文献情報
文献番号
201615001A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症の介護・医療地域体制の実態・課題の可視化と系統的把握方法の研究開発
課題番号
H26-認知症-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
今中 雄一(京都大学 医学研究科)
研究分担者(所属機関)
- 武地 一(藤田保健衛生大学 医学部)
- 林田 賢史(産業医科大学病院)
- 大坪 徹也(京都大学 医学研究科)
- 廣瀬 昌博(島根大学 医学部)
- 徳永 淳也(九州看護福祉大学 看護福祉学部)
- 本橋 隆子(聖マリアンナ医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
8,068,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
超高齢・少子社会が著しく進展する中、認知症ケアに関する議論はまだ緒についたばかりであり、その実態は十分には明らかではない。本研究は、認知症に注目して介護保険・医療保険利用高齢者において、要介護度や介護サービス利用に認知症が及ぼす影響を明らかにするとともに、介護・医療地域体制の実態・課題の可視化と系統的把握方法の研究開発することを目的とする。
研究方法
医療保険レセプトデータおよびレセプトを含む介護保険データベースを用いて解析を行った。また、認知症介護におけるインフォーマルケアと介護負担を明らかにするため、インターネット調査を実施した。
結果と考察
(1)介護保険利用者の認知症有無と介護サービス利用と介護費の関連に関する研究:
介護サービス利用に影響を及ぼす、認知症をはじめとする因子の同定と解析を行った。年齢、性別、要介護度および認知症の有無は、各種類介護サービス利用傾向と介護費用の有意な要因であることを示した。
(2)介護福祉用具利用に関する検討:
認知症に関して、福祉用具サービス利用状況に関する記述統計を行った。認知症介護福祉用具利用者について、福祉用具サービス提供する政策を検討する際に、有用な資料となることが示された。
(3)認知症と居住状態に注目した介護ニーズ増加の予測因子に関する検討:
認知症の状態と居住状況を考慮した介護ニーズ増加に関連する因子を探索した。独居は介護ニーズ増大のハイリスク因子ではなかったことが明らかになったが、認知症高齢者が独居になると、逆に介護ニーズ増大のハイリスク因子であることが分かった。介護ニーズの増加を検討する際には、ハイリスク因子に着目する必要があると考えられた。
(4)高齢者の要介護度悪化に影響する因子に関する解析:
居住状況と各種疾患発症イベントの状態を考慮し、要介護度悪化に関連する因子を探索した。既存認知症関連サービス利用、肺炎入院病歴、脳血管疾患後遺症入院、肺炎外来、脳梗塞入院、非外傷性脳内出血外来、大腿骨骨折入院などが、要介護度悪化に関わるハイリスク因子であることが明らかになった。要介護度悪化の予防を検討する際、認知症、脳卒中や大腿骨骨折のハイリスク因子に注目する必要があると考えられた。
(5)介護認定同時に認知症同定されたリスクスコアの開発:
介護ニーズ調査の基本チェックリストと標準的な健診項目を用いて、新規要介護認定時の認知症発症リスクスコアを開発した。
(6)認知症の地域ケア体制におけるインフォーマルケアと介護負担:
認知症の人の介護にかかる費用および介護状況を明らかにするとともに、家族ケアと介護負担感との関連性を明らかにした。主観的な介護負担感および抑うつ症状と家族ケアとしての費用および睡眠時間に弱い関連を認めた。認知症介護における家族ケアの状況を主観的・客観的負担の両側面から把握し、今後の地域ケア体制構築に資する知見を得た。
(7)地域における認知症の介護・医療体制の系統的可視化方法の研究開発:
上記の成果を統合することを通じて、認知症の介護・医療の地域体制の実態・課題を、系統的把握するための可視化方法の研究開発を行った。人口指標などの特性を示しつつ、統合的なアウトカム指標であるリスク調整要介護度悪化率を主軸に、市民サポート力、介護サービス各機能、介護支援拠点機能、医療各機能などを指標化して、市町村ごとの実態とパフォーマンスを包括的に示すことにより、認知症ケアの地域特性が把握されアウトカムの関連要因が推察された。今後の発展余地を残すが、本成果は、地域ケアシステムの系統的包括的評価ツールとして期待できる。
