文献情報
文献番号
201618009A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症の合併症に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
岡 慎一(国立研究開発法人 国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 吉村 浩太郎(自治医科大学形成外科)
- 南本 亮吾(国立研究開発法人国立国際医療研究センター放射線核医学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
27,565,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
血友病/HIV感染者は、感染から30年という長い経過をもつという特徴がある。90年代には、d-drugを服用した時期もあり、リポジストロフィーで苦しむ患者も多い一方、今後agingに伴うエイズに関連しない悪性腫瘍や認知症などの発症が、HIV感染症の経過の長さゆえ、他のHIV感染者に比べ多くなる可能性も危惧される。本研究では、血友病/HIV感染者のこれら問題点を解決する目的で、リポジストロフィーに対する治療法の検討(分担1)と悪性腫瘍(分担2)及び認知症(分担3)のスクリーニングを行う。
研究方法
本研究班は、以下の3つの柱で研究を実施する。
分担1:リポジストロフィ-に対する治療法の検討
BMI>20の患者においては、大腿部、腰背部、腹部より、脂肪吸引法により皮下脂肪を採取し、顔面の脂肪萎縮部位に注入移植術を行う。BMI<20の患者においては、脂肪採取に危険が伴うため、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane®)注入術を行う。採取した脂肪組織の一部を研究目的に使用する。治療成績は、術前と術後で、写真、ビデオ、CT(もしくはMRI)を用いた3次元画像解析により、12か月後に最終評価する。必要に応じて、組織生検を行う。
分担2:agingに伴う悪性腫瘍の早期発見に関する研究分担2では、早期発見に適したスクリーニング法を開発する目的で、FDG-PETと部位特異的な検査を組み合わせた検査を実施する。対象患者数は、当院に主として通院している血友病患者約50名とする。
分担3:agingに伴う認知症の罹患率に関する研究
分担3では、認知症スクリーニング目的で、FDG-PETを実施する。この部分は、分担2と共通部分である。対象患者数も同じである。本研究では、認知症としてHANDに限定せずagingに関連するアルツハイマー型認知症などもカバーする。また、血管障害をカバーするために一部の症例においてはMRIも実施する。
分担1:リポジストロフィ-に対する治療法の検討
BMI>20の患者においては、大腿部、腰背部、腹部より、脂肪吸引法により皮下脂肪を採取し、顔面の脂肪萎縮部位に注入移植術を行う。BMI<20の患者においては、脂肪採取に危険が伴うため、局所麻酔下に架橋ヒアルロン酸注射剤(Restylane®)注入術を行う。採取した脂肪組織の一部を研究目的に使用する。治療成績は、術前と術後で、写真、ビデオ、CT(もしくはMRI)を用いた3次元画像解析により、12か月後に最終評価する。必要に応じて、組織生検を行う。
分担2:agingに伴う悪性腫瘍の早期発見に関する研究分担2では、早期発見に適したスクリーニング法を開発する目的で、FDG-PETと部位特異的な検査を組み合わせた検査を実施する。対象患者数は、当院に主として通院している血友病患者約50名とする。
分担3:agingに伴う認知症の罹患率に関する研究
分担3では、認知症スクリーニング目的で、FDG-PETを実施する。この部分は、分担2と共通部分である。対象患者数も同じである。本研究では、認知症としてHANDに限定せずagingに関連するアルツハイマー型認知症などもカバーする。また、血管障害をカバーするために一部の症例においてはMRIも実施する。
結果と考察
分担研究1では、昨年度の1例を含めると、これまでに顔面脂肪萎縮症の計4例において脂肪移植術を、2例においてヒアルロン酸注入術を行った。現在までに、6例を、12か月まで経時的に観察した。残りの予定症例(4例)においても、今後に行う予定である。すでに顔面脂肪萎縮症患者5名より、皮膚皮下組織、吸引脂肪のサンプルを採取した。および健常患者2名より、正常組織を採取した。それぞれの吸引脂肪組織から酵素処理により血管間質細胞群を採取し、フローサイトメトリ(FACS)にて細胞成分の組成について分析するとともに、包埋組織切片の組織学的分析、RNAの抽出を行い分析を行った。臨床所見については、脂肪移植、HA注入ともに、12か月の評価で、個人差はあるものの、全般的には良好な改善が見られている。脂肪移植とヒアルロン酸注射では、CT上それぞれの特徴的な改善所見がみられるが、ともに長期的に有効性を維持している。また問題点としては、脂肪移植については患者が痩せているために期待するほど移植のための十分量の脂肪組織が得られないことがあること、HA注入の場合には頬部中心部の改善効果が得られないこと、があげられる。組織の解析結果からは、HIV脂肪萎縮症の患者においては、脂肪細胞の形態や機能の異常を示唆する所見は認めないが、感染や慢性炎症に対する適応反応によると思われる萎縮、変性の結果と思われる変化が認められた。分担研究2と3では、倫理委員会の承認を9月21日に取得、12月に研究がスタートとなった。H29年3月16日現在10例実施、次年度に向けての予約が16例入っている。血友病感染者は、HIV感染から30年が過ぎ、年齢も中央値で45歳となっている。HIV感染者の癌年齢は、一般より10歳早く50代から始まることが知られるようになり、血友病感染者における癌・認知症スクリーニングへの関心は高く、大多数の通院患者から研究参加への同意を得ている。今後、この研究により認知症が発見された場合の治療法・対処法をどうするかなど、今後の課題となって来ると思われる。
結論
分担研究1の脂肪萎縮症に対する治療法の開発に関する臨床研究では、脂肪移植、HA注入ともに、短期的には良好な改善が見られている。分担2と3の研究では、血友病感染者に対する癌・認知症スクリーニング研究が順調に開始された。
公開日・更新日
公開日
2017-05-23
更新日
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