子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究

文献情報

文献番号
201617020A
報告書区分
総括
研究課題名
子宮頸がんワクチンの有効性と安全性の評価に関する疫学研究
課題番号
H27-新興行政-指定-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
祖父江 友孝(国立大学法人大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座環境医学)
研究分担者(所属機関)
  • 垣添 忠生(日本対がん協会・泌尿器科学)
  • 福島 若葉(大阪市立大学大学院医学研究科・公衆衛生学)
  • 原 めぐみ(佐賀大学医学部社会医学講座・予防医学分野)
  • 柴田 政彦(大阪大学大学院医学系研究科・疼痛医学)
  • 榎本 隆之(新潟大学医学部・産婦人科)
  • 上田 豊(大阪大学大学院医学系研究科・産科学婦人科学・婦人科 腫瘍学)
  • 宇川 義一(福島県立医科大学・医学部・医学科・神経内科学講座)
  • 平田 幸一(獨協医科大学医学部・神経内科)
  • 岡 明(東京大学医学部・小児科)
  • 宮本 信也(筑波大学人間系・発達行動小児科学)
  • 喜多村 祐里(津田 祐里)(大阪大学大学院医学系研究科・精神科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
26,924,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 垣添 忠生(平成28年4月1日~平成28年9月20日)→なし 榎本 隆之(平成28年4月1日~平成28年9月20日)→なし 上田 豊(平成28年4月1日~平成28年9月20日)→なし

研究報告書(概要版)

研究目的
HPVワクチンについては、2010年から予算事業及び予防接種法に基づく接種がなされていたが、接種後の広範な疼痛や運動障害等の多様な症状を有する患者が報告されたことから、2013年6月以降、国は積極的な勧奨を差し控えている。
本研究では、1:全国疫学調査、2:症例フォローアップ調査、3:有効性に関する症例対照研究により、HPVワクチンを巡る様々な課題を解決するために必要な科学的エビデンスを提供することを目的とする。
研究方法
1.全国疫学調査
調査手法は、厚生労働省研究班考案の「難病の全国疫学調査マニュアル」の手順を一部変更し適用した。調査対象期間は2015年7月1日-12月31日(調査開始時点から過去に遡った6ヵ月間)である。症例基準は下記1-4すべてを満たす者とした。1:12-18歳(調査対象期間受診時点の満年齢)、2:疼痛および感覚(光・音・におい)の障害/運動障害/自律神経症状/認知機能の障害が少なくとも1つ以上ある、3:上記2の症状が3ヵ月以上持続している、4:上記2及び3のため就学・就労に影響がある。
一次調査の対象は、全国の病院の10診療科および厚生労働省指定の「HPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関」の窓口診療科から、病床規模や病院特性に応じて全数または半数を抽出した。「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した診療科に二次調査を依頼し、個人票で臨床疫学特性(含:HPVワクチン接種歴)の情報を得た。個人票の内容(記載の傷病名で主治医が症状をおおよそ説明できるか否か、主治医が「症状を最も説明できる」と指定した傷病名)から、報告症例の症状が「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」に相当するか否かを判断した。一次調査と二次調査の情報をあわせて、「多様な症状があり、HPVワクチン接種歴のない患者数および有訴率」を推計した。

2. 症例フォローアップ調査
HPVワクチン接種歴があり、接種以降に以下のいずれかの症状をひとつ以上有し(疼痛(感覚の障害を含む)/運動機能障害/自律神経失調様症状/認知機能障害)、その症状のために協力医療機関等を受診中の患者を対象に、毎月1回、症状や臨床経過に関する質問紙票による調査を実施し患者本人による症状評価を調べるとともに、その推移を観察する。

3.有効性に関する症例対照研究
有効性を評価するために、HPVワクチン接種開始後の2013年度から2017年度の5年間に20-24歳の子宮頸がん検診受診者の細胞診の結果をもとに、異常ありを「症例」、生年と市町村をマッチした者を「対照」とし、HPVワクチン接種記録と照合して接種歴を調べ、HPVワクチン接種と子宮頸部前癌病変との関連を検討する。
結果と考察
1.全国疫学調査
2016年1月に調査を開始した。一次調査の回答率は60.3%(11,037/18,302診療科)であり、508診療科が「調査対象期間中に、症例基準を満たす患者の受診あり」と回答した。二次調査の回答率は63.8%(324/508診療科)であった。12~18歳における「HPVワクチン接種後に生じたとされる症状と同様の多様な症状」の有訴率は、男子:20.2/人口10万人、女子:40.3/人口10万人、HPVワクチン接種歴のない女子:20.4/人口10万人、と推計された。すなわち、HPVワクチン接種歴のない青少年においても「多様な症状」を有する者が一定数存在した。

2.症例フォローアップ研究
2017年3月末時点で、16施設で56例の対象者(患者本人)の同意に基づくアンケート調査が進行中である。平均5.8回(最大12回)の回答票を回収した。最も訴えが多かった症状は、頭痛であり、次いで関節やその他の部位の痛み、めまい・ふらつき等であった。また症状の数が10以上である例が全体の30%程度であり、全体の約半数となる29例が、ワクチン接種後の症状による入院歴があると回答し、何らかの就学就労への影響があった例は93%を占めた。

3.有効性に関する症例対照研究
2016年8月末時点で9自治体より協力の承諾を得たことで、研究の基盤が確立した。実施体制の強化及び質の向上のため、2017年9月より日本医療研究開発機構研究費での研究に移行した。

本研究により、本邦におけるHPVワクチン接種の有効性と安全性に関する疫学的な観点からの評価結果が得られることとなり、新たな知見を追加することになる。それにより、HPVワクチンの定期接種の扱いに関する議論に資するとともに、副反応や健康被害救済を検討する際の参考資料となることが期待される。
結論
本研究では、1:全国疫学調査、2:症例フォローアップ調査、3:有効性に関する症例対照研究を計画し、研究を実施中である。

公開日・更新日

公開日
2017-07-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
2017-07-04

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201617020Z