摂食障害の診療体制整備に関する研究

文献情報

文献番号
201616020A
報告書区分
総括
研究課題
摂食障害の診療体制整備に関する研究
課題番号
H26-精神-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 哲也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所心身医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 裕絵(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所心身医学研究部)
  • 石川 俊男(国立国際医療研究センター国府台病院心療内科)
  • 西園 マーハ 文(白梅学園大学子ども学部発達臨床学科)
  • 吉内 一浩(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 須藤 信行(九州大学大学院医学研究院心身医学)
  • 福土 審(東北大学大学院医学系研究科行動医学分野)
  • 竹林 淳和(浜松医科大学附属病院精神科神経科)
  • 宮岡 等(北里大学医学部精神科学)
  • 井上 幸紀(大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学)
  • 中里 道子(千葉大学大学院医学研究院)
  • 和田 良久(京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学)
  • 生野 照子(社会医療法人弘道会なにわ生野病院心療内科)
  • 作田 亮一(獨協医科大学医学部)
  • 高宮 静男(西神戸医療センター精神・神経科)
  • 鈴木 眞理(堀田 眞理)(政策研究大学院大学保健管理センター)
  • 甲村 弘子(大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
15,385,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
目的はED患者が病態・病期・背景に応じて必要な診療や支援を受けられる診療体制とネットワークをつくるため、患者や診療の実態を調べ、整備の課題を明確化すること、早期発見・介入のための対応マニュアルを作成すること。治療プログラムを作成すること、施策の提言を行うことである。
(ED:摂食障害、AN:神経性やせ症、BN:神経性過食症、BED:過食性障害、OSFED:他の特定される食行動障害または摂食障害)
研究方法
実態調査として全国の病院の受診患者数および臨床疫学像、保健所・保健センターの相談事例、学校の養護教諭の対応、総合病院の診療科間の連携、地域の医療機関の連携、小児科や産婦人科の診療実態、救急領域、社会的機能と社会的支援、医療経済的課題について調査を実施した。ANの身体管理や入院治療プログラムの効果を検討し、養護教諭や非専門医を対象にしたEDへの対応指針を作成した。
結果と考察
全国患者数調査:一次調査で全国の20床以上の病院の関連診療科から病院規模別に層化抽出した5,220施設を対象に診断・性別毎の患者数を調べ、2,565施設(49.1%)から有効な回答を得た。2014年10月~2015年9月の1年間の受診患者数はAN 12,674、BN 4,612、BED 1,145、OSFED 2,445、分類不能3,630の計24,506例と推計された。推定患者数の65%が精神科、9%が心療内科、8%が小児科、4%が産婦人科、14%が内科であった。精神科では報告数上位5%の施設が全報告患者数の50%を、心療内科、小児科では60%を占めていた。1次調査で患者が報告された863施設8,850例を対象に2次調査を実施し3,659 例(41.3%)の回答を得た。
社会的機能の調査: ED85人、統合失調症25人、うつ病20人の3群間で本人、家族、主治医への調査によりED患者の社会機能は特に対人関係において統合失調症より低い傾向があり、周囲の支援者の介護負担も他の2疾患と同等であった。
産婦人科領域の診療実態:産科婦人学会専攻医指導施設637施設と大阪府の診療所・病院の産婦人科711施設を調査し、それぞれ245名(38.5%)、192名(27.0%)から回答を得た。過去5年間に回答者の6割がAN、2割がBNの診療を経験した。約4割の施設・医師が月経不順、無月経等の理由で他科から紹介されていた。産婦人科医の半数がEDの診療に消極的と答え、「相談できる医療機関のリスト」「初期対応マニュアル」や「連携ガイドライン」の要望が高かった。
「学校と医療機関とのより良い連携のための対応指針」作成:養護教員を対象に対応指針を作成した。重要課題として①EDの兆候の認知、②当該生徒へ接触と評価、③EDと治療の情報提供、④本人および保護者に専門的治療を勧めること、⑤医療・保健機関との連携、⑥学校内関係者との連携、⑦学校で可能な介入・支援・経過観察をあげ、55のCQを設定し、エキスパートコンセンサスをまとめ、臨床的妥当性を検討、解説を加えて作成した。
非専門医のための初期対応指針作成:①EDを疑い診断すること、②重症度の評価、③専門医への紹介の判断、④本人・家族への説明、⑤紹介先を受診しないときの対応、⑥他の医療機関との連携、情報提供の6つの重要臨床課題に対して87項目のCQを設定し、デルファイ法第1ラウンドで684件のステートメントを作成、45名のエキスパートパネルによる第2ラウンドで300項目が合意形成、第3ラウンドでは追加修正した789件のうち145件で合意形成し、最終的に445項目が採択され、指針の内容が完成した。
医療経済的課題調査:EDの適正な診療報酬を明確にするため、大学病院心療内科3施設、精神科3施設で医学的社会的患者背景、社会関係資本、レセプトの診療点数、診察時間、入院在院日数、発症/維持要因、通院時間、コスト、受領行動、他の医療機関でのサービスの利用状況等を調査した。197名のデータベースを構築した。
医療・相談機関リスト: EDの治療・相談や入院が可能な専門施設のリストを整備した。全国で372施設がリストアップされた。
結論
病院のED受診患者数は1998年の推計値に比較して著明な増加はなかった。しかし、一部の診療施設に多くのED患者が集中していた。ED患者の社会的機能の低下や、ケア負担は統合失調症やうつ病に匹敵し、社会的支援の必要性が示された。産婦人科領域でもEDを診る機会が多く、精神科・心療内科等との連携や初期対応が課題であった。養護教諭や非専門医のための対応指針を作成した。患者の早期発見、介入へ役立つことが期待される。医療経済的課題の調査・解析によりED診療に適正な診療報酬が明確化されることが期待される。

