文献情報
文献番号
201617007A
報告書区分
総括
研究課題名
新興・再興感染症のリスク評価と危機管理機能の確保に関する研究
課題番号
H28-新興行政-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
齋藤 智也(国立保健医療科学院 健康危機管理研究部)
研究分担者(所属機関)
- 森永 裕美子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部)
- 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 調 恒明(山口県環境保健センター)
- 中里 栄介(佐賀県唐津福祉事務所)
- 松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
- 大曲 貴夫(国立国際医療研究センター病院 国際感染症センター)
- 中瀬 克己(岡山大学医療教育統合開発センター)
- 田村 大輔(自治医科大学 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
国立保健医療科学院大山研究官が退職したため、担当分野を研究代表者齋藤が引き継いだ。
研究報告書(概要版)
研究目的
近年は新興・再興感染症の発生が顕著である。本研究は、我が国に新興・再興感染症が侵入した際を想定し、国や地方自治体等における対応体制リスク評価 (脆弱性評価)を行い、危機管理で確保すべき機能を明らかにすることを目的とする。
新興・再興感染症対策の検討や予算化は、発生時に短期間にアドホックに行われる事が多く、中長期的な計画・実行・評価・改善(PDCA)サイクルが形成されていなかった。米国等の対策の評価指標等を参考にしつつ、我が国独自の体制の指標化を行い、共通目標の明確化が行われるべきである。本研究班では、第一に新興・再興感染症対策及び危機管理について関係機関の脆弱性を評価する項目と指標を明らかにすること、第二に自治体でセルフアセスメントを試行し、評価項目・指標の有用性を検討すること、そして第三にセルフアセスメントツールによる評価結果を解析し、脆弱性の改善に関する政策提案を実施することを目的とする。
新興・再興感染症対策の検討や予算化は、発生時に短期間にアドホックに行われる事が多く、中長期的な計画・実行・評価・改善(PDCA)サイクルが形成されていなかった。米国等の対策の評価指標等を参考にしつつ、我が国独自の体制の指標化を行い、共通目標の明確化が行われるべきである。本研究班では、第一に新興・再興感染症対策及び危機管理について関係機関の脆弱性を評価する項目と指標を明らかにすること、第二に自治体でセルフアセスメントを試行し、評価項目・指標の有用性を検討すること、そして第三にセルフアセスメントツールによる評価結果を解析し、脆弱性の改善に関する政策提案を実施することを目的とする。
研究方法
対象疾患は、新興・再興感染症の中でも、非常在性で、対応に比較的緊急性を要し準備を必要とする様々な感染症について、その対策を幅広く捉えられる対象設定を行うこととした。班員全体での検討課題として、脆弱性評価に関する①国内先行研究に関する調査、②海外事例の調査を実施した。そして個別分野及び分野間の連携に関する脆弱性評価指標のための検討として、③国の疫学調査機能評価に関する検討、④国による自治体の疫学調査支援についての自治体側からの有用性評価手法に関する検討、⑤自治体における感染症サージ対応能力に関する検討、⑥特定および一種感染症指定医療機関の新興再興感染症に対する準備体制の脆弱性評価に関する検討、また海外事例調査の一検討案件として、対抗医薬品の事前準備に関する問題について、新型インフルエンザ対策を例に挙げた⑦米国の新型インフルエンザ対策に関するプレパンデミックワクチン及び抗インフルエンザウイルス薬備蓄に関する共同会議での検討、を分担研究課題として実施した。そして、これらの研究知見を総括し、脆弱性評価指標とその活用方策に関する検討を実施した。
結果と考察
対象疾病は呼吸器系感染症(MERS、SARS、新型インフルエンザ等)、接触感染(エボラウイルス病等)、動物媒介性感染(デング熱、ジカウイルス病等)を想定した対策を対象とすることで、必要な対策を網羅的にカバーする脆弱性評価が概ね検討可能と考えられた。①国内先行研究は16件をレビューした。結果、新興・再興感染症対策として包括的な全体像が見える評価体系の形成と、その評価結果の共有を行えることが重要と考えられた。②海外先行研究調査からは、6件の取り組みを見出し、新興・再興感染症対策に関係する指標の作成への様々なアプローチが明らかになり、評点の分類や、標準化、形成手法、評価の活用方法に関する有用な示唆が得られた。③ 国の疫学調査機能評価では、感染研FETPの現状と課題について、キャパシティ構築に一定の成果を残しているものの、自治体へのFETPへのスタッフ派遣には障害があることを明らかにした。④ 国による自治体の疫学調査支援についての有用性評価は、派遣FETPに対する受け入れ自治体側からの評価のための質問票を試作し、ヒアリングを試行し、質問票の改善を行った。⑤ 感染症サージ対応能力については、自治体への調査で、回答自治体の35%が感染症対応への応援派遣が可能と回答し、自然災害と比して、支援対応能力が少ない現状を明らかにした。⑥ 感染症指定医療機関の準備体制については、海外及び国内で公刊されている研究・調査結果及び総説等を元に、特定及び一種感染症指定医療機関が備えておくべき準備内容をチェックリストの形でまとめた。⑦ 米国の新型インフルエンザ対策に関する医薬品備蓄については、感染症対応のための国家医薬品備蓄戦略に関する知見が得られた。これらの知見を総括し、評価指標案を作成した。大項目として、対応フェーズ別に、「政策形成」「予防」「検知」「対応」と分類し、その下に中項目を設定した。それぞれの能力については、感染症対策全般に共通する「基盤能力」と「新興・再興感染症対応に特異的な能力」に分類した。この分類の下、70の評価指標項目案と回答の選択肢案を示した。また、この活用方法として、自治体がブロック単位でこの評価指標を活用したワークショップを開催する「点検とフィードバック」の仕組みの形成を提案した。
結論
新興・再興感染症対策のリスク評価(脆弱性評価)に関する指標形成の検討を行い、評価指標の試案と共に、今後の活用の方向性について検討を行い、ワークショップ方式による「総点検とフィードバック」の提案を行った。次年度以降、評価指標試案の詳細な検討とワークショップの試行を行うほか、各分野の指標や分野間の連携指標についてさらに検討を進める。
公開日・更新日
公開日
2017-06-02
更新日
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