HIV検査受検勧奨に関する研究

文献情報

文献番号
201618008A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査受検勧奨に関する研究
課題番号
H28-エイズ-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
  • 上平 朝子(国立病院機構大阪医療センター 感染制御部)
  • 西浦 博(北海道大学大学院 医学研究科学社会医学講座)
  • 本間 隆之(公立大学法人山梨県立大学 看護学部)
  • 白阪 琢磨(国立病院機構大阪医療センター 臨床研究センター エイズ先端医療研究部)
  • 塚田 訓久(国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 土屋 菜歩(東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門)
  • 平 力造(日本赤十字社 血液事業本部)
  • 井戸田 一朗(しらかば診療所)
  • 加藤 真吾(慶應義塾大学 医学部)
  • 貞升 健志(東京都健康安全センター)
  • 伊藤 俊広(国立病院機構仙台医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
50,848,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染症の早期治療による予後改善だけでなく、感染予防の効果も示されたことで、これまで以上の早期診断が求められるようになっている。早期診断には、より効果的な検査手法を組み合わせ、質の高い検査を拡大していくことが必要である。また、各地域の状況に合った、長期的な戦略をもった検査体制を構築することが求められる。本研究班では、検査の質を丁寧に高めていくことでHIV受検体制の充実を図る。そして、自治体行政との連携モデルを構築することで、日本全体の検査体制を向上させ、HIV陽性者の早期診断をすすめることを目的とする。
研究方法
我が国の検査体制を「受検アクセスの改善」、「検査所の利便性向上」、「HIV診断検査の充実」という3つの柱に分け、各分担研究者は詳細な検討と改善を行っていく。そして、各研究の過程が、そのまま事業としての実効性をもって機能するように、早期診断に直接的な影響を与える研究計画を立案する。これらの丁寧に積み上げられた検査により、自治体と連携した検査体制のモデルを構築し、我が国の現状に合った質の高い検査体制を整備していくことを目指す。
結果と考察
本研究班においては以下の分担研究が計画・実行されている。
1.自治体と連携した検査モデルの構築と効果分析に関する研究
2.大阪における検査システムの構築に関する研究
3.検査機会の拡大による疫学的な評価や予測に関する研究
4.MSMおよびゲイ・バイセクシュアル男性のHIV検査受検行動につながる支援
5.ホームページやスマホを利用した検査施設受検向上に関する研究
6.拠点病院を中心としたHIV検査の実態と検査体制向上に関する研究
7.保健所におけるHIV検査・相談の現状評価と課題解決に向けての研究
8.献血におけるHIV検査、検査目的の受診への対応
9.民間クリニックにおける効果的なHIV即日検査の実施と質の向上のための研究
10.MSMを対象とした、HIV/STIs即日検査相談の実施及びinnovativeな検査手法の開発
11.現在のHIV検査法の問題解決とCDCの新規検査基準に準じた我が国の新規検査ガイドライドラインの作成
12.地方衛生研究所が担うHIV検査の現状評価と課題の解決
13.地方診療所における検査体制の課題検証と整備に関する研究
これらの各分担者の研究では、感染流行の中心であるMSMによる受検アクセスの改善、病院・診療所や保健所等の検査機関における検査体制の再評価、検査情報の発信や予約システムの検討などが行われた。また、新たな診断検査の評価や試験導入を行い、検査ガイドラインの改定へ向けた準備も進められている。さらに、疫学的な評価や効果予測を行う分担研究をおくことにより、各研究遂行の過程で検査戦略を向上させられるような仕組もつくった。
自治体モデルの構築研究では、行政のエイズ担当者も研究協力者として参加することで、各分担研究の成果が事業としての実効性をもって機能するように計画され、梅毒の既往感染率を利用したHIV受検勧奨、東京東地域でのMSM即日検査の開催など、すでに成果も得られ始めている。次年度以降は、地方県も複数選択して加えることで、地域にあった受検勧奨の方法をさらに検討していくことを計画している。
これまでの検査体制で受検勧奨を行いにくい検査対象者としては、地方のMSM、年齢層の高いMSM、異性間の感染者、外国人などが挙げられる。したがって今後は、このような検査の届かなかった対象者へも受検勧奨を推進するため、新たな検査体制の確立も必要となる。一方、病院を対象とした調査の結果では、術前や入院時などのルーチンとして行われていたスクリーニング検査でも、早期診断につながる一定の効果があったことも示された。したがって、より質の高いopt-inの検査体制を丁寧に積み上げていくとともに、病院や診療所における限定的なopt-outの可能性についても検討を継続していく必要があると考えられた。
また、世界におけるHIV検査では、自己検査の拡大も推奨されるようになっている。次年度以降の本研究班では、郵送検査のような自己検査を示す「プレ検査」という概念を提唱することで、新たな受検勧奨の可能性についての検討も開始する方針である。
結論
本研究班によって構築されていく、地域の自治体の特徴に合わせた検査体制モデルは、すでに研究と同時に実効性をもった事業としても機能するようになってきている。さらに、本研究班で整備された検査体制は、長期的な戦略としても早期診断に影響を与えることを目指している。その結果として、エイズ発症者の減少、長期合併症予防、さらに感染拡大を防ぐという、我が国のエイズ対策における大きな目標に貢献することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-05-11
更新日
2023-07-20

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201618008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
50,848,000円
(2)補助金確定額
50,769,706円
差引額 [(1)-(2)]
78,294円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 22,661,322円
人件費・謝金 9,055,708円
旅費 5,076,466円
その他 13,976,210円
間接経費 0円
合計 50,769,706円

備考

備考
その他のうち委託費78,294円は返還済み。

公開日・更新日

公開日
2024-06-13
更新日
-