身体障害者の認定基準の今後のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201616017A
報告書区分
総括
研究課題名
身体障害者の認定基準の今後のあり方に関する研究
課題番号
H26-身体・知的-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
江藤 文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩谷 力(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 伊藤 利之(横浜市立リハビリテーションセンター)
  • 寺島 彰(浦和大学)
  • 和泉 徹(新潟南病院)
  • 奥村 謙(済生会熊本病院)
  • 飛松好子(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 北村弥生(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 石川浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 岡田弘(獨協医科大学越谷病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,700,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体障害者認定制度における認定基準のあり方について、医学的知見を踏まえ考察を行い、認定基準の見直しの具体的な案を提言する。平成28年度においては、心臓機能障害、ぼうこう・直腸機能障害、聴覚障害を取り上げた。また、海外の動向を調査した。
研究方法
(1)心臓機能障害では、新規ペースメーカ植込み者の身体活動度及び日常生活動作を明らかにするために、植込み治療を受けた623名に対して前向き調査を実施した。
(2)ぼうこう・直腸機能障害では、現在の公費補助の対象となっていない子宮悪性腫瘍に対する手術や放射線治療の結果生じた排尿障害(神経因性ぼうこう)や尿瘻(ぼうこう膣瘻・尿管膣瘻)等の患者の実態調査を埼玉県の52医療機関に対して実施した。
(3)平成26年度1月に通知された聴覚障害の認定基準の改正後の状況については、平成27年度に実施した112認定機関(自治体)を対象とした調査で(平成27年11月実施)、他覚的聴力検査が必要となった2級申請数の有意な減少と2級認定率の有意な低下が認められた。そこで、2級申請がなかった24自治体に対する補足調査を行った。
(4)聴覚障害については、指定医中の専門医への居住者からのアクセス距離をGISを用いて計算した。
(5)海外動向の調査として、第16回国連国際障害統計のワシントングループ会議に参加し、情報収集した。
結果と考察
(1)心臓機能障害に関する調査では、植込み3か月以降に9割の身体活動度及び日常生活動作が改善されることを示した。
(2)ぼうこう・直腸機能障害では、登録された53名のうち認定基準に34名が相当したことを示した。
(3)聴覚障害では、16自治体から回答を得て、平成27年度末においては2級申請数と認定率が回復に向かったことを確認した。
(4)指定医が専門医に限定されても、指定医数の減少ほどには指定医が所属する医療機関までのアクセス距離は増加しないことを明らかにした。
(5)これまでの国際障害統計ワシントングループ会議の活動を整理し、報告書を執筆した。


結論
1)心臓機能障害
徐脈性不整脈でペースメーカ植込みの適応となる患者では、治療(植込み)後、身体活動度、日常生活動作は3ヶ月以降改善した。障害等級再認定の評価時期に関しては、ペースメーカ依存度が高い患者がほとんどを占めることを考慮しても、早期の再認定は可能と考えられた。

2)ぼうこう・直腸障害
身体障害の認定対象となっていないが、認定基準に相当する「子宮悪性腫瘍に対する手術や放射線治療の結果生じた排尿障害(神経因性ぼうこう)や尿瘻(ぼうこう膣瘻・尿管膣瘻)等」の患者数は人口715万人の埼玉県で34名であり、単純に人口比をとると全国で600名程度がいると推測された。泌尿器科に通院していない者がいる一方で、子宮頸がんの術式の改善により深刻な排尿障害が今後増加することはないと考えられる。

3)聴覚障害
・平成26年の通知に対して聴覚障害2級申請者の抑制が一時的に起こったが、平成27年度末には回復に向かった。
・同通知により、原則として、新規の聴覚障害指定医は耳鼻咽喉科学会専門医に限定されたが、該当する医師数の減少よりも該当する医療機関への平均及び最大アクセス距離の増加は少ないことが示された。
・専門医である指定医までの平均アクセス距離は、公立中学・公立高校までの平均アクセス距離よりも小さく、通院負担感は日常生活での移動負担感よりも大きくはないと推測された。

