脳死患者の家族に選択肢提示を行う際の対応のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201612004A
報告書区分
総括
研究課題名
脳死患者の家族に選択肢提示を行う際の対応のあり方に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-104
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木  尚(日本医科大学付属病院救命救急科)
  • 大宮 かおり(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク教育研修部)
  • 織田  順(東京医科大学救急・災害医学分野)
  • 加藤 庸子(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院脳神経外科)
  • 久志本 成樹(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)
  • 坂本 哲也(帝京大学医学部)
  • 田中 秀治(国士舘大学体育学部、同大学院救急システム研究科)
  • 名取 良弘(飯塚病院脳神経外科)
  • 山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
6,680,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 脳死下臓器提供は僅かに増加傾向であるが、死体腎提供が極端に低下し、臓器提供数の合計としては増加傾向ではないと判断できる。その要因は脳死とされうる状態となった患者家族に対して、臓器提供という選択肢が存在することの説明(以後、選択肢提示)の手順が煩雑で、救急医療の現場との解離があると指摘されている。そこで、本研究では患者家族に対して、一律の手順ではなく、患者や家族の臓器提供に対する理解度、意思表示法に応じた選択肢提示法を検討することを目的とした。また、脳死とされうる状態の患者が発生し得る施設では選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を検討した。
研究方法
 本研究では医学的に全脳が不可逆的に損傷されたと判断された場合や心停止後において、患者家族の脳死下臓器提供への意思や患者の事前意思に応じた選択肢提示の方法を医師や看護師等の視点から研究した。また、研究の手法としては研究班内での議論だけではなく、医療職を対象としたセミナー開催での議論、市民との議論の中での結果を参考として結論を導いた。
結果と考察
それぞれの課題に対しての研究結果と経過を以下に記載する。
①選択肢提示のあり方に関する研究 
平成26年度、27年度に本研究班と日本臓器移植ネットワーク(JOT)が共催した「救急医療における脳死患者の対応セミナー」の議論や分担研究者の施設内で行ったアンケート調査から選択肢提示の課題や解決法に関しての議論を検討し、選択肢提示の現実的な手順に関して検討を行った。具体的には治療の過程で不可逆的な全脳機能不全と判断された際に、①:入院時や治療の過程で意思表示カード等により脳死下臓器提供への意思があると確認されている場合、②:①以外の場合とした。すなわち、事前の意思表示の有無によっての現実な手順に関しての検討を行った。また、施設として選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を提案した。 

②小児に脳死例における選択肢提示の諸問題に関する研究
 本研究により臓器の移植に関する法律の改正は、それまで移植医療と関係の薄かった小児科領域も、6歳未満の脳死判定基準や脳死下臓器提供体制の整備を求められる中、慎重に問題の動向を捉え適応しようと模索する姿勢が推測できる。しかし、生命倫理の視点からは根本的課題を含有した現状であるとも考えられる。小児の脳死という医学的概念が、日本社会の中でいかに位置付けられていくか、今後も同様の調査等を行いながら引き続き観察と介入が必要である。

③地域の共通認識としての選択肢提示に関する研究
 人口あたりの脳死下臓器提供数は地方により異なるものの、施設としての対応と臓器提供数には一定の地方別関連はない。選択肢提示に関する標準的手法の構築のためには、脳死と考えられる病態の患者に対する日常的な“一般の脳死判定”を施行することを明確に認識し、施設としての取り組むことが必要である。

④看護師の視点からみた選択肢提示のあり方に関する研究
 脳死の告知から悲嘆ケアまでの過程を7段階に分類し、看護師の役割を「目標」「情報収集」「患者ケア」「家族ケア」「他職種連携」の側面に沿って整理し、ガイドライン(案)を作成した。

⑤組織提供に際しての選択肢提示に関する諸問題に関する研究
 総情報数は激減した。要因の1つとして、長年活動の中心的存在であった(一社)日本スキンバンクネットワークが活動を一時休止したことが影響していると考えられた。脳死下臓器提供が増加傾向である現状では、早い段階で組織提供に関する可能性を家族へ情報提供することにより、意思の尊重が図れる可能性がある。

