文献情報
文献番号
201614005A
報告書区分
総括
研究課題名
住民主体の介護予防システム構築に関する研究
課題番号
H28-長寿-一般-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
荒井 秀典(国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
- 山田 実(筑波大学・リハビリテーション学科)
- 大倉 美佳(京都大学大学院人間健康科学系)
- 荻田 美穂子(京都光華女子大学健康科学部)
- 宮松 直美(滋賀医科大学臨床看護学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
6,154,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
住民主体の介護予防事業への参加要因の検証、住民主体の介護予防事業の効果検証、介護予防アルゴリズムの開発を目的とした。
研究方法
住民主体の介護予防事業への参加要因の検証については、2016年に、65歳以上の高齢者を対象に郵送悉皆調査を行った。自主グループの参加の有無、自主グループ参加に関わる各種内容、運動習慣、ウォーキング習慣、社会的ネットワーク、基本チェックリスト、基本的日常生活活動、手段的日常生活活動などを調べた。
住民主体の介護予防事業の効果検証では、2012年に実施した郵送悉皆調査をベースラインデータとし、その後に自主グループに参加した高齢者のフレイル改善効果および要介護認定抑制効果を検証した。また、自主グループに参加している高齢者で、1年間の教室前後で体力測定が可能であった対象者を対象に、握力、開眼片脚立位時間、timed up and go test、5回立ち座りテストの改善効果を検証した。
介護予防アルゴリズムの開発では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保健師、管理栄養士、健康運動指導士といった専門職によるノーミナルグループディスカッションとデルファイ法を用いた。
住民主体の介護予防事業の効果検証では、2012年に実施した郵送悉皆調査をベースラインデータとし、その後に自主グループに参加した高齢者のフレイル改善効果および要介護認定抑制効果を検証した。また、自主グループに参加している高齢者で、1年間の教室前後で体力測定が可能であった対象者を対象に、握力、開眼片脚立位時間、timed up and go test、5回立ち座りテストの改善効果を検証した。
介護予防アルゴリズムの開発では、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保健師、管理栄養士、健康運動指導士といった専門職によるノーミナルグループディスカッションとデルファイ法を用いた。
結果と考察
結果
住民主体の介護予防事業への参加要因の検証
分析対象者は10,727名であり、内訳は、ロバスト高齢者2,811名、プレフレイル(1)3,693名、プレフレイル(2)2,575名、フレイル902名、要支援(1)351名、要支援(2)395名であった。対象者の11.2%の1,205名が自主グループに参加していた。自主グループへの参加に関してどの区分の高齢者も10%以上参加していた。自主グループへ参加している高齢者の特性は、年齢が高く、女性が多く、手段的日常生活活動は維持され、定期的なウォーキング習慣を有し、社会的交流が保たれているような方であった。
住民主体の介護予防事業の効果検証
分析対象の中で、自主グループに参加していたのは1,273名であり、傾向スコアにてマッチングしたコントロール群は1,273名であった。自主グループ参加群では、その後経年的に緩やかに改善し、逆にコントロール群では悪化していたため、その経過には有意な交互作用が認められた。3年間で発生した要介護認定者数は、自主グループ参加者では169名、コントロール群では208名であり、参加者群ではコントロール群に比してオッズ比が0.784となった。
介護予防アルゴリズムの開発
第一段階で運動アルゴリズム用65項目、栄養アルゴリズム用34項目が列挙された。第二段階にて、運動アルゴリズム用29項目、栄養アルゴリズム用20項目となり、第三段階(最終版)で運動アルゴリズム用13項目、栄養アルゴリズム用11項目となった。これらの項目をリスク管理用、指導用に分類し、アルゴリズムを完成させた。
考察
1.機能レベルが低く要介護リスクが高い集団であっても、10%以上の高齢者が自主グループへの定期的な参加を果たしており、この数値は二次予防事業の際に目標となっている5%という数値を大きく上回るものとなっていた。自主グループの参加要因を検討したところ、年齢が高い、女性であること、週1回以上のウォーキング習慣があること、手段的日常生活活動が保たれていること、社会的ネットワークが良好であることが抽出された。