介護サービス利用に影響を及ぼす、認知症をはじめとする因子の同定と解析を行った。年齢、性別、要介護度および認知症の有無は、各種類介護サービス利用傾向と介護費用の有意な要因であることを示した。
(2)介護福祉用具利用に関する検討:
認知症に関して、福祉用具サービス利用状況に関する記述統計を行った。認知症介護福祉用具利用者について、福祉用具サービス提供する政策を検討する際に、有用な資料となることが示された。
(3)認知症と居住状態に注目した介護ニーズ増加の予測因子に関する検討:
認知症の状態と居住状況を考慮した介護ニーズ増加に関連する因子を探索した。独居は介護ニーズ増大のハイリスク因子ではなかったことが明らかになったが、認知症高齢者が独居になると、逆に介護ニーズ増大のハイリスク因子であることが分かった。介護ニーズの増加を検討する際には、ハイリスク因子に着目する必要があると考えられた。
(4)高齢者の要介護度悪化に影響する因子に関する解析:
居住状況と各種疾患発症イベントの状態を考慮し、要介護度悪化に関連する因子を探索した。既存認知症関連サービス利用、肺炎入院病歴、脳血管疾患後遺症入院、肺炎外来、脳梗塞入院、非外傷性脳内出血外来、大腿骨骨折入院などが、要介護度悪化に関わるハイリスク因子であることが明らかになった。要介護度悪化の予防を検討する際、認知症、脳卒中や大腿骨骨折のハイリスク因子に注目する必要があると考えられた。
(5)介護認定同時に認知症同定されたリスクスコアの開発:
介護ニーズ調査の基本チェックリストと標準的な健診項目を用いて、新規要介護認定時の認知症発症リスクスコアを開発した。
(6)認知症の地域ケア体制におけるインフォーマルケアと介護負担:
認知症の人の介護にかかる費用および介護状況を明らかにするとともに、家族ケアと介護負担感との関連性を明らかにした。主観的な介護負担感および抑うつ症状と家族ケアとしての費用および睡眠時間に弱い関連を認めた。認知症介護における家族ケアの状況を主観的・客観的負担の両側面から把握し、今後の地域ケア体制構築に資する知見を得た。
(7)地域における認知症の介護・医療体制の系統的可視化方法の研究開発:
上記の成果を統合することを通じて、認知症の介護・医療の地域体制の実態・課題を、系統的把握するための可視化方法の研究開発を行った。人口指標などの特性を示しつつ、統合的なアウトカム指標であるリスク調整要介護度悪化率を主軸に、市民サポート力、介護サービス各機能、介護支援拠点機能、医療各機能などを指標化して、市町村ごとの実態とパフォーマンスを包括的に示すことにより、認知症ケアの地域特性が把握されアウトカムの関連要因が推察された。今後の発展余地を残すが、本成果は、地域ケアシステムの系統的包括的評価ツールとして期待できる。
結論
介護保険と医療保険の広域地域レセプトデータをも用いることで認知症ケアの地域別の実態を示すことができ、地域間差異を示すとともに、要介護度悪化と介護費用増加のリスク要因を定量的に明らかにし、認知症の罹患の有無が強く関連していることが示された。
また、認知症介護のケア・金銭的負担については、居住形態によって異なる実態を計測し、認知症患者因子のみならず介護者の因子により異なることを示唆した。
さらに、地域ケアシステムの包括的なパフォーマンスを示すリスク調整アウトカム指標の一つとして、リスク調整要介護度悪化率の計測法を開発した。
以上の研究成果を統合し、認知症の介護・医療に関する地域レベルのパフォーマンスを多軸的・包括的・系統的に指標化し把握するしくみを研究開発した。それにより、地域実態の把握とアウトカムの要因推察が、可能となった。
また、認知症介護のケア・金銭的負担については、居住形態によって異なる実態を計測し、認知症患者因子のみならず介護者の因子により異なることを示唆した。
さらに、地域ケアシステムの包括的なパフォーマンスを示すリスク調整アウトカム指標の一つとして、リスク調整要介護度悪化率の計測法を開発した。
以上の研究成果を統合し、認知症の介護・医療に関する地域レベルのパフォーマンスを多軸的・包括的・系統的に指標化し把握するしくみを研究開発した。それにより、地域実態の把握とアウトカムの要因推察が、可能となった。
公開日・更新日
公開日
2017-12-20
更新日
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