文献情報
文献番号
201614002A
報告書区分
総括
研究課題名
地域要因に基づいた在宅医療・介護連携推進に関する研究-汎用性の高い在宅医療・介護連携推進・ガイドラインの作成
課題番号
H27-長寿-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
葛谷 雅文(名古屋大学 未来社会創造機構)
研究分担者(所属機関)
- 神崎 恒一(杏林大学医学部高齢医学)
- 三浦 久幸(国立長寿医療研究センター在宅連携医療部)
- 飯島 勝矢(東京大学高齢社会総合研究機構)
- 鈴木 裕介(名古屋大学医学部附属病院地域連携・患者相談センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学政策研究
研究開始年度
平成27(2015)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
前年度の研究成果も踏まえ、相談窓口業務のあり方が今後進捗状況を反映する指標になりうると考えた。平成28年度の総括研究として相談支援(窓口)の設置の有無、設置場所、担当者職種、相談件数、業務時間などの実態および、相談内容などと各自治体の背景との関連を現場職員の業務分析と担当職員への質問票による調査により考察することとした。
研究方法
①名古屋市各区に設置された在宅医療・介護連携支援センターの職員を対象に2016年10月~11月にかけての連続5日間(月~金)の業務内容の項目別の分類、業務報告集計(平成28年4月~12月)の分析を行った。
②全国自治体の医療介護連携推進事業担当者を対象に相談業務に関する調査を実施した。調査内容は平成28年度上半期について1)相談窓口設置の有無について2)担当部署について3)配置人員の総数4)配置人員の基礎職種と業務形態について5)部署全体の相談件数6)相談方法7)相談者8)相談内容9)対応
③医療資源の乏しい中山間地(愛知県新城市)の医療・介護資源の把握と業務実態の調査:東三河北部医療圏(新城市、設楽町、東栄町、豊根村)を対象自治体として、在宅医療・介護連携事業のスタッフ数、事業遂行実態を把握した。当地域の在宅医療連携の要である新城市訪問看護ステーション看護師へのタイムスタディーを行った。
④東京都福祉保険局が東京都内の区市町村に対して行った在宅医療・介護連携推進事業の取り組み状況の調査結果をもとに、在宅医療推進事業の進捗について分析を行った。
⑤地方自治体(千葉県S町、滋賀県T市)の医療介護連携推進事業担当する行政職員を対象にしたタイムスタディー:2017年1月から3月の10日間、両自治体の在宅医療・介護連携推進事業を担当する職員それぞれ1名を対象にタイムスタディーを実施した。また、分析の過程で、平成27年度に実施した、千葉県柏市を対象としたタイムスタディーの結果を用い、比較を通じて特徴を明らかにした。
②全国自治体の医療介護連携推進事業担当者を対象に相談業務に関する調査を実施した。調査内容は平成28年度上半期について1)相談窓口設置の有無について2)担当部署について3)配置人員の総数4)配置人員の基礎職種と業務形態について5)部署全体の相談件数6)相談方法7)相談者8)相談内容9)対応
③医療資源の乏しい中山間地(愛知県新城市)の医療・介護資源の把握と業務実態の調査:東三河北部医療圏(新城市、設楽町、東栄町、豊根村)を対象自治体として、在宅医療・介護連携事業のスタッフ数、事業遂行実態を把握した。当地域の在宅医療連携の要である新城市訪問看護ステーション看護師へのタイムスタディーを行った。
④東京都福祉保険局が東京都内の区市町村に対して行った在宅医療・介護連携推進事業の取り組み状況の調査結果をもとに、在宅医療推進事業の進捗について分析を行った。
⑤地方自治体(千葉県S町、滋賀県T市)の医療介護連携推進事業担当する行政職員を対象にしたタイムスタディー:2017年1月から3月の10日間、両自治体の在宅医療・介護連携推進事業を担当する職員それぞれ1名を対象にタイムスタディーを実施した。また、分析の過程で、平成27年度に実施した、千葉県柏市を対象としたタイムスタディーの結果を用い、比較を通じて特徴を明らかにした。
結果と考察
各地域のタイムスタディーの結果を比較すると共通した傾向として電話による相談の時間は業務の数%を占めているに過ぎない一方で会議の準備等の書類の作成などに費やされる時間は多いなどの実態が浮き彫りにされた。一方、「関係市区町村との連携」や情報収集業務は極めて限定的であり、周辺自治体との事業進捗に関する知識や経験の共有がお互いの事業推進に寄与するという段階まで至っていない現状が伺われた。中山間地の訪問看護ステーションのタイムスタディーで顕著に観察されたのは一人の利用者宅に訪問するために費やされる時間が業務に占める割合の大きいことである。この問題は今度ますます過疎化が加速することが予測される中山間地における共通の課題である。相談業務という視点からは名古屋市の場合は支援センターが医療機関内に設置された場合の方が、他の機関との調整が多く、相談部署の役割の地域包括支援センターとの役割の差別化が図られていることも設置時期による比較から伺われた。一方、全国自治体の調査においては相談業務の部署は都市部では医師会と地域包括支援センターがほぼ同数なのに対して郡部では全体のほぼ半数が地域包括支援センターに設置されていることが分かった。相談業務の内容は多岐にわたり、相談内容も地域の事情を如実に反映していることが今回の名古屋市の業務分析と全国の調査結果の相違から明らかになった。地域包括ケアシステムを各地域で定着させるためには医療の連携、利用者を中心とした一体的運用は各職種の行動における規範となる。各自治体の基礎指標(高齢化率、独居率等)、医療・介護資源の需給状況やアウトカム指標の類型化により、各自治体の事業推進における指針を明確にしていく必要がある。
結論
都市部および都市近郊、地方都市の医療介護連携推進の担当部署の職員を対象にタイムスタディーを実施した結果、電話による相談の時間は総体的に少なくせいぜい業務の数%を占めているに過ぎない一方で会議の準備等の書類の作成などに費やされる時間は多いことが明らかになった。相談業務に関しては各地域で進められているシステムに関する部署外からの相談と部署内の業務運営や企画立案に関する相談を今回のタイムスタディーの結果から地域別に比較することは困難であった。地域にかかわらず「関係市区町村との連携」や情報収集業務は極めて限定的であり、周辺自治体との事業進捗に関する知識や経験の共有がお互いの事業推進に相乗効果的に寄与するという段階まで至っていない現状が伺われた。一方、全国の自治体の事業担当者を対象にした調査では、今後地域事業を定常的に推進するにあたり、相談業務に充てる人員を増やす必要があるとする意見が多く、予算化、あるいは部署内の役割分担の明確化、職種間、関係部署間の連携や調整を担う人材の確保の必要性が示唆された。
公開日・更新日
公開日
2017-10-03
更新日
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