⑥行政や社会と連携して選択肢提示に関する研究
 今回の研究で、行政作成のパンフレットの標準化が行われた。行政作成の本パンフレットは、臓器提供の選択肢呈示を行いたいが、経験がない医師グループに有用と考えられた。

⑦死体腎移植における選択肢提示の諸問題に関する研究
 選択肢肢提示の方法を検討し、自施設でできることを話し合い、今後の見通しが可能になりつつあると考えられた。
結論
 選択肢提示の現実的な手順を提示した。その結果、治療の過程で脳死判定の前庭条件となる不可逆的な全脳機能不全と判断された際に、①:入院時や治療の過程で意思表示カード等により脳死下臓器提供への意思があると確認されている場合、②:①以外の場合に分類し、検討した。また、施設として選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を提案した。

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
研究成果の刊行に関する一覧表
その他

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201612004B
報告書区分
総合
研究課題名
脳死患者の家族に選択肢提示を行う際の対応のあり方に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-104
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
横田 裕行(日本医科大学 大学院医学研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 荒木  尚(日本医科大学付属病院救命救急科)
  • 大宮 かおり(公益社団法人日本臓器移植ネットワーク教育研修部)
  • 織田  順(東京医科大学救急・災害医学分野)
  • 加藤 庸子(藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院脳神経外科)
  • 久志本 成樹(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座救急医学分野)
  • 坂本 哲也(帝京大学医学部)
  • 田中 秀治(国士舘大学体育学部、同大学院救急システム研究科)
  • 名取 良弘(飯塚病院脳神経外科)
  • 山勢 博彰(山口大学大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 現在の脳死下臓器提供数は想定数より少ないと考えられる。その原因の一端に臓器提供施設となる救急医療施設や脳神経外科施設等での負担、特に選択肢提示に際しての手順の問題が以前から指摘されている。本研究班はこれらの視点から検討し、日常診療の現状と解離しない選択肢提示の手順を提示することを目的とした。
研究方法
 本研究では医学的に全脳が不可逆的に損傷されたと判断された場合や心停止後において、患者家族の脳死下臓器提供への意思や患者の事前意思に応じた選択肢提示の方法を医師や看護師等の視点から研究した。また、研究の手法としては研究班内での議論だかではなく、医療職を対象としたセミナー開催での議論、市民との議論の中での結果を参考として結論を導いた。
結果と考察
 以下の4つを提案した。①選択肢提示のための手順という位置づけである「脳死とされうる状態の判断」は選択肢提示をするためだけの手順で医学的には必要ない。②実質的に「脳死とされうる状態の判断」は脳死判定の前提条件と同様であるために、前提条件を満たした時に、選択肢提示を行うことを提案する。すなわち、「脳死とされうる状態の判断」のプロセスは脳死判定の前提に含まれると考える。④脳死下臓器提供に関する様々な承諾書や書類作成に関しては医療現場の実情や家族の心情に配慮した見直しを提案する。したがって、治療の過程で脳死判定の前庭条件となる不可逆的な全脳機能不全と判断された際に、入院時や治療の過程で意思表示カード等により脳死下臓器提供への意思があると確認されている場合とそれ以外の場合に分類し、検討した。また、施設として選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を提案した。

