精神障害者の就労移行を促進するための研究

文献情報

文献番号
201616021A
報告書区分
総括
研究課題名
精神障害者の就労移行を促進するための研究
課題番号
H26-精神-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 剛(NTT東日本関東病院 精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良雄(メディカルケア虎ノ門)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 酒井 佳永(跡見学園女子大学文学部臨床心理学科)
  • 堀 輝(産業医科大学医学部精神医学)
  • 山口 創生(国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
  • 山内 慶太(慶應義塾大学看護医療学部 ・ 大学院健康マネジメント研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
18,050,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1 中小企業との連携強化方法の提示
2 短期間のリワークプログラムモデルの開発
3 地域における諸機関との連携の標準化
4 疾病・服薬の運転技能への影響の検討
5 文献レビュー
6 再休職状況の把握
7 リワークプログラム利用群と非利用群の比較
8 リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究
9 リワークマニュアルの有効性の検証
10 リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究
11 リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化
12 発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化
13 医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討
研究方法
1 社会保険労務士を対象とする、精神疾患、復職対応、リワークプログラムについての研修会を行い効果を検証した
2 プログラム開始から3ヵ月の変化について短期型と既存型の比較を行った
3 事業場が希望する連携について調査を行った
4 病状の安定した双極性障害患者の運転技能に関する調査を行った
5 リワーク支援プログラムに関する文献のレビューを行った
6 再休職時ストレス要因シートの有用性調査を行った
7 リワークプログラム利用者と非利用者の就労継続性について比較検討を行った
8 欠勤等により発生するabsenteeism、就労下において発生する罹病によるpresenteeismについて検討した
9 リワークマニュアルを用いて、休職中の気分障害患者の復職に対する有効性の検討を無作為化比較試験を用いて行った。
10 11 うつ病リワーク研究会のワーキングチームによる検討を行った。
12 作成された手引きの「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の可能性」「スタッフへの有用性」「患者への有用性」「職域への有用性」について、リワークプログラムのスタッフに調査を行った
13 精神障害者に対する就労サービスとしてIPSや援助付き雇用型サービスを提供する機関あるいは志向する機関を対象に調査を行った
結果と考察
1 短時間の研修で、精神疾患、復職対応、リワークプログラムについての理解、復職支援への自信が改善することが示された
2 短期型と既存型の両群において、復職準備性、抑うつ症状、QOLの改善が認められ、社会機能、復職準備性、抑うつ症状の変化は両群で差が認められなかった
3 事業場が希望する連携は、本人の特性を基にした業務・職場への配慮事項についてであった
4 病状の安定した双極性障害患者の運転技能は健常者に比し低下していなかった
5 対象論文を変更して、再度作業を行なうことになった
6 分類の妥当性については、すべて、3.00を越える評価を得た
7 利用者の復職1年後の就労継続推定値は83.2%であり、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析において、非利用の場合のハザード比は2.343 (95%CI: 1.456-3.772)であり、リワークプログラムの再休職予防効果が示された
8 臨床的症状と労働生産性の回復には時間のズレが見られた
9 30例が対象となり、介入群(N=15)、非介入群(N=10)例をフォローアップした
10 リワークプログラムに対する理解度と実務経験をもとに区分するようにした
11 ガイドライン案が作成された
12 「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の可能性」「スタッフへの有用性」「患者への有用性」については、3.00を越える評価であった
13 援助付き雇用型サービスは利用者に多くの就労機会や長い就労期間、機能の改善をもたらす可能性がある
結論
1 社労士と医療機関が連携して復職支援に取り組むことで、中小規模事業場への支援を拡げられる可能性がある
2 短期型が、既存型より非劣性である可能性がある
3 連携できるリワーク・コーディネータースタッフを確保が有用と考えられる
4 一律に規定されている、法律の厳罰化や添付文書記載は、議論の余地がある
5 再度作業を進めている
6 再休職時のストレス要因を確認するためのシートの妥当性が確認された
7 リワークプログラムの再休職予防効果が示された
8 労働生産性の回復は復職後よりゆるやかに改善する
9 マニュアルの有効性は検証されなかった
10 スタッフ認定制度と連動したリワーク施設における実地研修案が作成された
11 ガイドラインは書籍として発表される予定である
12 職域との連携については、別な資料が必要である
13 就労が利用者の主観的な生活の質やウェルビーイングの向上に必ずしも結びつかない可能性がある

