認知症発生リスクの減少および介護者等の負担軽減を目指したAge-Friendly Citiesの創生に関する研究

文献情報

文献番号
201615004A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症発生リスクの減少および介護者等の負担軽減を目指したAge-Friendly Citiesの創生に関する研究
課題番号
H28-認知症-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
尾島 俊之(浜松医科大学 医学部健康社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 相田 潤(東北大学大学院 歯学研究科)
  • 堀井 聡子(国立保健医療科学院 生涯健康研究部・国際協力研究部)
  • 横山 由香里(日本福祉大学 社会福祉学部)
  • 近藤 克則(千葉大学予防医学センター・国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
4,308,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
世界保健機関(WHO)は、世界の高齢化の進展に伴い、高齢者に優しい都市(Age-friendly Cities, AFC)づくりを推進している。認知症高齢者の数は増加の一途をたどると推計されることから、前述のAFCに加えて、認知症高齢者等に優しいまち(Age and Dementia Friendly Community)を目指していく必要がある。そこで、認知症高齢者等に優しい地域を評価するための評価指標を開発し、その評価指標等の信頼性・妥当性を検証し、認知症高齢者等に優しい地域を作るための手引きを作成すること、そして社会創生に向けて協力市町村で試用と評価を行い、認知症高齢者等に優しいまちづくりに貢献することがこの研究の目的である。
研究方法
(1) 概念整理(WHOによるAFCに関する報告書及び認知症に関する先行研究を参考にして研究班内で検討。WHOのAFCに関する設問の日本語版を作成。認知症に関する追加設問を開発。)、(2) 多地域大規模疫学調査による指標作成のためのデータ収集(全国に呼びかけ調査を共同実施する市町村(介護保険者)を募集。対象者は、要介護認定を受けていない65歳以上の高齢者を基本とし、一部では要介護者を含めた。)、(3) 認知症当事者におけるDementia-friendly cityの検討(認知症のある人3名と介護家族4名に、半構造化面接を実施。対象は、社会福祉協議会及び患者家族会の協力を得て依頼。)、(4) 手引き作成と教育研修に関する研究(認知症施策に関与する専門家等の紹介や、文献・Webレビューにより、認知症に優しいまちの好事例を抽出。札幌市「認知症カフェ認証事業等」と東近江圏域「三方よし研究会」の関係者ヒアリング等を実施。)、(5) 認知症のない生存時間の地域差と関連要因の研究(日本老年学的評価研究(JAGES) 2010年調査に参加した24市町村(地域)の高齢者を追跡したコホート研究を実施。10パーセントの人が認知症を伴う要介護認定が発生または死亡するまでの健康な生存時間をラプラス回帰で分析)、(6) 行政データ等の分析(人口動態統計による都道府県別高齢者の交通事故死亡数について、標準化死亡比(SMR)及びポアソン分布を仮定した95%信頼区間等を算定)をそれぞれ行った。
結果と考察
概念整理の検討により、理解、共生、受援力の3つが抽出された。具体的な指標を検討する上で、高齢者に優しい(認知症予防を含む)、認知症の人に優しい、介護者に優しいという3つの視点と、またWHOのAFCの枠組みに準拠して、指標の情報源として、行政データとアンケート調査、また指標の内容として物理的環境と包摂的な環境というマトリックスを作成することができた。WHOのAFC指標の日本語版と、認知症に関しての追加設問・指標を作成した。大規模疫学調査については、市町村との調整の結果、2016~17年度に全国40市町村から協力を得られることになった。2016年度内に38市町村の調査が終了し、回収率約70%、約20万票の回収が得られた。認知症当事者及び介護者へのインタビューから、公共スペースの福祉化が進んでいる地域、サポート資源が充実している地域、介護しながらでも生活しやすい地域を「住みやすいと感じる地域環境」と考えていた。また、症状の多様性への理解、認知症だと気軽に言える社会づくり、地域の一員としての関わりの継続、社会参加の後押しを期待していた。地域での好事例から、行政による対話の場の設定とファシリテーションの重要性などが抽出された。また、これらの役割が発揮されることで、地域住民の望む姿(ビジョン)や課題認識に関する関係者の相互理解の促進、課題解決のための知識協創と革新的なアイディアの創出などにつながると考えられた。認知症のない生存期間は、地域により最大男性で430日、女性で514日の差が存在した。その延伸のためには、やせでないことや、歩行時間が長いことが寄与していることなどが明らかとなった。行政データの分析では、高齢者の交通事故の標準化死亡比は、0.40~1.89と大きな都道府県差が見られた。
結論
認知症高齢者等に優しい地域に関する概念整理を行い、理解、共生、受援力の3つが抽出された。それに基づき、具体的な設問を開発し、多地域大規模疫学調査を実施した。また、認知症当事者及び介護者へのインタビュー、地域での取り組みの好事例の収集とヒアリング、現時点での利用可能なデータの分析等を行った。今後は、多地域大規模疫学調査データの整理及び分析を進めると共に、事例調査を進め、手引き作成と教育研修を進めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2017-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2018-02-21
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201615004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,600,000円
(2)補助金確定額
5,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 764,322円
人件費・謝金 0円
旅費 1,219,990円
その他 2,324,927円
間接経費 1,292,000円
合計 5,601,239円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2017-12-20
更新日
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