 研究の実施経過:現行行われている選択肢提示の方法や手順、その時期に関しては「臓器の移植に関する法律」の運用に関する指針(ガイドライン)に則って行われるが、救急医療の現場と一部解離している部分が存在しているため、患者家族や臓器提供施設に様々な課題や負担が存在している。本研究では現在の標準的手法であるガイドラインの選択肢提示の課題やその解決策に関して研究を行った。さらに、平成26年度、27年度に本研究班と日本臓器移植ネットワーク(JOT)が共催した「救急医療における脳死患者の対応セミナー」の議論の中で選択肢提示の課題や解決法に関しての議論を検討し、選択肢提示の現実的な手順に関して検討を行った。その結果、治療の過程で不可逆的な全脳機能不全と判断された際に、①:入院時や治療の過程で意思表示カード等により脳死下臓器提供への意思があると確認されている場合、②:①以外の場合とした。すなわち、事前の意思表示の有無によっての現実な手順に関しての検討を行った。また、施設として選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を提案した。 
 患者本人、そして家族の臓器提供に関わる想いを実現するために、救急医療施設や脳神経外科施設等の臓器提供施設となる可能性のある施設は施設内の体制やJOT、都道府県コーディネーターや警察などとの連携を構築しておくことが重要であると結論された。
結論
 脳死下臓器提供の機会が生じる可能性がある救命救急センターや脳神経外科集中治療室での診療体制と大きくかけ離れた現状の手順やルールが脳死下臓器提供の際には存在する。実際、脳死下臓器提供時に生じる人的、時間的、あるいは経済的な負担や脳死下臓器提供に関する患者家族への選択肢提示の手順が臨床現場の感覚と大きく乖離していることを本研究班では指摘した。さらに、臓器提供施設への様々な支援方法、啓発活動は過去の当該施設の臓器提供に関する実績に合わせた方法で段階的に行いことの重要性を指摘した。脳死下臓器提供は本研究班で課題となった選択肢の提示のあり方だけではなく、様々な手順、それに伴う課題が山積している。それらの中で共通する部分が、家族対応や救急医療施設や脳神経外科施設等での負担である。法的脳死判定に際しての支援医師派遣の体制もそのような課題の解決法の一つとして実現したものであるが、脳死下臓器提供の際には院内で多くの医療スタッフが関与し、また院外のJOTコーディネーター、臓器摘出チーム、警察、そして時に報道機関への対応も求められる。

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201612004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
臓器提供を増加させるには患者家族や五類型施設に対して、一律の対応ではなく、患者や家族の臓器提供に対する理解度、意思表示法や五類型施設における臓器提供に関する過去の実績に応じた対応が必要である。すなわち、円滑に臓器提供するための体制、臓器提供に関する家族への選択肢提示法のあり方や問題点やその解決策、標準的な手法を提示することが必要である。施設として選択肢の提示をどのような手法で行うべきかに関しても、過去の臓器提供の経験数から3段階に分類し、それぞれ異なった対応法を提案した。

臨床的観点からの成果
脳死下臓器提供を経験していない施設では、コーディネーターによる啓発活動、院内シミュレーション等を行うことが重要である。過去に1~4例経験した施設では、選択肢の提示が今後もなされるような取り組みがされるべきであり、その手法を施設内で共有する努力が必要となる。過去に5例以上脳死下臓器提供を経験した施設では、さらにその数が増加するように院内コーディネーターの配置が効果的であると提案した。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
3年間の研究から臓器の移植に関する法律の改正は、小児医療従事者の脳死判定・臓器移植に関する意識に影響を与えたことが明らかとなった。それまで移植医療と関係の薄かった小児科領域も、6歳未満の脳死判定基準や脳死下臓器提供体制の整備を求められる中、慎重に問題の動向を捉え適応しようと模索する姿勢が推測できた。小児の脳死という医学的概念が、日本社会の中でいかに位置付けられていくか、今後も同様の研究を行いながら引き続き観察が重要と結論した。
その他のインパクト
脳死下臓器提供の際に問題となる手順に関する課題やその解決法に関して検討を行い、現行の法律に則った中で患者家族ケアを考慮し、臓器提供施設となる救急施設や脳神経外科施設等における現実的な手順、すなわち事前の意思表示の有無によっての現実な手順に関しての提案をした。実際、“脳死とされうる状態の判断”は法的脳死判定の際の前提条件にほかならず、“脳死とされうる状態の判断”が選択肢提示としての手順として意味はないものと結論した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
3件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
72件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2019-05-24
更新日
-

収支報告書

文献番号
201612004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
8,684,000円
(2)補助金確定額
6,122,000円
差引額 [(1)-(2)]
2,562,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,394,066円
人件費・謝金 514,084円
旅費 1,390,552円
その他 820,158円
間接経費 2,004,000円
合計 6,122,860円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-06-29
更新日
-