感染症発生時の公衆衛生的対策の社会的影響の予測及び対策の効果に関する研究

文献情報

文献番号
201617001A
報告書区分
総括
研究課題名
感染症発生時の公衆衛生的対策の社会的影響の予測及び対策の効果に関する研究
課題番号
H26-新興行政-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部総合研究センター 診療情報分析部)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所感染症疫学センター 第一室)
  • 田辺 正樹(三重大学医学部附属病院感染制御部)
  • 奥村 貴史(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
7,273,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2009年の新型インフルエンザの経験を踏まえ、新型インフルエンザ発生時に、迅速にリスクアセスメントができることを目標として、初期の症例情報を確実に収集・整理出来るような体制を整備し、また発生後のリスクアセスメントを可能にするサーベイランス体制を設置して、発生時に比較出来るようなベースラインを把握しておくことである。また、パンデミック対策の一環として、発生時の感染防御方法、環境消毒のあり方、航空における感染対策についてコンセンサスを得ておくこと、必要なガイドラインを準備しておくこと、また現状の事前準備についても持続的に評価を行い、パンデミック発生時に柔軟で迅速な対応ができるように準備しておくことを目的とする。
研究方法
初期の症例情報収集システムは昨年度までに改良したシステムを用いて、体制が異なると考えられる地方自治体の協力を募って、システムのシミュレーションを行うことにより、実用に耐えるシステムのための課題抽出と今後の改良方針の策定を行った。新型インフルエンザ発生時の事前準備としての抗ウイルス薬の備蓄とワクチンの接種体制について最新の文献レビューを行った。国立病院機構が収集する電子カルテ情報を元にWHOガイドラインの提唱する評価方法を適応し、同時に感染症法に基づく基幹定点医療機関のデータについてWHOのガイドラインに沿ったベースラインの設定を試みた。また、今後の迅速なデータ収集のために、リアルタイム電子カルテデータベースとして開発が進められているSS-MIX2によるデータの今後の利用可能性について検討を行った。
結果と考察
初期の症例情報収集システムは、自治体によって地域の状況や体制が大きく異なることが判明し、完成したシステムの今後の実用化に向けての計画を策定出来た。国立病院機構が収集する電子カルテ情報を元に、季節性インフルエンザにおけるリスクアセスメントが可能であることが判明し、WHOのガイドラインに沿ったベースラインを設定することができた。このベースラインは感染症法に基づく発生動向調査においても基幹定点に適用出来ることも確認出来たため、基幹定点医療機関における医療負荷把握についても実現可能と考えられた。現在国立病院機構本部で整備中のリアルタイム電子カルテデータベースからも同様のデータが抽出可能なことが示され、パンデミック発生時にも迅速にリスクアセスメントが可能であることが示唆された。また、同様の手法で個別医療機関にも適用可能であり、現場での医療体制の方針転換の指標としても使用可能であった。新型インフルエンザ発生時の事前準備としての抗ウイルス薬の備蓄とワクチンの接種体制について最新の文献レビューを行い、ペラミビルの倍量・倍期間の有用性の科学的なエビデンスは乏しいことを報告した。
結論
初期症例情報収集システムは、今後は地方自治体の体制の違いを吸収するためにも、運用トレーニングと連動させながら実用化に向けて進めていくこと、国立病院機構の電子カルテネットワークは季節性及びパンデミックインフルエンザのリスク評価に用いることが可能であることが判明し、またパンデミックの際のペラミビルの培養倍期間投与の有効性の科学的エビデンスは乏しい。