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201616020B
報告書区分
総合
研究課題
摂食障害の診療体制整備に関する研究
課題番号
H26-精神-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
安藤 哲也(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所心身医学研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 菊地 裕絵(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所心身医学研究部)
  • 石川 俊男(国立国際医療研究センター国府台病院心療内科)
  • 西園 マーハ 文(白梅学園大学子ども学部発達臨床学科)
  • 吉内 一浩(東京大学医学部附属病院心療内科)
  • 須藤 信行(九州大学大学院医学研究院心身医学)
  • 福土 審(東北大学大学院医学系研究科行動医学分野)
  • 竹林 淳和(浜松医科大学附属病院精神科神経科)
  • 宮岡 等(北里大学医学部精神科学)
  • 井上 幸紀(大阪市立大学大学院医学研究科神経精神医学)
  • 中里 道子(千葉大学大学院医学研究院精神医学)
  • 和田 良久(京都府立医科大学大学院医学研究科精神機能病態学)
  • 生野 照子(社会医療法人弘道会なにわ生野病院心療内科)
  • 作田 亮一(獨協医科大学医学部)
  • 高宮 静男(西神戸医療センター精神・神経科)
  • 鈴木 眞理(堀田 眞理)(政策研究大学院大学保健管理センター)
  • 甲村 弘子(大阪樟蔭女子大学大学院人間科学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
ED患者が必要な診療や支援を受けられる診療体制とネットワークをつくるため、ED患者や診療の実態を調べ、整備の課題を明確化すること。早期発見・介入のための対応マニュアルを作成すること。治療プログラムを作成すること、施策の提言を行うことである。
(ED:摂食障害、AN:神経性やせ症、BN:神経性過食症)
研究方法
実態調査として全国の病院の受診患者数および臨床疫学像、保健所・保健センターの相談事例、学校の養護教諭の対応、診療科間の連携、地域の医療機関の連携、小児科や産婦人科の診療実態、社会的機能と社会的支援、医療経済的課題について調査を実施した。ANの身体管理や入院治療プログラムの効果を検討し、養護教諭や非専門医を対象にしたEDへの対応指針を作成した。
結果と考察
実態調査:
全国の20床以上病院の5,220施設(診療科単位)で受診患者数を調査し、2,565施設(49%)から回答を得た。2014年10月から2015年9月の推計値はAN12,674、全診断合計で24,506であった。推定患者数の65%が精神科であった。報告数上位5%の施設が精神科では報告患者数の50%、心療内科、小児科では60%を占めた。
保健所、保健センター3071カ所を対象に相談実態を調査し1292カ所(42%)から回答を得た。4年10か月に3084の相談事例あり、罹病期間5年以上の慢性例が42%を占め、約4割の事例が治療中断ないし未受診であった。
4県の小、中、高校の養護教諭3679名を対象に学校でのEDへの対応を調査した。1886名(51%)から回答を得た。3年間でEDを疑われる生徒1620人に遭遇していた。遭遇率に関連する要因としてEDの知識が重要であった。
