試験ではHCV Genotype 1型と 2型に対し、それぞれ12W投与で持続的抗ウイルス効果は100%であった。特記すべき副反応は認めず、安全性、有効性において極めて良好な成績であった。
マルコフモデルによる理論疫学研究では7施設の277例を用い、HIV/HCV重複感染血友病等患者のHCVの病態推移モデルが作成できた。
3.血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究:
東京および仙台市で運動器検診会を、また、名古屋市でプレ運動器検診会を開催した。東京ではこれまで最も多い参加が得られた。
リハビリテーション介入による筋力改善の有無を比較するために、理学療法士訓練(月1回程度)6か月と自主トレーニング6か月のクロスオーバー試験を実施した。理学療法士訓練先行群が自主トレ先行群に勝っていたが、自主トレのみでも筋力の回復が認められた。今後、血友病性関節症のリハビリテーションを全国に広めて行くための根拠となるものである。
4.HIV感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究:
50代の患者では未婚率(80.0%)が高く、高齢の親(70代~80代)との同居率も高いことが明らかとなった。今後、サポート力の低下が予測され対策が必要である。
DISC-12によるスティグマ体験の内、「健康とプライバシーの侵害」ではうつ病と診断される患者比率が有意に高かった。ACCに通院中のHIV感染血友病等患者69名の内、29名で精神科医による評価が済み、Frascati CriteriaをもとにしたHIV関連神経認知障害(HAND)の有病率は41%であった。
5.HIV感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究:
昨年度作成した「診療チェックシート」及びその「解説書」の普及に努めた。ACC通院中のHIV感染血友病等患者72名の内、過半数の38名に高血圧、高脂血症、糖尿病など生活習慣病関連の病態が認められ、これらの重複例も数多く認められた。関連他科と連携し生活指導する必要がある。
結論
訪問健康相談支援を実施し、患者の安心感が得られ社会参加にもつながった。今後、推進行くべき施策と考えられる。ARTにより、25歳時平均余命は約12年延長していた。
肝線維化・門脈圧亢進の非侵襲的マーカーであるAPRI・FIB4は有用である。HIV/HCV重複感染者に対してもDAA療法有効で安全である。しかし、HCV Genotype 3型感染者については保険適応が認められていない。
リハビリテーションの有効性が確認されたことから、全国に普及させる意義がある。
50代患者では親の高齢化と患者の未婚率の高さから、長期支援体制の整備が急がれる。HIV感染血友病等患者では41%にHANDが認められた。
HIV感染血友病等患者では生活習慣病関連の有病率が高かった。

公開日・更新日

公開日
2017-05-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-04-27
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201618012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
55,000,000円
(2)補助金確定額
54,170,000円
差引額 [(1)-(2)]
830,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,336,770円
人件費・謝金 12,236,949円
旅費 3,959,897円
その他 12,099,035円
間接経費 11,538,000円
合計 54,170,651円

備考

備考
人件費・謝金について①事務担当者の出勤日が都合により減り減額、②実態調査の解析が短期間で済み減額、③データ入力等の業務が予定より早く終了し減額、④実験助手1名雇用の申請をしたが、適任者が見つからなかったので減額。

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-