日本国内のHIV感染発生動向に関する研究

文献情報

文献番号
201618002A
報告書区分
総括
研究課題名
日本国内のHIV感染発生動向に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
5,011,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
正確かつ効率よく日本国内のHIV感染発生動向を把握することを目的とし、エイズ発生動向調査のデータを用いた統計学的解析、血清診断学的解析を行う共に、日本のサーベイランス体制に則したHIV感染者数推定法を提唱する。
研究方法
H27年度までの本研究の推進により日本国内のHIV感染者数の推定に向けて①新規報告数に占めるHIV感染者とAIDS患者(病変エイズを含まない)、②新規報告者のうち1年以内に感染したと推測されるHIV感染者の割合の2点を主要なパラメータとする改良型逆算法(Modified-back-calculation)を構築した。平成28年度はこの感染数理モデルパラメータを設定するため、日本国内の主要都市を例にの新規HIV報告者に占める早期診断者の割合を血清診断学的手法を用いてデータ収集を行った。
結果と考察
血清学的データの解析により、新規診断者のうちHIV感染早期にHIV検査により診断された人の割合は都市によって異なることを示した。まらこれを一つのファクターとして推定日本国内HIV感染者の算出、診断率を解析した。その結果、年間HIV発生数、未診断率、早期診断率には地域性があることが示唆された。
結論
日本国内のHIV診断数(報告数)近年は国内全体で見た場合HIV診断数は横ばい傾向が続いているが、HIV発生数の傾向には地域性があることが示唆された。大都市圏以外では報告数の変動が大きいことからHIV流行の変動を鋭敏に把握することが難しいと考えられるが、日本国内のより正確なHIV発生動向把握のためには継続的な地域別調査が重要であると考えられる。本研究は日本国内のHIV発生動向を把握する上で有効な手段となりうる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201618002B
報告書区分
総合
研究課題名
日本国内のHIV感染発生動向に関する研究
課題番号
H26-エイズ-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松岡 佐織(国立感染症研究所 エイズ研究センター)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
HIV感染拡大抑制は重要課題であり、そのためにHIV感染発生動向の正確な把握が必要である。日本国内でHIV感染症は感染症法に基づき発生報告が義務づけられている第5類感染症である。感染症サーベイランスシステムを介して、国内新規HIV感染・エイズ診断例はエイズ発生動向委員会に報告され、年間新規HIV感染・エイズ報告件数が公開されている。しかしながらHIV感染症は無症候期の長い慢性感染症であるため、多くのHIV感染者が感染を自覚せず、感染者として把握・報告されていない可能性が高い。実際、HIV感染後エイズ発症まで一般には5年以上を要するにもかかわらず、エイズ発症により初めてHIV感染が判明する例が毎年500件近く(年間新規HIV感染・エイズ報告件数の約3割)報告されている。したがって、実際の国内HIV感染者数は報告件数を大幅に上回っていると予想される。しかしながら日本政府の公式見解としての推定HIV感染者数の発表はない。
本研究では正確かつ効率よく日本国内のHIV感染発生動向を把握することを目的とし、エイズ発生動向調査のデータを用いた統計学的解析、血清診断学的解析を行う共に、日本のサーベイランス体制に則したHIV感染者数推定法を提唱することを目的に研究を推進した。
研究方法
諸外国の各国政府から公式に発表されている感染者推定理論に関して調査を行い、日本のHIV蔓延率、社会構造、サーベイランス体制を考慮し、我が国のHIV感染者推定に適した推定理論を精査した。その結果、我が国においてはエイズ発生動向調査にて1985年以降HIV診断数が報告されているためこのデータを基に感染数理モデル、特に逆算法(Back calculation )を用いた方法が有用であると判断した。特に、カナダ・オーストラリア等で考案された①新規診断数、②新規AIDS診断数、③新規報告数に占める早期診断者の割合の3つの情報を指標とした手法が日本の推定値算出において特に有用であると判断し、各データの収集、解析を行った。
結果と考察
新規HIV感染者(報告者)の約半数が各自治体が実施する無料匿名検査で診断されていることに着目し、実際に血清診断を担当し検体が保管されている地方衛生研究所に研究協力を戴き管轄地域における年間総受検数、抗HIV抗体検査陽性数(報告数)、HIV核酸増幅検査陽性検体数を調査した。さらに抗HIV抗体検査陽性検体に関してはHIV incidence assayを基に新規報告数に占める早期診断者の割合を算出した。HIV感染から半年以内に例を早期診断者として感染から診断に至る期間の確率密度分布を作成し、エイズ発生動向報告値に外挿し、年間HIV発生数、累計推定感染者数を算出した。日本国内において近年はHIV診断数は横ばい傾向が続いているが、本研究の実施により未診断者の動向、早期診断率は地域により差があることを示した。大都市圏以外では報告数の変動が大きいことからHIV流行の変動を鋭敏に把握することが難しいと考えられる。日本国内のより正確なHIV発生動向把握のためには継続的な地域別調査が重要であることが示唆された。
結論
諸外国の各国政府から公式に発表されている感染者推定理及びサーベイランスから提供可能なデータ種の比較を行った。その結果、日本国内の現在のHIV流行状況、サーベイランス体制を考慮するとエイズ発生動向調査報告値とバイオマーカーを融合させた手法が日本国内HIV感染者推定理論として有用かつ実現性が高いと結論づけた。

公開日・更新日

公開日
2017-10-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201618002C

収支報告書

文献番号
201618002Z