総合病院463機関、1895診療科に診療状況、他科との連携等を調査し470診療科(25 %)から回答を得た。精神科・心療内科でED診療に積極的なのは32%で、身体的重症患者に単独で入院対応可能は28%で、他診療科の併診あれば77%であった。
ED患者の社会的支援のニーズを明確にするため、ED 85人、統合失調症(SC)25人、うつ病20人の3群で本人、家族、主治医へ調査し社会機能と家族の介護負担度を比較した。ED患者の社会機能は、特に対人関係がSCより低く介護負担も他の2疾患と同等であった。
小児科医のED医療体制・連携の調査について調査した。ANの診療経験は病院勤務医の93%、診療所医の33%、回避・制限性食物摂取症はそれぞれ36%と14%であった。診療所医は成長曲線の利用、鑑別診断の知識が不十分であった。
産婦人科1348施設を対象に診療実態を調査し437施設(32%)から回答を得た。過去5年間に回答者の6割がAN、2割がBNの診療を経験していた。半数がEDの診療に消極的であった。
EDの適正な診療報酬を明確にするため、大学病院心療内科3施設、精神科3施設で患者背景、社会関係資本、診療点数、診察時間、入院在院日数、発症/維持要因、通院時間、コスト、受領行動、他の医療機関でのサービスの利用状況等を調査し、197名のデータベースを構築した。
治療プログラムの検討:
AN身体治療プログラムを静岡県内の単科精神科病院3施設で研修会を行って導入し、研修前に比べ入院患者数が増加し、治療実績のなかった単科病院でも入院をもてるようになった。
早期発見・介入のための指針:
養護教員を対象にしてエキスパート・コンセンサスにより「学校と医療機関とのより良い連携のための対応指針」を作成した。EDを専門としない医師を対象にED患者への初期対応の指針を、デルファイ法を用いて作成した。
専門施設リスト:
EDの治療・相談や入院が可能な専門施設のリストを整備した。全国で372施設がリストアップされた。救命救急科と総合診療科、精神保健福祉センターに提供される。
結論
全国の病院のED受診患者数は1998年に比べ著明な増加はなかったが、一部の診療施設に多数の患者が集中しており、より多くの施設がED診療に参加する必要がある。保健所・保健センターの調査から未受診例、治療中断例が多いことが示された。受診を促し、ドロップアウトを防ぐ必要がある。早期発見・介入の窓口となる学校や保健所、プライマリーの精神科、身体科ではEDの知識や、初期対応の方法、診療する医療機関の情報が必要とされていた。有床精神科・心療内科をもつ総合病院は地域のED治療の中核として期待されるが、ED診療に消極的な場合が多く、院内の連携など課題の解決が必要である。ED患者の社会的機能の低下や介護負担は大きく社会的支援を要する。AN身体治療プログラムの導入により単科精神病院で入院治療が可能になることが示唆された。養護教諭と非専門医の対応指針が作成され、今後、効果の検証が必要である。

研究報告書(PDF)

分担研究報告書
分担研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
-
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201616020C

収支報告書

文献番号
201616020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 5,356,841円
人件費・謝金 3,153,118円
旅費 2,915,542円
その他 3,959,499円
間接経費 4,615,000円
合計 20,000,000円

備考

備考
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