高次脳機能障害者の社会的行動障害による社会参加困難への対応に関する研究

文献情報

文献番号
201616029A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害者の社会的行動障害による社会参加困難への対応に関する研究
課題番号
H28-精神-一般-004
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
中島 八十一(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害の主要症状のうち、特に社会的行動障害が強い場合、家庭や社会生活に支障を来たすため、当事者家族や支援施設等からは適切な対応法の確立が望まれている。具体的には、暴言・暴行など脱抑制が顕著な例、支援施設や医療機関に頼ることができずにひきこもる例、さらに性犯罪や万引き等の触法行為を繰り返す例等があり、これらの実態は少なからずあるという以上に具体的な数字はないのが現状である。その理由として、社会的行動障害の強さや支援の困難さを表す共通指標がないことが挙げられる。
本研究では社会的行動障害の共通指標の確立を目的として、支援困難事例について、困難の発生状況や現在行われている対応と帰結について分析し、実態を明らかにする。
研究方法
社会的行動障害を操作的に定義付け、その測定のためのスケール等を決定する。
実態調査:医療機関または障害福祉サービス事業所において、社会的行動障害の事例を収集し、支援困難の内容を分類し困難度合いを定義する。次年度は定義に基づいて実態調査を行う。
実数調査:診療報酬レセプトのデータを用いて集計期間内に受診した対象者のうち、高次脳機能障害の主要症状名を含むレセプトが発生した者の実数を算出する。
(倫理面への配慮)
所属する施設の倫理審査委員会の承認を経て実施する。個別調査ではインフォームドコンセントを徹底し、承諾を得る。対象者の個人情報等に係るプライバシーの保護ならびに如何なる不利益も受けないように十分に配慮する。
結果と考察
初年度(平成28年度)は倫理審査委員会の承認を得て事例収集(本成果概要提出時点で20例)を実施した。さらに年度末に向けて収集を継続し、社会的行動障害の操作的定義のための基礎データを作成する。慎重な議論により、社会的行動障害の測定スケールとしてNPI(Neuropsychiatric Inventory)の採用を決定した。実数調査については診療報酬レセプトデータを用いた推計を試行し、奈良県内の国保加入者の高次脳機能障害患者数を算出した。その結果、全傷病82,695,179レコード、患者数592,607人のうち、高次脳機能障害(主傷病のICD-10コードがF04、F06、F07である者)は 23,638レコード、患者数3,005人であり2年8ヶ月間に受診した患者数(国保)の0.5%と推計された。
結論
本研究は、第71回社会保障審議会障害者部会(2015年9月25日)において提起された社会的行動障害により周囲が対応に困難を感じる方々への支援体制を強化するための基礎調査であり、実態を明らかにし、具体的な方策を示すことは全国の行政施策に直接寄与するものである。
初年度は、次年度以降に実施予定の実態調査に向けて事例収集に基づいて社会的行動障害を定義し、計画通りに進捗した。
また次年度以降に実施する実態調査および診療報酬レセプトデータを用いた実数調査は、精神神経学、社会福祉学、公衆衛生学の分野横断型の取り組みであり、社会的行動障害を複数の学術領域から多角的にとらえて補完しあい、社会に還元する新しい試みである。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616029Z