要介護高齢者の経口摂取支援のための歯科と栄養の連携を推進するための研究

文献情報

文献番号
201614008A
報告書区分
総括
研究課題名
要介護高齢者の経口摂取支援のための歯科と栄養の連携を推進するための研究
課題番号
H27-長寿-若手-003
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
枝広 あや子(地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 荒井秀典(国立研究開発法人国立長寿医療研究センター)
  • 田中弥生(駒沢女子大学人間健康学部健康栄養学科)
  • 安藤雄一(国立保健医療科学院, 生涯健康研究部)
  • 平野浩彦(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 渡邊 裕(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
  • 小原由紀(国立大学法人東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科口腔健康教育学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
2,400,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究1:経口摂取に関する問題のスクリーニング法とその基準を明らかにするための検討:食事の観察(ミールラウンド)や咀嚼能力等の口腔機能を含む摂食嚥下機能を踏まえた経口維持支援の内容については具体的な評価法は提示されていない.そこで今回我々は[分担研究1]として,認知症高齢者の摂食力評価表(以下SFD)を用いて,介護老人福祉施設利用者の自立摂食能力を調査し,終末期ケアのニーズを把握するツールとして有効性を検討した.
研究2:歯科と栄養の連携による経口摂取支援マニュアルを作成しその効果の検討:平成27年度本事業では,経口摂取支援マニュアルを作成した.今後,医療介護現場での既存の連携の質の向上や,連携の新規構築を目指すには,多職種間の連携における課題と解決の方向性や,課題習得目標等につなげる情報を得る必要がある.そこで今回我々は,多職種間の連携における課題習得目標に関する情報を得るために,介護保険施設の経口摂取支援に関わる専門職に対する経口摂取支援マニュアルを用いた研修会を開催し,教育効果についての検討[分担研究2],介護保険施設の経口摂取支援に関わる介護保険施設の多職種チームにおける先導者・指導者の影響についての検討[分担研究3],また要介護高齢者の経口摂取支援における多職種連携での課題や工夫の質的検討による抽出[分担研究4]を行うこととした.
研究方法
研究1:経口摂取に関する問題のスクリーニング法とその基準を明らかにするための検討:対象は介護老人福祉士施設の利用者308名(男性67名,女性241名:平均年齢84.1±8.5歳)で,対象者ごとに担当の看護師,介護士,管理栄養士が担当項目の評価を行い,30か月間継続的に調査を行った.
研究2:歯科と栄養の連携による経口摂取支援マニュアルを作成しその効果の検討:全国の介護老人保健施設において要介護高齢者に対する経口摂取支援に関わる専門職介入群100名,非介入群120名を対象に,経口摂取支援マニュアルを用いた研修会を開催し,教育効果について検討した[分担研究2].また全国の介護老人保健施設において要介護高齢者に対する経口摂取支援に関わる専門職を対象として,多職種チームにおける先導者(リーダー)・指導者(アドバイザー)の影響について検討を行った[分担研究3].さらに要介護高齢者の経口摂取支援方法に関する研修会(全国6地域)に参加した医療・介護の専門職231名を対象として,自由記載によるアンケートから要介護高齢者の経口摂取支援における多職種連携での課題や工夫を抽出するための質的検討を行った[分担研究4].
結果と考察
[分担研究1]有意にSFD25点以下で生存率低下があり,中等度摂食困難群では900日生存は摂食困難なし群の85%,重度摂食困難群に至っては47%であった.比例ハザードモデル解析の結果,年齢,誤嚥性肺炎,循環器疾患,MNA®-SF,SFDが有意に死亡退所発生に影響していた.
[分担研究2]介入効果は特に食事観察の要点や特別な支援の内容といった知識技能の点で効果があったが,その後に施設において対象者が各自行った,他の職員に対する伝達や実施により,理解度の継続,施設全体の行動変容のきっかけになる可能性が示唆された.
[分担研究3]食事・栄養に関する多職種会議の議論については,リーダー役の有無が議論においての活発な意見交換に影響し,また経口摂取に関する多職種連携の効力感に影響していた.リーダー役のキャリアについての自由記載では①病院NST,他施設等の勤務経験がある,②経験年数が長い,③研修参加するなど知識がある,といった要素に加え,④情報交換・相談・打合せが綿密であるという回答がみられた.
[分担研究4] 職種間の視点の食い違いや意見統一の困難さ,理解の差異といった人的な要因によるもの,時間の制約といった物理的な要因のほか,家族の価値観や意見といった要因も複雑に関わっていることが示唆された.
結論
[分担研究1]SFDはそれぞれの小項目が,摂食困難が生じている機能に対する支援ニーズを示しており,SFDの失点スコアを配慮して環境アセスメントおよび介入を実施するための有効なツールであった.
[分担研究2,3,4]以上により,要介護高齢者に対する経口摂取支援における多職種連携上の課題については,①研修効果の確認,②施設内での伝達と反復による知識維持,③多職種チーム内のリーダーとアドバイザー,調整役の重要性,④価値観の相違や,時間の制約といった物理的な障害の解消の必要性,⑤効率的な連携のための職種間の共通言語の必要性や配慮,⑥専門教育課程と実際の業務内容の差を埋める習熟機会の必要性が抽出された.これを基に今後は「多職種経口摂取支援チームマニュアル(平成28年度版)」をブラッシュアップし,研修要綱作成を行う.

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201614008Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,120,000円
(2)補助金確定額
3,120,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 322,265円
人件費・謝金 477,729円
旅費 500,336円
その他 1,099,670円
間接経費 720,000円
合計 3,120,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-06-05
更新日
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