公開日・更新日

公開日
2017-09-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-09-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201616021B
報告書区分
総合
研究課題名
精神障害者の就労移行を促進するための研究
課題番号
H26-精神-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
秋山 剛(NTT東日本関東病院 精神神経科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 良雄(メディカルケア虎ノ門)
  • 尾崎 紀夫(名古屋大学大学院医学系研究科精神医学)
  • 酒井 佳永(跡見学園女子大学文学部臨床心理学科)
  • 山内 慶太(慶応義塾大学看護医療学部・ 大学院健康マネジメント研究科 )
  • 堀 輝(産業医科大学医学部精神医学)
  • 山口 創生(国立精神・医療研究センター精神保健研究所社会復帰研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
1 中小企業との連携強化方法の提示
2 短期間のリワークプログラムモデルの開発
3 地域における諸機関との連携の標準化
4 疾病・服薬の運転技能への影響の検討
5 文献レビュー
6 再休職状況の把握
7 リワークプログラム利用群と非利用群の比較
8 リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究
9 リワークマニュアルの有効性の検証
10 リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究
11 リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化
12 発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化
13 医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討
研究方法
1「一次予防スライドの作成」「復職時の伝達項目の整理」「復職後のフォローアップツールの作成」「社会保険労務士を対象とする研修の有効性確認」を行なった、
2 短期型と既存型のプログラムの比較を行った
3 医療機関、事業場に対する調査を行った
4 うつ病、双極性障害患者の運転技能への影響を調査した
5 リワークに関する文献のレビューを行った
6 再発時のストレス状況を把握するシート案を作成し、産業医を対象に有用性調査を行った
7 リワークプログラム利用者の長期予後、大規模調査によるリワーク利用群と非利用群の比較を行った
8 復職後のabsenteeism、presenteeismについて調査し、年間の労働生産性の経時的変化を確認した
9 リワークマニュアルの改訂とRCTによる有効性の検証を行った
10 11 うつ病リワーク研究会のワーキンググループにおいて検討を行った
12 リワーク支援のための手引きを作成し、有用性調査を行った
13 対象機関水準・対象者属性の確認、援助付き雇用型サービスの質の評価を行った
結果と考察
1 社労士を対象とする短時間の研修で、精神疾患、復職対応、リワークプログラムについての理解、復職支援への自信が改善することが示された
2 社会機能、復職準備性、抑うつ症状の変化は両群で差が認められなかった。
3 事業場が希望する連携は本人の特性を基にした業務・職場への配慮事項についであることが判明し、具体的な連携方法や帳票、啓発用パンフレットが作成された
4 患者群について、運転技能と背景情報、症状評価尺度、認知機能の変数間において有意な関連は認めず、処方薬と運転技能についても明確な関連は認めなかった
5 英語論文を完成し、投稿した後、書き直しを行っている
6 「再休職時ストレス要因シート全体」「業務上ストレス」「プライベートのストレス」の「分かりやすさ」「分類の妥当性」について、概ね肯定的な評価を得ることができた。
7 リワークプログラム利用者の就労継続性は有意に良好であり(p=0.001)、Cox比例ハザードモデルによる多変量解析においても、非利用の場合のハザード比は2.343 (95%CI: 1.456-3.772)であり、リワークプログラムの再休職予防効果が示された
8 1年間の労働生産性の経時的変化について、HPQにより算出した各時点の直近4週間の状況をFriedman testによって検討した結果、absenteeism(p=0.002), presenteeism(p<0.000)であり、いずれも有意に改善の傾向が見られた
9 リワークマニュアルの効果については確認されなかった
10 テキストの作成、研修会の試行、スタッフ認定制度と連動したリワーク施設における実地研修案の作成が行われた
11 リワークプログラムを安定して続けていくために必要な標準的中核プログラムと施設基準を示したガイドラインが作成された
12 手引きが作成され「手引きのわかりやすさ」「対象のわかりやすさ」「診断に関わらない支援の容易さ」「スタッフに役に立つか」「患者に役立つか」「職域に役に立つか」について、有用性が確認された
13 援助付き雇用型サービスは利用者に多くの就労機会や長い就労期間、機能の改善をもたらす可能性がある一方で、日本の文化では就労が利用者の主観的な生活の質やウェルビーイングの向上に必ずしも結びつかない可能性も示唆された
結論
課題5は作業が継続しており、課題9については、研究期間中にはリワークマニュアルの効果を確認するデータが得られなかった。その他の課題については、当初の目的が達成された。

