新型及び季節性インフルエンザワクチン株の選定に資するサーベイランスの強化とゲノム解析に関する研究

文献情報

文献番号
201617019A
報告書区分
総括
研究課題名
新型及び季節性インフルエンザワクチン株の選定に資するサーベイランスの強化とゲノム解析に関する研究
課題番号
H27-新興行政-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小田切 孝人(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 齋藤 玲子(新潟大学医歯学総合ウイルス学(国際保健学教室))
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 中村 一哉(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 高下 恵美(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 藤崎 誠一郎(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 白倉 雅之(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 岸田 典子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
  • 桑原 朋子(国立感染症研究所 インフルエンザウイルス研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究からの成果は、毎年見直される国内およびWHOのワクチン株の選定を支える基幹情報となるため、ウイルス分離用検体の収集力の強化、ウイルスの解析手法の改良、ワクチン接種後のヒト抗体応答の評価、新型インフルエンザ出現時に速やかにリスク評価できるツールの開発、などを進め国内株サーベイランスの強化とワクチン株選定の支援を行う。
研究方法
・ウイルス分離効率の高い培養細胞の検索を行った。
・中和試験法によるウイルス抗原性解析系の改善を行った。 
・A(H3N2)感染患者の臨床検体から、卵分離株の回収法の改良を行った。また、細胞分離―卵高継代によるワクチン製造株の開発を行った。
・地衛研と共同で薬剤耐性株のモニターと試験法のEQA予備試験を実施した。
・新型インフルエンザとしてヒト社会で流行する可能性を秘めたウイルスによるヒト感染事例が発生した際に、速やかにリスク評価できるように、ウイルスレセプター特異性を簡便に鑑別できる系の構築と、改良を行った。
・4価インフルエンザワクチンの免疫原性を評価するために、成人層および老人層のワクチン接種前後の抗体価を赤血球凝集抑制(HI)試験で測定した。
結果と考察
結果:
分離効率のより良い培養細胞を検索し、株サーベイランスにおけるウイルス回収力の向上を図った。2016/17シーズンのインフルエンザ流行株の抗原性解析、遺伝子解析、薬剤耐性感受性試験を実施した。前シーズンから大きな変化はなかった。薬剤耐性株検出検査のEQAの試験実施を行った。コア・サポート地衛研では、期待どおりの精度で、検査が実施されていた。A(H3N2)亜型ウイルスの抗原性解析手法の改良と国際標準化を完了し、次シーズンから本格的に導入できる見通しができた。卵に馴化させても抗原変異しないワクチン株A/埼玉/103/2014の開発に成功し、わが国発のWHO承認世界標準ワクチン株として、国内外のワクチンメーカーに供給できるようになった。国産ワクチンのB型ワクチンの免疫原性は低く、改良が必要である。
考察:
本研究班では、ウイルス分離効率を高める試みとして、現行のウイルス分離に使用してる培養細胞より効率の高い細胞がないか検索しているが、まだ見つかっておらず今後も精力的に適切な細胞の特定を続けたい。
 最近のA(H3N2)亜型ウイルスは、分離効率が低く、赤血球凝集活性も低く、従来の手法を用ではウイルスの確保および抗原性解析に困難を極めている。諸外国のWHO-CCおよび本研究班では、分離用細胞の変更の検討および中和試験法の採用でそれを克服しようとしているが、まだ途中段階で諸外国のWHO-CCと技術的なすり合わせをしつつ、同一の手法の導入と国際標準化を進めていきたい。次シーズンから改訂したシステムを実稼働させる予定である。
 現在国内外で使用されているA(H3N2)ワクチンは、卵馴化による抗原変異が甚だしく、流行株からの抗原性の乖離が大きく、ワクチンの有効性を低下させている。国内外のワクチン対策に影響を与えているこの問題を克服できるワクチン株A/埼玉/103/2014の開発に、本研究班が成功した。このワクチン株は、卵馴化しても流行株に近い抗原性を維持しており、この株を採用した場合は、有効性の期待できるA(H3N2)ワクチンを供給できる。このため、A/埼玉/103/2014株はWHOからもワクチン候補株として認定され、世界標準ワクチン株として本研究班から供給可能となっている。本研究班の国際貢献の典型例となった。今後も、このような利点を持った日本発の世界標準ワクチン株をどんどん供給していきたい。
 4価ワクチンの免疫原性を本研究班で評価したところ、B型ワクチンは世界基準値を下回り、有効性の期待できない力価不足のワクチンとなっていることが判明した。ワクチンの抗原量を増加させる等の改善が必要であり、それに向けての対応を提言したい。
結論
・より分離効率の良い培養細胞を検索し、株サーベイランスにおけるウイルス回収力の向上を図った。
・2016/17シーズンのインフルエンザ流行株の抗原性解析、遺伝子解析、薬剤耐性感受性試験を実施し、前シーズンから大きな変化はなかったことを確認した。
・薬剤耐性株検出検査のEQAの試験的実施を行い、良好な成績を得た。
・A(H3N2)亜型ウイルスの抗原性解析手法の改良と国際標準化を完了し、次シーズンから本格的に導入ができる見通しができた。
・卵に馴化させても抗原変異しないワクチン株A/埼玉/103/2014の開発に成功し、わが国発のWHO承認世界標準ワクチン株として、国内外のワクチンメーカーに供給できるようになった。
・国産ワクチンのB型ワクチンの免疫原性は低く、改良が必要。

公開日・更新日

公開日
2017-05-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201617019Z