成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究

文献情報

文献番号
201617010A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の侵襲性細菌感染症サーベイランスの構築に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-005
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大石 和徳(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 池辺 忠義(国立感染症研究所細菌第一部)
  • 大島 謙吾(東北大学病院総合感染症科)
  • 笠原 敬(奈良県立医科大学感染症センター)
  • 神谷 元(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 木村 博一(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 金城 雄樹(国立感染症研究所真菌部)
  • 窪田 哲也(高知大学医学部)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 高橋 英之(国立感染症研究所細菌第一部)
  • 高橋 弘毅(札幌医科大学医学部内科学第三講座)
  • 武田 博明(済生会山形済生病院)
  • 田邊 嘉也(新潟大学医歯学総合病院感染管理部・呼吸器内科)
  • 常 彬(国立感染症研究所細菌第一部)
  • 西 順一郎(鹿児島大学大学院医歯学総合研究科微生物学分野・感染症学)
  • 藤田 次郎(琉球大学大学院 感染症・呼吸器・消化器内科学)
  • 丸山 貴也(独立行政法人国立病院機構三重病院・呼吸器内科)
  • 村上 光一(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 山崎 一美(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター臨床研究センター)
  • 渡邊 浩(久留米大学医学部感染制御学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
特記事項なし

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、侵襲性肺炎球菌感染症(IPD), 侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD), 侵襲性髄膜炎菌感染症(IMD),劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の感染症法上の発生動向を解析し、10道県における届出症例の患者情報と原因菌を医療機関と自治体の協力のもとに収集し、各疾患の感染症発生動向と原因菌の血清型や遺伝子型等の関連性を明らかにすることにある。
研究方法
研究デザインは前向き観察研究で、IPD, IHD, STSSについては、国内10道県で感染症発生動向調査(NESID)に報告された症例を後述の研究対象者基準に従って登録し、その基本情報を各自治体から研究分担者に連絡する。一方、年間症例数が少ないIMD については全県で同様の調査を実施する。
 全体計画としては、当該研究期間(平成28~30年度)内にIPD,IHDに加えてIMD,STSSを追加した精度の高い患者及び病原体の積極的サーベイランスを構築する。成人のIMDの患者発生動向と原因菌の血清型の動向調査と病型と原因菌の関連性を解析し、成人のSTSS症例の原因菌の侵入門戸を明らかにする。
結果と考察
(結果)
1. IPD及びIHDの報告数は5歳以下の小児と65歳以上の高齢者で多かった。病型では5歳以下の小児で菌血症の割合が高く65歳以上の高齢者で肺炎の割合が高かった。STSSについても2013年以降年々増加傾向にあり、2016年は過去最多の報告数(497例)であった。本邦ではGASによるSTSSが最多であり、報告数も増加傾向にある。近年、GGSによるSTSSも増加傾向にある点は特筆すべき点である。一方、IMDの報告例は年間約40例で諸外国と比較して少なかった。

2.侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の臨床像と細菌学的解析
2013年4月から2015年12月までに報告されたIPD 494例の年齢中央値は70歳で基礎疾患のある患者は75%(372/494)、免疫不全を伴う患者は37%(184/494)であった。原因菌(n=494)におけるPCV13含有血清型の割合は44%、PPSV23含有血清型の割合は67%であった。免疫不全のある患者群の原因菌におけるワクチン含有血清型の割合は、PCV13含有血清型、PPSV23含有血清型のいずれにおいても、免疫不全のない患者群よりも低かった(PCV13: 33% vs 49%-54%, PPSV23: 55% vs 73-80%)。
 また、2013 年 7 月から 2016 年 12 月現在までに、収集した 742 検体のうち、血清型 3 型がもっとも分離率が高く、17.5% であった。一方、血清型 23A および 10A 型による髄膜炎の症例が多くみられた。
3.侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD)の臨床細菌学的解析
 2013 年から2016年の間に、10道県において成人の侵襲性インフルエンザ菌感染症が 72例報告された。患者の年齢は中央値が 74 歳であった。これらの患者のうち菌血症を伴う肺炎を呈した患者は、送付菌株数の半数以上を占めた (35/68、51%)。72 株のうち、69 株が莢膜型別用免疫血清で特異的凝集を示さずnon-typable Haemophilus influenzae (NTHi) と判定した。また、b 型、e 型、f 型が各 1 株認められた。
4.劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)の細菌学的解析
  10道県で14症例の劇症型溶血性レンサ球菌感染症を引き起こしたG群レンサ球菌が収集された。地域間でemm型の違いは見られなかった。
5.侵襲性髄膜炎菌感染症の臨床細菌学的解析
侵襲性髄膜炎菌感染症の原因菌を含む国内分離株22株の血清学的及び分子疫学的解析を行ない、血清群はY、続いてB、少数のCが検出され、遺伝子型はST-23 complexに分類される株が多く認められた。
(考察)
2014年および2015年分離株(44.9~45.2%)に比べ、2016年分離株の PCV13 のカバー率 (37.4%) の低下がみられた。小児用PCV13による成人への間接効果が示唆された。成人のIHDについては、患者はその年齢中央値が74歳と高齢でありその病型が菌血症を伴う肺炎であることはIPDとの類似点である。
結論
成人IPD742例の原因菌の血清型分布では、2014~2015年までの原因菌のPCV13のカバー率(44.9~45.2%)は2016年に37.4%まで減少し、小児PCV13の定期接種導入による間接効果と考えられた。成人IHD症例72例の臨床像は成人IPDと同様であり、その原因菌の96%はNTHiであった。今後、STSS, IMDの臨床像、原因菌の細菌学的解析が期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-26
更新日
-

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公開日・更新日

公開日
2017-06-20
更新日
-

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文献番号
201617010Z