国、都道府県等において実施する発達障害者診療関係者研修のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201616026A
報告書区分
総括
研究課題名
国、都道府県等において実施する発達障害者診療関係者研修のあり方に関する研究
課題番号
H28-精神-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
神尾 陽子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 近藤 直司(大正大学 人間学部臨床心理学科)
  • 石飛 信(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 児童・思春期精神保健研究部 )
  • 立花 良之(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター こころの診療部乳幼児メンタルヘルス診療科)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業実務研修センター)
  • 加茂 登志子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 成人精神保健研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
発達障害児者の医療ニーズの拡がりを踏まえて、発達障害を専門としないかかりつけ医など地域の医療関係者が発達障害支援の地域内連携で果たす役割を増大させることを目的として、全国都道府県および政令指定都市が実施する「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」(平成28年度~)で用いる標準的な研修教材を作成する。
研究方法
テキストの内容は、地域で発達障害児の診療や相談にかかわる可能性のある、発達障害の専門家ではないかかりつけ医(小児科、内科、診療内科、精神科など)や、産業医、学校医、市町村の精神保健および母子保健関係者などの医療関係者を対象に想定し、エビデンスにもとづくものであることを前提とする。具体的には、今年度は、かかりつけ医が発達障害児者の健康に資する役割や地域診断や地域内連携のあり方を示し、早期発見から専門機関への紹介まで、併存症の診断評価、治療の実際や医療以外での支援の実際、国内外の好事例などをカバーするように、エビデンスに基づく内容のなかから、本邦の医療状況を考慮し、地域の実臨床で有用な項目、かかりつけ医、当事者、専門医のニーズが高い項目、地域内連携の好事例などを厳選し、研究代表者および研究分担者に加え、研究協力者も含む執筆陣で暫定版を作成した(資料1、2)。内容の妥当性については、エキスパートに加え、研修を実施するステークホルダー、そして当事者や家族などのコンセンサスの得られるように、訂正を行う予定である。次年度に暫定版について意見をもらう外部委員(発達障害を専門とする研究者や小児科医、
精神科医、発達障害当事者、自治体で研修を担当する地域の指導的な立場にある精神科医や小児科医など、日本精神・神経学会および小児保健協会の内諾済み)からはすでに内諾を得ている。
今年度は、「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」の実施母体となる都道府県および指定都市の発達障害支援施策が市町村で実際に行われている早期発見や早期支援の実施にどのように影響するかを検討することを目的として行われた。分析は、かかりつけ医等研修の実施を予定している52の都道府県および指定都市の障害保健福祉担当課からすでに得られた行政データを2次利用した。
結果と考察
1)研修テキスト暫定版の作成
代表の神尾が大項目を決め、分担の石飛、近藤、立花、加茂、永田とそれぞれのねらいを検討したうえで小項目を決定した(資料1)。資料1を目次として、研究代表、分担、そして研究協力者(日詰正文、高橋脩、原口英之、斎藤卓弥、梅永雄二、丹羽登、井上雅彦、外岡資朗、津田明美、中井七美子)を執筆陣に迎え、暫定版(資料2)を作成した。また分担の石飛は好事例を収集した。
2)発達障害早期支援に対する都道府県(指定都市を含む)の施策と市町村における発達障害の早期発見・早期支援の進捗との関連
1.6健診での標準的アセスメントの導入に関する施策方針には都道府県によって違いがあった。また市町村の早期発見・早期支援の実態把握の程度それ自体に都道府県によるばらつきが大きかった。1.6健診での要観察児の発見率は都道府県によって大きなばらつきがあり、一部の自治体ではサービス提供の効率の観点で発達障害リスクの把握の精度を見直して手続きを標準化する必要が示唆された。また、1.6健診で標準的アセスメントの導入を進めている都道府県ではそうでないところと比べて、発達支援事業所の数が有意に多かった。これらより、都道府県が市町村での早期発見・早期支援を推進する責務を負っていることを踏まえると、その役割が適正に遂行されているかどうかを検証するための行政データは現状では乏しく、今後は適切な評価指標となりうるサービス関連の情報の集約と地域で部署を横断して長期的に追跡してデータを収集し検証しうるシステムの構築が必要と考えられる
結論
発達障害についてのニーズは高い一方で、経験や知識、価値観などは医療関係者のあいだでも多様で幅が広い。本研究の結果は、公的に提供される発達障害の早期発見・早期支援のサービス内容は都道府県の施策の影響を受ける可能性を示唆するものであった。こうした現状を踏まえて、次年度のテキスト作成においては、都道府県の施策方針の地域差を縮小するという視点を追加する必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616026Z