文献情報
文献番号
201616012A
報告書区分
総括
研究課題名
医療的ケア児に関する実態調査と医療・福祉・保健・教育等の連携促進に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-006
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
田村 正徳(埼玉医科大学 総合医療センター総合周産期母子医療センター)
研究分担者(所属機関)
- 大塚 晃(上智大学総合人間科学部社会福祉学科)
- 前田浩利(医療法人財団はるたか会)
- 岩崎裕治(東京都立東部療育センター小児科)
- 大田えりか(伊東 えりか)(聖路加国際大学大学院看護研究科国際看護学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
5,532,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
①各都道府県で地域における医療的ケア児数と地域の社会資源を把握し、②都道府県における医療・福祉・保健・教育等の連携を進めるための手引書を作成し、③医療的ケア児を支援する関係機関の連携を推進するスーパーバイザーを育成するための研修を確立し、④重症児施設における医療的ケア児数を把握するとともに地域で生活する医療的ケア児に対する短期入所の新しい取り組みを提案することを目指す。
研究方法
①医療的ケア児を行政的に定義する方法を6種類提案し、それぞれについての全国の医療的ケア児数を算出した。算出には平成27年度社会医療診療行為別調査のデータを用い、対象年齢を0~19歳で区分した。②医療・福祉・保健・教育などの連携体制の現状について、法制度的観点と実際の地域現場における実情から調査し、その問題点を抽出し、問題点を解決するための方法論を検討し、実際の解決のためにモデル構築を千葉県松戸市と東京都世田谷区で開始した。また、全国の在宅療養支援診療所対象に小児在宅医療の実践と課題に関するアンケート調査を行った。③スーパーバイザーへの支援体制の要素及び、スーパーバイザーの機能の抽出を目的に、5県に対し、アンケート、インタビューを実施し、専門者会議で議論した。④全国の日本小児科学会研修指定施設525箇所と重症心身障害施設(公法人立125施設、国立病院機構74施設)、肢体不自由児施設37施設を対象に、2回にわたって短期入院・入所の実態調査用の調査票を送付回収し、集計・分析を実施した。統計処理には大田班に分析を依頼した。
結果と考察
①全国の医療的ケア児は約4.3万人~8千人と幅広い数値が得られた。文部科学省が実施している特別支援学校等の医療的ケアに関する調査の数値と最も整合性が取れる医療的ケア児数の算出方法を解析したところ、6案のうち第1定義の「在宅自己注射指導管理料を除く全ての在宅療養指導管理料の算定件数を合計する方法」が整合性が高く、約1.7万人と算出された。
②世田谷では、世田谷区役所での担当者会議を開催し医療連携推進協議会を医療、福祉、教育の連携のための会議として進める方向で合意し、医療連携推進協議会を2回開催した。松戸市では松戸市長と医師会の定期懇談会で小児在宅医療推進の必要性を提示して、医療的ケア児の連携会議を「松戸市医療的ケア児の支援のための連携推進会議」という名称で発足し、各団体、機関の医療的ケア児の支援に関する取り組みの共有、医療的ケア児の支援に関する地域の課題について話し合い、医療的ケア児の実態調査を実施することが合意された。全国の在宅療養支援診療所アンケート調査からは小児在宅医療を実施している在宅療養支援診療所が約3倍に増加していた。その一方で関心を持っているが実践出来ないという在宅療養支援診療所も数多くみられたので実践するために必要な条件を分析した。その結果、医療的ケア児を支える連携体制の構築のためには、行政も縦割りを超えると同時に、県市区町村まで含めた連携を行う必要があり、担当者の意識改革がと同時に医師と行政の連携、協働も必須となることが分った。③スーパーバイザーは、アドバイス、コンサルテーションの2つの機能を有する必要があること、両者では望ましい配置場所が異なることがわかった。また、機能するために必要な環境の要素は、行政の後方支援、立場の保障や活動費の保障であった。スーパーバイザーとして必要な能力は、行政と連携する力・地域診断力・事業所を査定する力・チームを作り、議論を集約できる力・関わる人を元気づける力の6項目であった。これらの能力は、活動範囲は異なるがアドバイス機能を有するアドバイザー、コンサルテーション機能を有するコンサルタント双方の人材に必要な力であることが明らかとなった。
④短期入所・入院はほとんどの療育施設と約4割の小児科病院が実施していた。小児科病院では9割、療育施設でも3割程度が準・超重症児(者)であった。療育施設では看護体制が手厚いなど、医療体制が堅固なほど利用児(者)の受け入れが多く、地域での調整会議・財政援助等も受け入れ増加につながった。重症心身障害以外の高度医療的ケア児の受け入れには、動くことでのリスクや、他児への影響などが心配され、人の配置など新たな施策が望まれた。
②世田谷では、世田谷区役所での担当者会議を開催し医療連携推進協議会を医療、福祉、教育の連携のための会議として進める方向で合意し、医療連携推進協議会を2回開催した。松戸市では松戸市長と医師会の定期懇談会で小児在宅医療推進の必要性を提示して、医療的ケア児の連携会議を「松戸市医療的ケア児の支援のための連携推進会議」という名称で発足し、各団体、機関の医療的ケア児の支援に関する取り組みの共有、医療的ケア児の支援に関する地域の課題について話し合い、医療的ケア児の実態調査を実施することが合意された。全国の在宅療養支援診療所アンケート調査からは小児在宅医療を実施している在宅療養支援診療所が約3倍に増加していた。その一方で関心を持っているが実践出来ないという在宅療養支援診療所も数多くみられたので実践するために必要な条件を分析した。その結果、医療的ケア児を支える連携体制の構築のためには、行政も縦割りを超えると同時に、県市区町村まで含めた連携を行う必要があり、担当者の意識改革がと同時に医師と行政の連携、協働も必須となることが分った。③スーパーバイザーは、アドバイス、コンサルテーションの2つの機能を有する必要があること、両者では望ましい配置場所が異なることがわかった。また、機能するために必要な環境の要素は、行政の後方支援、立場の保障や活動費の保障であった。スーパーバイザーとして必要な能力は、行政と連携する力・地域診断力・事業所を査定する力・チームを作り、議論を集約できる力・関わる人を元気づける力の6項目であった。これらの能力は、活動範囲は異なるがアドバイス機能を有するアドバイザー、コンサルテーション機能を有するコンサルタント双方の人材に必要な力であることが明らかとなった。
④短期入所・入院はほとんどの療育施設と約4割の小児科病院が実施していた。小児科病院では9割、療育施設でも3割程度が準・超重症児(者)であった。療育施設では看護体制が手厚いなど、医療体制が堅固なほど利用児(者)の受け入れが多く、地域での調整会議・財政援助等も受け入れ増加につながった。重症心身障害以外の高度医療的ケア児の受け入れには、動くことでのリスクや、他児への影響などが心配され、人の配置など新たな施策が望まれた。
結論
医療的ケア児数は人口1万人あたり1.35が目安となる。スーパーバイザーを育成してアドバイザーを地域に多く配置し、市区町村レベルで関係者の会議体を作ることにより、医療的ケア児の支援は促進される。都道府県は、医療的ケア児と地域資源の実数を把握しその情報を提供することで、市区町村の取り組みを支援できる。また、小児科のある病院や重症心身障害児者施設は、医療的ケア児のレスパイト機能を担うことが期待される。
公開日・更新日
公開日
2017-05-30
更新日
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