発達障害児者等の地域特性に応じた支援ニーズとサービス利用の実態の把握と支援内容に関する研究

文献情報

文献番号
201616007A
報告書区分
総括
研究課題名
発達障害児者等の地域特性に応じた支援ニーズとサービス利用の実態の把握と支援内容に関する研究
課題番号
H28-身体・知的-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 医学部附属病院子どものこころ診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 康夫(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 高橋 脩(豊田市福祉事業団)
  • 篠山 大明(信州大学 医学部)
  • 内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部)
  • 神尾 陽子(国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
6,593,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 発達障害児者への支援サービスは制度上保証されているが,ニーズの実態把握は不十分である。また,人口規模,地理的条件,財政などの地域特性によって,サービスの量・質ともに異なる可能性がある。さらに,未診断でも発達障害の特性や軽度の遅れがあり支援を要するケースが,潜在的にかなり存在すると考えられる。本研究は,発達障害の支援ニーズおよびわが国の各地で実施されているサービスの実態の全国調査によって把握することを目的とする。
研究方法
1.地域特性に応じた支援ニーズとサービスの実態に関する研究
(1)自治体を対象としたサービスの実態に関するアンケート調査
 児童期と青年・成人期に分けて調査を実施した。児童期では,自治体を政令指定都市,中核市,小規模市,小規模町村の4群に分け,それぞれに研究協力を得ることのできた自治体の障害福祉担当部署へのアンケート調査を行った。青年・成人期では,知的に正常で20歳以降に初めて診断がついた人のニーズや診断が遅れた理由などを個別の面談により調査した。

(2)発達障害の子どもにおける支援ニーズの調査
 平成25年度~27年度の障害者対策総合研究事業「発達障害児とその家族に対する地域特性に応じた継続的な支援の実施と評価」では,障害者発達障害の早期支援を先進的・意欲的に行っている自治体(横浜市,広島市,福岡市,豊田市,宮崎市,函館市,松本市,東京都板橋区,糸島市,多治見市,瑞浪市,山梨市,南相馬市)を対象として,平成25年度に小学1年生および6年生であった子どもたちにおける発達障害の頻度調査のデータを毎年追跡調査したデータが得られている。本研究では,このコホートの追跡調査を行い,幼児期から学童期にかけての発達障害の支援ニーズを継時的に求めた。

2.サービス内容の評価に関する研究
 全国の発達障害児者への支援サービスを提供している事業所(近年増加している民間のサービス事業所等も含む)においてサービス内容の調査を行うための指標について検討した。
 先行研究(神尾ら,2016)で作成した調査票が発達支援現場の実態に即したものかどうか,実施可能性を探索することを目的として,児童発達支援センター,児童発達支援事業所,放課後等デイサービス事業所,計3施設の責任者および職員のヒアリングを実施した。
結果と考察
結果
1.地域特性に応じた支援ニーズとサービスの実態に関する研究
(1)自治体を対象としたサービスの実態に関するアンケート調査
 児童期の調査では,発達障害の支援ニーズの爆発的な増加に伴い,多くの自治体で発達障害児の支援体制整備が急がれていることが示された。多領域の連携推進を行う公的部署または連携会議の設置やつなぎ支援については,自治体によってやり方に大きな違いがみられた。
 青年・成人期の調査では,よこはま発達クリニックで診療継続中の患者から知的に正常で20歳以降に初めて診断がついた人のニーズや診断が遅れた理由などを個別の面談により調査した。共通した訴えは,日常生活に置ける困難,経済的不安であった。診断については,発達期に専門家に相談したにも関わらず発達障害の存在が否定される事例が多かった。50歳以上の人では家族がなく老後の不安を訴える人が多かった。

(2)発達障害の子どもにおける支援ニーズの調査
 この調査は2年間かけて行う予定であるため,1年目は中間段階の集計を行った。

2.サービス内容の評価に関する研究
 調査票をもとに,現場の視点から意見や希望などを聴取し,改訂すべきポイントが明らかになった。

考察
 各自治体における発達障害の支援体制を把握し,とくに領域間の連携の実態と具体的なサービス事業所の整備の実態が明らかとなった。
 青年期・成人期の支援ニーズについては,予備的検討として個別の事例に対するインタビューを行った。ここから抽出された課題について,2年目はアンケートを用いた全国調査を行う予定である。
 発達障害の子どもにおける支援ニーズの調査は,平成25年度~27年度の調査対象コホートを引き継いでおり,最終的に5年間の継時的変化をみる予定である。
 サービス内容の評価については,今年度の調査結果をもとに,現場の実態やニーズに即した調査票の改訂を行い,2年目は全国調査を行う予定である。
結論
 従来の障害福祉行政では,医療による診断を前提とした障害種別や支援サービスの提供が行われてきたが,発達障害に対しては必ずしも診断がなくても支援ニーズのある人たちの潜在的ニーズを念頭に置いた施策が求められる。本研究で,発達障害の支援に関する幅広いニーズを十分に把握できる。また,かつての想定より支援ニーズが高いことが近年指摘されている発達障害のある女性について,その特有の行政的課題についてはじめて資料が得られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201616007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,570,000円
(2)補助金確定額
7,887,000円
差引額 [(1)-(2)]
683,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 594,913円
人件費・謝金 0円
旅費 2,067,680円
その他 3,247,694円
間接経費 1,977,000円
合計 7,887,287円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-06-09
更新日
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