刑の一部執行猶予制度下における薬物依存者の地域支援に関する政策研究

文献情報

文献番号
201616027A
報告書区分
総括
研究課題名
刑の一部執行猶予制度下における薬物依存者の地域支援に関する政策研究
課題番号
H28-精神-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松本 俊彦(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 白川 教人(横浜市こころの健康相談センター)
  • 和田 清(埼玉県立精神医療センター)
  • 近藤 あゆみ(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 嶋根 卓也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
  • 森田 展彰(国立大学法人 筑波大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
23,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、第1に、「刑の一時執行猶予制度」施行後における、薬物依存症者の包括的な地域連携ガイドライン案(改訂版)を開発、普及させることであり、第2に、今後、薬物依存症者の地域支援のあり方を検討する際の基礎資料となるように、薬物依存症者の転帰調査システムを開発し、地域における薬物依存症者支援の好事例に関する情報を集積・整理するである。
研究方法
本研究班は、自治体、保護観察所、更生保護施設、民間支援団体などをカバーする6つ分担研究班から構成されている。初年度には、①保護観察所および民間支援団体における薬物依存症者コホート調査システムを開発し、②地域保健機関および自治体関係者、医療機関、保護観察所、民間支援団体、更生保護施設などの連携の実態を把握し、支援好事例の収集と地域支援の課題を明らかなすることとした。2年度には、①保護観察対象者および民間支援団体利用者のコホート調査を開始し、②地域における薬物依存者支援の好事例の分析と聞き取り調査を行い、最終年度では、以上の結果を踏まえ、薬物依存症者の地域支援に関する包括的ガイドライン案の開発を行う計画である。
結果と考察
H28年度は、①保護観察所および民間支援団体における薬物依存症者コホート調査システムを開発し、②地域保健機関および自治体関係者、医療機関、保護観察所、民間支援団体、更生保護施設などの連携の実態を把握し、支援好事例の収集を行った。
 保護観察対象者のコホート研究については、精神保健福祉センターを情報収集地点に設定し、東京都多摩地区、川崎市、神奈川県域、福岡市における薬物事犯保護観察対象者を、保護観察開始時点より3年間追跡する計画が確定し、2017年3月よりコホート研究を開始した。また、民間支援団体ダルク利用者のコホート研究については、ベースライン調査を実施し、全国46施設の利用者約700名から有効回答を得ることができた。
 薬物依存症者地域支援体制に関する精神保健福祉センターへの聞き取り調査では、同機関における薬物依存症に対する直接支援の実態、ならびに、同機関を起点とした連携の実態に関する情報収集を行った。その結果、全国の精神保健福祉センターのうちほぼ半数がSMARRP類縁のプログラムを実施もしくは具体的に計画を立てていることが判明した。また、いくつかの意欲的な精神保健福祉センターでは保護観察所と依存症回復支援施設と緊密な連携をしていることが明らかになり、良好な連携関係を可能にするための関係性については、高い頻度で双方の職員が顔を合わせ、相互理解を深めることが可能な体制づくりが求められる必要性があると考えられた。
 更生保護施設の調査からは、薬物処遇重点実施更生保護施設ではSMARPPなどの認知行動療法の導入に積極的に取り組み、治療的な視点での関わりに手ごたえを感じている実態が明らかにされた。その一方で、自分の問題を十分認識していない事例への対応に関する懸念、あるいは、女性事例や高齢事例などで社会復帰が困難な状況も明らかになり、今後の課題となっていた。また、ダルクなどの民間リハビリ施設や自助グループ、さらには医療保健福祉機関との連携が十分とはいえない状況にあり、その点も課題となっていることが明らかにされた。
 以上、今年度の研究活動を通じて、大規模なコホート研究実施体制が予定通り進み、刑の一部執行猶予制度施行後の地域支援の核となるべき地域機関における課題も明らかにされた。次年度以降、コホート研究の進捗を管理するとともに、地域における課題をさらに掘り下げ、実際の支援活動に資するガイドライン案の提言を行っていく予定である。
結論
本研究は、薬物依存症者の地域支援にかかる包括的な地域連携ガイドライン案(改訂版)を開発し、薬物依存症者の転帰調査システムを開発し、地域における薬物依存症者支援の好事例に関する情報を集積・整理することを目的として、自治体(精神保健福祉センター、保健所、保健センター等)、保護観察所、更生保護施設、民間支援団体などをカバーする6つ分担研究班の体制をもって研究班活動を開始した。
 研究班初年度にあたる今年度は、保護観察所および民間支援団体における薬物依存症者コホート調査システムを開発・実施し、②地域保健機関および自治体関係者、医療機関、保護観察所、民間支援団体、更生保護施設などの連携の実態を把握し、地域支援における課題を明らかにした。
 今後は、コホート調査および実態調査の知見を踏まえて、関係機関職員との意見交換を重ね、薬物依存症者の地域支援に関する包括的ガイドライン案の開発を行う予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,900,000円
(2)補助金確定額
29,743,178円
差引額 [(1)-(2)]
156,822円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,478,534円
人件費・謝金 4,450,889円
旅費 3,328,272円
その他 10,585,483円
間接経費 6,900,000円
合計 29,743,178円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
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