文献情報
文献番号
201616009A
報告書区分
総括
研究課題名
障害児入所支援の質の向上を検証するための研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
北住 映二(心身障害児総合医療療育センター 小児科)
研究分担者(所属機関)
- 米山 明(心身障害児総合医療療育センター 小児科)
- 小崎 慶介(心身障害児総合医療療育センター 整形外科)
- 下山田 洋三(愛徳医療福祉センター 小児科)
- 小山 友里江(慶応義塾大学 看護医療学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,428,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
「<目的>障害児入所施設には、専門的ケアを必要とする被虐待児等の入所も多く、支援内容の充実が求められている。このため、今後の障害児入所支援の質の向上についての検討に向け、事業所等調査やタイムスタディ等の調査手法を用いて、福祉型障害児入所施設及び医療型障害児入所施設の業務実態の基礎データ等の収集及び分析を行う、<求められる成果>「医療型および福祉型の障害児入所施設のそれぞれの主な障害種別ごとに、入所児童の状況、支援体制、支援内容に関するデータ、職種ごとの勤務実態に関するデータ、被虐待児等への、支援、自立支援、家庭支援、地域支援などの支援体制や支援内容等に関するデータ、関係機関との連携状況に関するデータ」と設定された2年の公募課題の初年度研究を行った。
研究方法
福祉型と医療型の全種別の障害児入所施設に対し調査票記入方式での調査を行った。調査票を送付した施設数は492施設である。
結果と考察
<入所児童の状況と施設支援の状況の調査>282施設(57%)から回答あり入所児童総数は5759名であった。知的障害児施設においても自閉症を主とする「発達障害」児か「発達障害」を伴う児が多い傾向があった。行動上の困難さのある入所児童が多数であった。肢体不自由児施設では知的障害を伴う児童が多数であり、重症心身障害児が福祉型施設で14.5%医療型肢体不自由児施設で40%だった。福祉型施設では、乳児院、児童養護施設、児童自立支援施設、児童相談所一時保護所からの入所が27~32%で、医療型施設においても乳児院、児童養護施設からの入所が約11%であった。措置による入所が半数を越えていた。外泊、帰省が年1~2回程度か無しの児童が全入所児童の66%に上っていた。児童数と児童支援に直接かかわる職員数(実数換算)の比率では、ほとんどの種別の施設において配置基準以上の職員配置がなされていた。多くの施設が、保護者、家族への支援を関係機関とも連携しながら行っているが、自由記載で多くの問題が指摘されている。職員確保の困難性についての指摘が多数あった。<被虐待児調査>児童相談所が認定している「被虐待児童」と、児童相談所が認定していないが施設判断として虐待があるか強く疑われる「被虐待疑い児童」につき調査した。施設票調査は対象492施設中383施設(78%)から回答があった。回答施設の全入所児童数は8126名であり、うち「被虐待児童」は2022名「被虐待疑い児童」は547名で、合計の全被虐待児童は2569名で入所児童の32%であった。福祉型肢体不自由児施設で50%、医療型自閉症児施設で43%、知的障害児施設で42%であった。過去の調査と比較し被虐待児の比率が増加していると考えられた。児童個人票による調査では206施設から1772名の児童個人票が返送された。1461名(82%)は虐待を受ける前に基礎疾患、障害があり、その内容は知的障害78%、脳性麻痺8%であった。397名(22%)は虐待の結果、基礎疾患や障害が生じたりその程度が悪化していた。虐待の内容は、ネグレクトが1164名(66%)と最も多く身体的虐待が776名(44%)であった。主たる虐待者と従たる虐待者についての合計では実母が1354名(76%)で最も多くみられた。養育者の問題では、知能の問題が488名(32%)にみられた。児の問題では疾病・障害が945名(62%)と全ての要因背景の中で最多で、疾病や障害が障害児虐待のハイリスクになっていることが示された。家庭の問題では、経済的不安定が699名(46%)、育児負担過大が493名(32%)で、障害児虐待発生の予防として養育者へ経済的および養育の支援が重要であることが示された。<心理担当職員、ソーシャルワーク担当職員についての調査>それぞれにつき施設調査票と担当職員個人記入の個人票を全施設に送付した。心理職員については、施設票は125施設から個人票は209名から、ソーシャルワーク担当職員は、施設票は142施設から、個人票は275名から回答があった。心理担当職員の常勤のうち半数が入所児童への心理業務以外の児童の直接支援業務等との兼務だった。ソーシャルワーク担当職員として専門職が配置されているのは37施設のみであった。自由記載意見では多くの課題と問題点が指摘されていた。
結論
全ての種別の障害児入所施設についての調査が行われたのは今回が初めてである。福祉型および医療型の障害児入所施設における、最近の児童の状況や支援体制、被虐待児童の状況などについて、重要なデータが把握された。
公開日・更新日
公開日
2017-06-19
更新日
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