2.自主グループで行われる運動は比較的軽微な内容であり、ある程度の運動機能向上効果は認められたものの一般的な運動介入試験と比較すると、その改善は限定的であった。しかし、要介護認定への抑制効果は約2割であり、比較的大きな効果が認められた。これらのことより自主グループには運動機能を維持・向上させる効果だけでなく、認知機能や精神機能、社会性などへの波及効果によって要介護への移行を予防している可能性がある。
3.運動アルゴリズム、栄養アルゴリズムともに、非専門職や高齢者本人であっても短時間でアセスメントが行える内容となった。
住民主体の介護予防事業への参加要因の検証
分析対象者は10,727名であり、内訳は、ロバスト高齢者2,811名、プレフレイル(1)3,693名、プレフレイル(2)2,575名、フレイル902名、要支援(1)351名、要支援(2)395名であった。対象者の11.2%の1,205名が自主グループに参加していた。自主グループへの参加に関してどの区分の高齢者も10%以上参加していた。自主グループへ参加している高齢者の特性は、年齢が高く、女性が多く、手段的日常生活活動は維持され、定期的なウォーキング習慣を有し、社会的交流が保たれているような方であった。
住民主体の介護予防事業の効果検証
分析対象の中で、自主グループに参加していたのは1,273名であり、傾向スコアにてマッチングしたコントロール群は1,273名であった。自主グループ参加群では、その後経年的に緩やかに改善し、逆にコントロール群では悪化していたため、その経過には有意な交互作用が認められた。3年間で発生した要介護認定者数は、自主グループ参加者では169名、コントロール群では208名であり、参加者群ではコントロール群に比してオッズ比が0.784となった。
介護予防アルゴリズムの開発
第一段階で運動アルゴリズム用65項目、栄養アルゴリズム用34項目が列挙された。第二段階にて、運動アルゴリズム用29項目、栄養アルゴリズム用20項目となり、第三段階(最終版)で運動アルゴリズム用13項目、栄養アルゴリズム用11項目となった。これらの項目をリスク管理用、指導用に分類し、アルゴリズムを完成させた。
考察
1.機能レベルが低く要介護リスクが高い集団であっても、10%以上の高齢者が自主グループへの定期的な参加を果たしており、この数値は二次予防事業の際に目標となっている5%という数値を大きく上回るものとなっていた。自主グループの参加要因を検討したところ、年齢が高い、女性であること、週1回以上のウォーキング習慣があること、手段的日常生活活動が保たれていること、社会的ネットワークが良好であることが抽出された。
2.自主グループで行われる運動は比較的軽微な内容であり、ある程度の運動機能向上効果は認められたものの一般的な運動介入試験と比較すると、その改善は限定的であった。しかし、要介護認定への抑制効果は約2割であり、比較的大きな効果が認められた。これらのことより自主グループには運動機能を維持・向上させる効果だけでなく、認知機能や精神機能、社会性などへの波及効果によって要介護への移行を予防している可能性がある。
3.運動アルゴリズム、栄養アルゴリズムともに、非専門職や高齢者本人であっても短時間でアセスメントが行える内容となった。
結論
住民主体の介護予防活動を強化している自治体では、自主グループに11.2%もの高齢者が参加していた。機能レベルはこの参加に影響を及ぼしておらず、自主グループの立ち上げを促進することで、さらに多くの高齢者が参加できるような事業に発展する可能性が示唆された。
自主グループに参加することで、運動機能や基本チェックリストの項目に関連する機能を維持することができ、要介護状態への移行を予防している可能性がある。
介護予防に関与している専門職により、13項目で構成される運動指導用アルゴリズム、11項目で構成される栄養指導用アルゴリズムを開発した。これらはいずれも、非専門職や高齢者本人であっても短時間でアセスメントが行える内容であり、介護予防現場で広く利用することが可能と考えられる。
自主グループに参加することで、運動機能や基本チェックリストの項目に関連する機能を維持することができ、要介護状態への移行を予防している可能性がある。
介護予防に関与している専門職により、13項目で構成される運動指導用アルゴリズム、11項目で構成される栄養指導用アルゴリズムを開発した。これらはいずれも、非専門職や高齢者本人であっても短時間でアセスメントが行える内容であり、介護予防現場で広く利用することが可能と考えられる。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
-