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201617001B
報告書区分
総合
研究課題名
感染症発生時の公衆衛生的対策の社会的影響の予測及び対策の効果に関する研究
課題番号
H26-新興行政-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部総合研究センター 診療情報分析部)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症疫学センター 第一室)
  • 田辺 正樹(三重大学医学部附属病院 感染制御部)
  • 奥村  貴史(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
新型インフルエンザ発生時に迅速に効果的な公衆衛生的対策がとれるように、流行初期に患者の情報を集約できる体制を整備し、またこのときに現場で混乱がおきないように、科学的エビデンスに基づき、関係者があらかじめ合意できている感染対策方法、環境消毒、航空機の感染対策を準備しておくこと、そして感染が広がりつつあるときに、その重症度や医療機関への負荷を含めた迅速なリスクアセスメントができる手法を確立しておくことを目的とした。
研究方法
初期症例情報収集システムについては、初年度はプロトタイプを設計・開発し、その後シミュレーションにより、実用に向けた課題を抽出しシステムの改良を行った。最終年度にはシステムの改良を継続しつつ、いくつかの地方自治体に参加協力を依頼して、拡大シミュレーションを行い、地方自治体の体制の違いによる課題を抽出した。電子カルテネットワークを利用したサーベイランスは、初年度は国立病院機構が業務として1ヶ月に一度の頻度で収集しているレセプト・DPCデータベースの構造を解析し、公衆衛生的インパクトを評価するための指標について科学的エビデンスやWHOのガイドラインなどから設定した。これらをもとに、国立病院機構のデータベースからのデータ抽出、感染症法に基づく基幹定点医療機関において指標の評価を行い、季節性インフルエンザシーズンのデータ解析を行い実用性を検討した。3年目にかけて、WHOのガイドラインで示されているベースラインをこれらのデータから算出すると共に、感染症発生動向調査の基幹定点においても同様の検討を行った。また、実際の発生時に迅速に運用出来ることを目的として、国立病院機構で進めているリアルタイム電子カルテネットワークからのデータへの適用可能性を検討した。公衆衛生対応の準備としては、初年度には感染対策のガイドラインを作成し、WHOやCDCのガイドラインの邦訳と共に公開した。2年目には航空機での感染対策や環境消毒についての科学的エビデンスを集約し、最終年度には、新型インフルエンザ発生時の大規模ワクチン接種のための、欧米の状況を調査し、新型インフルエンザへの事前準備として備蓄されている抗ウイルス薬について最新の文献レビューを行った。
結果と考察
流行初期にたくさんでる疑い例や確定例に関する情報を効率的に集約するために、FAXとWebを使用した電子システムを開発しプロトタイプとして準備した。地方自治体ごとの体制の違いを解決すべく、今後の稼働までの道筋を樹立した。国立病院機構の電子カルテネットワークから収集されるデータを用いて、現場に負担をかけずに患者情報を収集できるシステムを設置した。国立病院機構病院、感染症法に基づく基幹定点医療機関におけるデータにおいて、検討を行ったところ、効率的に評価ができることが示され、国立病院機構病院のうち、代表的な病院からのデータだけでも、代表性をもって、評価できることが判明した。これら代表的な病院は現在新たな電子カルテネットワークとして、リアルタイムのデータが収集できる状況になっており、ここからのデータを用いても上述と同様の評価ができることが示され、新型インフルエンザ発生時には、このデータをもって、現場に負担をかけずに、迅速なサーベイランスとリスク評価ができることが判明した。現場の合意を得た医療機関、保健所、検疫所における感染対策手法を作成し公開した。また、環境消毒、航空機における感染対策、大規模ワクチン接種手法について科学的なエビデンスを集約し、抗インフルエンザウイルス薬として備蓄されているペラミビルの倍量・倍期間投与の科学的エビデンスについて最新の文献レビューを行ったところ、それらの有効性を示す根拠がないことを報告した。
結論
パンデミックの初期症例情報収集システムを開発し、今後自治体間での体制の違いを考慮し、システムのトレーニングとして自治体の方々に使用してもらいながら、改良を進めていく方法が合理的との結論を得た。国立病院機構の電子カルテデータベースおよび感染症発生動向調査データからもWHOのガイドラインに基づくベースラインを設定することにより、代表性を持って新型インフルエンザ発生時の重症度とインパクトが評価できることを示し、リアルタイムデータでも応用可能なことを示した。ペラミビルの倍量倍期間投与については科学的なエビデンスは乏しいことを報告した。

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201617001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
WHOの示すパンデミックのリスクアセスメントガイドラインに沿ったインパクトの評価が、国立病院機構のデータおよび発生動向調査における基幹医療機関データによって可能なことを示した。
臨床的観点からの成果
季節性インフルエンザによるインパクトは、母数を含んだ解析によって、ウイルスの重症度の変化によるものよりも、罹患年齢層による影響が大きく、その重症度はシーズンによって大きく変わらないことを報告した。
ガイドライン等の開発
新型インフルエンザ等が発生した際の感染対策に関する手引き、WHO、CDCのMERSのガイドライン、WHOの航空における衛生・公衆衛生ガイドの邦訳作成・公開。新型インフルエンザ対策訓練のための机上演習ツールは、平成28・29年に厚労省ワークショップにおいて活用。抗インフルエンザウイルス薬の倍量・倍期間投与に関する文献調査結果は、平成29年5月12日の勉強会、5月29日の第9回厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する小委員会にて資料として使用。
その他行政的観点からの成果
国立病院機構における電子カルテデータから、新たな入力負担無しにインフルエンザの
臨床的重症度と医療への負荷を評価出来ることを示し、これは国立病院機構の保持するSS-MIX2による電子カルテデータベースからリアルタイムサーベイランスに応用出来ることを示した。
その他のインパクト
特記事項無し

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
9件
その他論文(英文等)
1件
学会発表(国内学会)
3件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2017-06-15
更新日
-

収支報告書

文献番号
201617001Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,000,000円
(2)補助金確定額
8,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,744,676円
人件費・謝金 1,309,991円
旅費 922,420円
その他 2,297,232円
間接経費 727,000円
合計 8,001,319円

備考

備考
委託費1,319円は、国立保健医療科学院の自己負担

公開日・更新日

公開日
2018-03-23
更新日
-