公開日・更新日

公開日
2017-09-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-09-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201616021C

成果

専門的・学術的観点からの成果
短期間のリワークプログラムモデルの開発:短期間のリワークプログラムモデルが既存型と同等の有効性を持つ可能性がある。文献レビュー:文献レビューの対象論文を変更して、再度作業を進めている。リワークプログラム利用群と非利用群の比較:リワークプログラム利用者の再休職予防効果が示された。
臨床的観点からの成果
中小企業との連携強化方法の提示:社労士と医療機関が連携して、中小規模事業場への支援を拡げられる可能性がある。リワーク指導マニュアルのRCT:マニュアルを使用することで抑うつ症状の改善が大きい可能性が示された。再休職状況の把握:再休職時のストレス要因を確認するために、今回作成されたシートを使用することができる。
ガイドライン等の開発
疾病・服薬の運転技能への影響の検討:運転適性判断においては、一律の規定ではなく、複合的要因に配慮した総合的な判断が必要であると考えられた。リワークプログラムの多様化に対応したプログラムのモデル化:ガイドラインとなる書籍の原稿を完成させた。発達障害の特徴を有する対人関係障害者へのリワーク支援の系統化:今回作成された資料を、リワークスタッフによる、発達障害の特徴を有する対人関係障害者への支援に用いることができる。
その他行政的観点からの成果
リワークプログラムの費用と効果に関する医療経済的研究:労働生産性は臨床的症状の回復の程度と時間的にズレがあり、復職後にゆるやかに改善することが示された。リワーク施設職員の研修体制および評価に関する研究:今後、スタッフ認定制度や実地研修が進むことでより質の高い支援体制を各地で整えることが可能になると考えられる。医療機関から精神保健福祉士等がアウトリーチを行うことの有効性についての検討:援助付き雇用型サービスは利用者に多くの就労機会や長い就労期間、機能の改善をもたらす可能性がある。
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
10件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
奥山真司,大谷真,秋山剛
域における心理教育ツールの開発
最新精神医学 , 20 (1) , 11-20  (2015)
原著論文2
宮田明美, 岩本邦弘, 尾崎紀夫
うつ病、抗うつ薬と自動車運転
最新医学 , 69 , 114-118  (2014)
原著論文3
Miyata S, Noda A, Iwamoto K et al
Impaired cortical oxygenation is related to mood disturbance resulting from three nights of sleep restriction.
Sleep and Biological Rhythms , 13 , 387-394  (2015)
原著論文4
Miyata A, Iwamoto K, Kawano N et al
The effects of acute treatment with ramelteon, triazolam, and placebo on driving performance, cognitive function, and equilibrium function in healthy volunteers.
Psychopharmacology (Berl) , 232 , 2127-2137  (2015)
原著論文5
宮田明美, 岩本邦弘, 河野直子 他
睡眠薬と自動車運転
睡眠医療 , 9 , 33-40  (2015)
原著論文6
尾崎紀夫
精神障害者が自動車社会で暮らすために
高速道路と自動車 , 56 , 6-9  (2016)
原著論文7
阪野正大, 岩本邦弘, 尾崎紀夫
睡眠薬が認知機能に及ぼす影響
臨床精神薬理 , 19 , 49-59  (2016)
原著論文8
宮田明美, 岩本邦弘, 尾崎紀夫
うつ病患者の社会復帰を考える際に望ましい薬物療法とは
臨床精神薬理 , 20 , 277-282  (2017)
原著論文9
岩本邦弘, 尾崎紀夫
自動車運転と薬物問題
Modern Physician , 37 , 138-140  (2017)

公開日・更新日

公開日
2017-09-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201616021Z