梅毒感染リスクと報告数の増加の原因分析と効果的な介入手法に関する研究

文献情報

文献番号
201617013A
報告書区分
総括
研究課題名
梅毒感染リスクと報告数の増加の原因分析と効果的な介入手法に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-008
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大西 真(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 有馬 雄三(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 川名 敬(日本大学 医学部)
  • 中山 周一(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国において、梅毒は2010年以降増加しており、感染リスクと報告数の増加の原因分析を踏まえ対策を講じることが急務となっている。2012年以降は男性に加えて女性の増加も認められ異性間性的接触による感染伝播が推測されている。女性の増加は20代が大半を占め、先天梅毒の増加も懸念される。
 医療機関からの詳細情報を収集精査し、リスク要因、増加原因を分析し、また治療実態を把握することで、梅毒感染のリスク要因・増加要因を推測することが重要である。特に異性間性的接触による梅毒の感染拡大を防ぐ効果的介入法について提言することが重要となっている。
研究方法
現状の発生動向調査から得られる情報の精査、症例対照研究の実施、産婦人科医療機関への全国調査の利用、梅毒トレポネーマ核酸検出法の利用拡大の方策、妊婦スクリーニングを用いた一般成人女性における梅毒感染の増加の実態の把握を試みた。
結果と考察
東京都における梅毒の現状把握においては、男女共に、異性間性的接触による感染の届出が増えていることを認めた。早期顕症梅毒がその大半を占め、2014年以降、地域的な分散傾向が見られた。診療所からの報告数が病院からの報告数を大きく上回り、早期顕症梅毒(I期)が前者に多かった。「異性間性的接触による梅毒感染リスクに関する研究」の症例対照研究においては、協力医療機関の確保を行い、アンケートとプロトコルを作成し、国立感染症研究所の倫理審査(2017年2月20日)を通して、承認を2017年3月10日に得た。4月1日から予備調査を開始する。
 唾液検体から梅毒トレポネーマ核酸を検出するための標準プロトコルを作成した。また、検体由来梅毒トレポネーマの分子型別と23S rRNAのマクロライド耐性型変異の検出を時系列に行い、2016年以降国内でも耐性型梅毒トレポネーマが急激の増加していること、それが最頻分子型14d/fでの増加によるものであることを明らかにした。
 2011~2015年の5年間で梅毒合併妊婦が約2倍に増加している(非妊娠女性でも約2倍に増加)。その60%が10-20歳代であった。予後が確認された梅毒合併妊婦152例中21例(14%)で先天梅毒(母子感染が成立)が発生していた。梅毒合併妊婦の25%が未受診妊婦もしくは不定期妊婦であった。
結論
発生動向調査のより詳細な解析が現状把握するためには重要である。一方で妊婦健診における梅毒スクリーニングのデータ収集・分析によって、対象を明確にしたデータ解析を体系的に実施することも欠かせないツールである。
国内の梅毒に関する症例対照研究ははじめての試みである。個人情報の保護はもとより、調査協力をえるためにもアンケート内容等を吟味するなど周到な準備が欠かせない。2017年度の最初の数ヶ月で予備調査を実施し、内容をさらに吟味することを目指す必要がある。
病変中に存在する梅毒トレポネーマのゲノム解析を含む分子タイピングは、他の病原細菌と比較して困難であるが、病原微生物側から症例間の関連性を把握する可能性を秘める唯一の方法である。技術的に困難な点は解決可能となってきており、本研究でも積極的に取り入れていくことが重要である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201617013Z