文献情報
文献番号
201617018A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症の発生に備えた感染症サーベイランスの強化とリスクアセスメント
課題番号
H27-新興行政-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
- 村上 義孝(東邦大学 医学部 社会医学講座医療統計学分野)
- 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
- 中村 廣志(神奈川県衛生研究所)
- 島田 智恵(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
- 有馬 雄三(国立感染症研究所 感染症疫学センター )
- 谷口 清州(国立病院機構三重病院)
- 齋藤 玲子(新潟大学 大学院 医歯学系 国際保健学)
- 小渕 正次(富山県衛生研究所)
- 西藤 成雄(西藤小児科こどもの呼吸器・アレルギークリニック)
- 中野 貴司(川崎医科大学)
- 石黒 信久(北海道大学病院 感染制御部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
10,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
・感染症発生動向調査の評価と改善法の提案
感染症サーベイランスは、統計学的な観点からの評価とともに、ステークホルダーの合意のもとにシステムを継続的に評価し、改善のための方策がとられなければならない。感染症発生動向調査は、日本における法律に基づく包括的な感染症サーベイランスシステムであり、疾患疫学の変化・医療体制の変化・新たな検査法の開発・受診動向の変化・社会の新たなニーズ等に対応した改善のための検討を継続して実施していく必要がある。
・感染症発生動向調査の利用の促進
感染症発生動向調査は大きく分けると、定点サーベイランスと全数サーベイランスに分類され、定点サーベイランスは疾患の発生傾向の継続的な観察のために、一方、全数サーベイランスは疾患ごとにより様々な利用目的で運用されている。また、定点サーベイランス・全数サーベイランスともに、病原体サーベイランス情報と連動した運用が進みつつあるところである。今後は、疾患ごとに、感染症発生動向調査にその他の情報源(例:地域の医療機関におけるパイロットサーベイランス)を合わせて解釈する方法について検討を重ねていく必要がある。
・新興・再興感染症発生への準備
2009年のパンデミックインフルエンザや、海外における中東呼吸器症候群や鳥インフルエンザA(H7N9)の発生、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行など、また、日本においてはSFTS症例の探知、国内発生のデング熱の流行などの例を引くまでもなく、新興・再興感染症発生への対応準備は常に怠ってはならない。それにあたっては、急性健康危機事例の探知とリスクアセスメント、地方衛生研究所における体制整備、病原体診断の手法の開発、医療機関と公衆衛生分野の連携などが重要であり、これらは、通常の感染症発生動向調査の強化の延長線上にある。
感染症サーベイランスは、統計学的な観点からの評価とともに、ステークホルダーの合意のもとにシステムを継続的に評価し、改善のための方策がとられなければならない。感染症発生動向調査は、日本における法律に基づく包括的な感染症サーベイランスシステムであり、疾患疫学の変化・医療体制の変化・新たな検査法の開発・受診動向の変化・社会の新たなニーズ等に対応した改善のための検討を継続して実施していく必要がある。
・感染症発生動向調査の利用の促進
感染症発生動向調査は大きく分けると、定点サーベイランスと全数サーベイランスに分類され、定点サーベイランスは疾患の発生傾向の継続的な観察のために、一方、全数サーベイランスは疾患ごとにより様々な利用目的で運用されている。また、定点サーベイランス・全数サーベイランスともに、病原体サーベイランス情報と連動した運用が進みつつあるところである。今後は、疾患ごとに、感染症発生動向調査にその他の情報源(例:地域の医療機関におけるパイロットサーベイランス)を合わせて解釈する方法について検討を重ねていく必要がある。
・新興・再興感染症発生への準備
2009年のパンデミックインフルエンザや、海外における中東呼吸器症候群や鳥インフルエンザA(H7N9)の発生、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行など、また、日本においてはSFTS症例の探知、国内発生のデング熱の流行などの例を引くまでもなく、新興・再興感染症発生への対応準備は常に怠ってはならない。それにあたっては、急性健康危機事例の探知とリスクアセスメント、地方衛生研究所における体制整備、病原体診断の手法の開発、医療機関と公衆衛生分野の連携などが重要であり、これらは、通常の感染症発生動向調査の強化の延長線上にある。
研究方法
感染症発生動向調査の評価と改善法の提案(疾患疫学の変化・医療体制の変化・新たな検査法の開発・受診動向の変化・社会の新たなニーズ等に対応した改善のための検討を継続して実施)、感染症発生動向調査の利用の促進(病原体サーベイランス情報と連動した運用、感染症発生動向調査にその他の情報源を合わせて解釈する方法についての検討)、新興・再興感染症発生への準備(急性健康危機事例の探知とリスクアセスメント、地方衛生研究所における体制整備、病原体診断の手法の開発、医療機関と公衆衛生分野の連携など)を通して、エビデンスベースの対応、リスクアセスメントの手法の国内の関係者における普及、パイロットサーベイランスのフレキシブルな運用が可能となる。
結果と考察
エビデンスベースの対応:感染症発生動向調査を適切に運用すること、また、複数の情報源を合わせ多面的な解釈を行うことにより、感染症発生動向調査の結果をより適切に対策に結び付けることができるようにする。
リスクアセスメントの手法の国内の関係者における普及:急性健康危機事例のリスクアセスメントは、定性的な手法を用いることが多く、様々な事例を通して、関係者が経験を積むとともに、レベル分けについての関係者のキャリブレーションを行っておくことが重要である。また2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての準備としての、日本における急性健康危機事例の探知とリスクアセスメントの体制について、国際的な理解を得る活動も行っていく必要がある。
パイロットサーベイランスのフレキシブルな運用:感染症発生動向調査を補完できる情報を収集するフレキシブルなシステムの運用を継続することにより、必要時の他地域・他疾患への転用も選択肢となりうる。
新たな病原体診断法のサーベイランスへの導入:簡易で確実な病原体診断法の開発は、サーベイランスの質の向上に貢献することが期待できる。
リスクアセスメントの手法の国内の関係者における普及:急性健康危機事例のリスクアセスメントは、定性的な手法を用いることが多く、様々な事例を通して、関係者が経験を積むとともに、レベル分けについての関係者のキャリブレーションを行っておくことが重要である。また2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向けての準備としての、日本における急性健康危機事例の探知とリスクアセスメントの体制について、国際的な理解を得る活動も行っていく必要がある。
パイロットサーベイランスのフレキシブルな運用:感染症発生動向調査を補完できる情報を収集するフレキシブルなシステムの運用を継続することにより、必要時の他地域・他疾患への転用も選択肢となりうる。
新たな病原体診断法のサーベイランスへの導入:簡易で確実な病原体診断法の開発は、サーベイランスの質の向上に貢献することが期待できる。
結論
平成28年度においては、改正感染症法(平成28年4月施行)による病原体情報収集法変更の影響を評価した。また、当研究班で開発されたパイロットサーベイランスにより感染症発生動向調査をより深く解釈するための検討、当該研究班で開発された病原体診断系の本格導入についての検討、サーベイランスシステム評価の指針作り、急性健康危機事例におけるリスクアセスメントの手法の検討などを行った。また、東京オリンピック・パラリンピックへの備えとして、海外に向けて発信すべき感染症サーベイランスに係る情報を整理しているところである。5月に開催されるG7伊勢志摩サミットにおいては、医療機関におけるイベントベースサーベイランスを試行しその評価を行った。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
-