文献情報
文献番号
199800565A
報告書区分
総括
研究課題名
ダイオキシン類の排泄促進に関する研究
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
森田 邦正(福岡県保健環境研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 生活安全総合研究事業
研究開始年度
平成10(1998)年度
研究終了予定年度
平成12(2000)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ダイオキシン類は極めて体内に残留し易い毒物で、母親から胎児へ、母乳から乳児に移行する等、人体への影響が懸念されている。また、人体への暴露は 90%以上が食品を摂取することによることが明らかとなっている。本研究では、ダイオキシン類の吸収及び排泄機構の解明と排泄促進法の開発を目的として、1)ダイオキシン類の消化管吸収を抑制し、体外に排泄促進する方法を解明する。2)すでに体内に蓄積したダイオキシン類を消化管経由で効果的に体外に排除する方法を解明する。3)上記知見を総合してダイオキシン類の人体汚染を未然に防止する食生活の方法を開発提示する。これまでの研究から、葉緑素にはダイオキシン類の消化管吸収を抑制する作用があることが示唆され、葉緑素を多く含む野菜類にはダイオキシン類の排泄促進作用が期待される。そこで、小松菜、みつば、ほうれん草等16種類の野菜を用いて、ダイオキシン類の排泄促進について検討した。
研究方法
小松菜、みつば、ほうれん草、青じそ、ケール、にら、春菊、チンゲンサイ、グリーンレタス、ピ-マン、白菜、ブロッコリー、たまねぎ、ネギ、キャベツ、セルリーの16種類の野菜を青果市場等で購入した。これらを洗浄しゆでたのち、乾燥後粉砕した。68匹の雄ラットを1群4匹に分け、基本食と10%の野菜食を投与した。5日間予備飼育後、ダイオキシン類が含まれる油症原因ライスオイル0.2mlをそれぞれの飼料に添加して1回与え、5日間の糞を採取した。糞中のダイオキシン類はソックスレー抽出し、精製後、高分解能GC-MSで定量した。基本食群と16種類の野菜群のダイオキシン類の排泄量について比較検討した。
結果と考察
最も毒性の高い2,3,7,8-T4CDDの排泄量は、基本食群が投与量の1.6%であったのに対し小松菜、みつば、ほうれん草及び青じそ群がその7.6~11.6倍、ケール、にら、春菊、チンゲンサイ、グリーンレタス及びピ-マン群が3.3~4.8倍、白菜、ブロッコリー、たまねぎ、ネギ、キャベツ及びセルリー群が1.6~3.0倍の排泄増加が認められた。最も組織残留性の高い2,3,4,7,8-P5CDFの排泄量は、基本食群が投与量の3.7%であったのに対し、小松菜、みつば、ほうれん草及び青じそ群がその6.5~9.4倍、ケール、にら、春菊、チンゲンサイ、グリーンレタス及びピ-マン群が4.3~5.4倍、白菜、ブロッコリー、たまねぎ、ネギ、キャベツ及びセルリー群が1.2~1.3倍の排泄増加が認められた。葉緑素含有量の多い野菜群は、含有量の少ない野菜群と比べて、糞中排泄量が顕著に増加した。16種類の野菜群のダイオキシン類の排泄量と野菜中の葉緑素含有量の間には有意な正の相関関係が認められた(P<0.01)。
結論
緑色野菜はダイオキシン類の吸収を抑制し,排泄促進する作用があることが明らかとなった。ダイオキシン類から国民の健康影響を未然に防ぐ食生活の方法として、小松菜、みつば、ほうれん草及び青じそ等の葉緑素含有量の多い緑色野菜を多くとることが重要であると思われる。
公開日・更新日
公開日
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更新日
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