4)海外の動向
持続可能な開発計画(国連)における障害統計など国連障害統計ワシントングループ会議等の動向を引き続き留意することは有用であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201616017B
報告書区分
総合
研究課題名
身体障害者の認定基準の今後のあり方に関する研究
課題番号
H26-身体・知的-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
江藤 文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩谷 力(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 伊藤 利之(横浜市立リハビリテーションセンター)
  • 寺島 彰(浦和大学)
  • 和泉 徹(新潟南病院)
  • 奥村 謙(済生会熊本病院)
  • 飛松好子(国立障害者リハビリテーションセンター )
  • 北村弥生(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 稼農 和久(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 石川浩太郎(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 岡田 弘(獨協医科大学越谷病院)
  • 八橋 弘(長崎医療センター)
  • 田口智章(九州大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体障害者認定制度における認定基準のあり方について、医学的知見を踏まえ考察を行い、認定基準の見直しの具体的な案を提言する。平成26年度から平成28年度においては、肝臓機能障害、心臓機能障害、聴覚障害、ぼうこう・直腸機能障害、小腸機能障害を取り上げた。
研究方法
(1)肝臓機能障害については、国立病院機構長崎医療センターに通院した肝硬変患者267例に対して平均3.5年の観察を行った。
(2)心臓機能障害では、植込治療を受けた障害認定者623名に対して前向き調査を実施した。
(3)聴覚障害の認定の疑義に関しては、「聴覚障害の認定に関する検討会」の結論を導出する議論に協力した。
(4)聴覚障害に関する認定基準の改正後の状況について、112認定機関(地方公共団体)を対象とした調査を実施した。
(5)聴覚障害に関する指定医中の専門医までのアクセス距離をGISにより計算した。
(6)ぼうこう・直腸機能障害では、子宮悪性腫瘍に対する手術や放射線治療の結果生じた排尿障害(神経因性ぼうこう)や尿瘻(ぼうこう膣瘻・尿管膣瘻)等の患者の実態調査を実施した。
(7)小腸機能障害については、小腸移植の適用がある重症腸管不全99例において、身体障害者手帳の所持状況などの調査を行うとともに認定基準の改定の基礎データを検討した。
(8)障害の定義の国際動向を知るために、第14~16回国連国際障害統計のワシントングループ会議に参加し、情報収集した。
結果と考察
(1)調査の結果、死亡確認例では死亡までの中央値はC-P分類Cでは2.2か月であり、障害認定を受けて福祉サービスを受給できる期間は限定的であることが示された。この結果は、「肝臓機能障害の認定基準のあり方に関する検討会」に提出され、認定基準の改正に貢献した。
(2)植込み3か月以降に9割の身体活動度及び日常生活動作が改善されることを示した。
(3)指定医を原則として日本耳鼻咽喉科学会専門医とすること」「地域の実情等により専門医ではない耳鼻咽喉科の医師又は耳鼻咽喉科以外の医師を指定する場合は、聴力測定技術等に関する講習会の受講を推奨するなど専門性の向上に努めること。」が厚生労働省による通知として地方公共団体に周知された。
(4)他覚的聴力検査が必要となった2級申請数は一時的に減少したが、年度末にはおおむね回復したことを確認した。
(5)聴覚障害の指定医中の専門医に限定しても、数の減少ほどには所属する医療機関までのアクセス距離には差がないこと、指定医までのアクセス距離は公立中学校までのアクセス距離よりも短いことを地理情報システムを用いて示した。
(6)埼玉県泌尿器医会の協力を得て74医療機関から53事例の登録を得て、排尿状況・医師の所見を調査した結果、身体障害認定に相当する者が34名いることを明らかにし、単純人口比では国内に600名程度いることを示唆した。
(7)14%は身体障害者手帳を所持していないことを明らかにした。適正な障害認定の方法として、(1) 認定基準に明記されている年齢別エネルギー表に代わり、個々の症例における摂取総エネルギー量に対する中心静脈栄養の割合で判断するように変更すること。もしくは、患児の実年齢ではなく体重相当の年齢におけるエネルギー量をその症例の基準値として判定するよう付記すること。(2) 小腸疾患の病名に「腸管神経節細胞僅少症」、「巨大膀胱短小結腸腸管蠕動不全症」、「その他の腸管運動機能障害を有する疾患群」を付記することを提言した。
(8)国連国際障害統計のワシントングループ会議の活動について報告書にまとめた。

結論
1)肝機能障害の1級の基準はChild-Pugh分類C10点以上であったが、肝硬変患者の実態調査の結果から基準を再検討すべきであることが示唆された。

2)徐脈性不整脈でペースメーカ植込みの患者において、障害等級再認定の評価時期に関しては、ペースメーカ依存度が高い患者がほとんどを占めることを考慮しても、早期の再認定は可能と考えられた。

3)聴覚障害の障害認定に関する平成26年の通知による影響は大きくないと推測された。

4)身体障害の認定対象となっていないが、認定基準に相当する「子宮悪性腫瘍に対する手術や放射線治療の結果生じた排尿障害(神経因性ぼうこう)や尿瘻(ぼうこう膣瘻・尿管膣瘻)等」の患者数は全国で600名程度がいると推測された。

5) 重症の腸管不全でありながら身体障害者手帳の適用にならない患者に対して適正な認定基準を検討した結果、「年齢別エネルギー表」と認定基準の例示疾患の検討が妥当であることを示した。


公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201616017C

収支報告書

文献番号
201616017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,700,000円
(2)補助金確定額
2,700,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 341,261円
人件費・謝金 159,080円
旅費 240,483円
その他 1,959,176円
間接経費 0円
合計 2,700,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-22
更新日
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