適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究

文献情報

文献番号
201612002A
報告書区分
総括
研究課題名
適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部医学科社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 篠崎 尚史(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院)
  • 有賀 徹(昭和大学 医学部)
  • 高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 相川 厚(東邦大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国際移植学会イスタンブール宣言(2008年)、WHOヒト臓器移植に関する指導指針(1991年、2010年改定)では、各国は移植用臓器の自給自足体制が求められている。日本では臓器移植法改定(2010年)により、臓器提供要件が緩和されたものの臓器提供者数は依然として低迷している。先行研究の知見・課題を踏まえ対象領域の拡大を図り、手法の標準化、研修プログラムの開発により、多くの病院が導入可能で、広く医療の質向上に寄与する仕組みを構築することを目的とする。具体的には、(1)対象領域を急性期病院における終末期患者のケアの質向上を目的とする。(2)データの収集、集積されたデータを解析し、問題点を抽出し、現場に改善をもたらすフィードバックの方法、院内体制の構築を可能とする担当者の研修プログラムを開発する。(3)研修参加者による改善計画の策定、実施による効果の検証を行う。
研究方法
 上記の目的を達成するために本年度は以下の活動を実施した。
(1)院内体制の構築に焦点を当てた研修プログラム(QMセミナー)既受講者対象のフォローアップ研修プログラムの開発と実証
(2)組織診断ツール(MRR:Medical Record Review、HAS:Hospital Attitude Survey)としてのDonor Action Program(DAP)のインフラ整備に相当するDAPのデータ管理
結果と考察
 フォローアップセミナーは、QM研修プログラムとDAP導入研修プログラムを一体化させた2日間の短縮版プログラムを開発し、QMセミナー既受講者14人を対象に実施した。プログラムは、講義と演習(グループワーク)から構成され、マネジメントに焦点を当てた内容となっている。小テストはセミナーの前後で同じ問題で実施し、事前と比較して事後において全体として正答率が向上している傾向が認められた。セミナーの評価(理解度、難易度、推奨度)では、セミナーにおける各講義・演習の内容はほぼ理解することができており、当該セミナーの内容を推奨する傾向である評価が得られたことが明らかとなった。当該セミナーにおける最終的な効果指標は、受講者の行動変容にあるため、受講者が病院においてどのような仕組みの改善・構築を行ったかについての追跡調査が必要と考えられた。
 DAPのデータ管理では、本年度はHASは2病院から969件、MRRは1病院から22件のデータが収集された。2017年1月末までの件数は、HASが50,572件、MRRが10,716件であった。HASの全国データの解析では、医師、看護師など医療職種においては、一般に移植医療には6~8割が賛成であり、半数程度は、死後自分の臓器提供を希望していること、脳死を死の妥当な判定方法であると考えるものは、医師と比較して看護師では低いこと、ドナー候補の特定や臓器提供の同意を得ることに必要な能力・知識を有すると考えるものは、医師で2割弱、看護師ではごく少数であることが明らかとなった。MRRの全国データの解析では、家族へのオプション提示の割合は増加傾向にあるものの、呼吸器使用を100%としたときの臓器提供の各段階では、脳死の診断・家族へのオプション提示の段階での減少割合が高いことが明らかとなった。
結論
 本研究では、ドナーを安定的・長期的に得られることが可能な院内体制構築のための標準的な手法の開発・人材の育成を目的とし、院内体制整備に焦点を絞った2日間のフォローアップセミナーを開催し、急性期の医療機関におけるキーパーソンを対象とした人材育成を実施した。セミナーの評価では、小テストは事後の正答率が向上していること、セミナーの各講義・演習の内容は理解できていることが明らかとなり短期的な効果は認められたものの、最終的な評価指標である受講者の行動変容(院内でどのような仕組みの改善・構築を行ったか)については今後の検討課題である。DAPのデータベースは、HAS及びMRRのデータを継続的に収集し、解析を行うことにより、全国データとして経時的な結果を提示していくことは意義があるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201612002B
報告書区分
総合
研究課題名
適切な臓器提供を可能とする院内体制整備とスタッフの教育研修プログラムの開発に関する研究
課題番号
H26-難治等(免)-一般-102
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
長谷川 友紀(東邦大学 医学部医学科社会医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 篠崎 尚史(慶應義塾大学 医学部)
  • 藤田 民夫(名古屋記念病院)
  • 有賀 徹(昭和大学 医学部 救急医学)
  • 高原 史郎(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 相川 厚(東邦大学 医学部 腎臓学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 移植医療基盤整備研究分野)
研究開始年度
平成26(2014)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 国際移植学会イスタンブール宣言(2008年)、WHOヒト臓器移植に関する指導指針(1991年、2010年改定)では、各国は移植用臓器の自給自足体制が求められている。日本では臓器移植法改定(2010年)により、臓器提供要件が緩和されたものの臓器提供者数は依然として低迷している。先行研究の知見・課題を踏まえ対象領域の拡大を図り、手法の標準化、研修プログラムの開発により、多くの病院が導入可能で、広く医療の質向上に寄与する仕組みを構築することを目的とする。具体的には、(1)対象領域を急性期病院における終末期患者のケアの質向上を目的とする。(2)データの収集、集積されたデータを解析し、問題点を抽出し、現場に改善をもたらすフィードバックの方法、院内体制の構築を可能とする担当者の研修プログラムを開発する。(3)研修参加者による改善計画の策定、実施による効果の検証を行う。
研究方法
 上記の目的を達成するために以下の4点の活動を行った。
(1)クオリティ、マネジメントセミナー(QM)研修プログラムの開発と検証
(2)フォローアップ研修の実施と院内体制整備の支援
(3)DAPデータベースの維持管理
(4)TPMの導入プログラムの開発
結果と考察
 QMセミナー(2日間×2回の4日間コース)を26人(平成26年度)36人(平成27年度)の受講者を対象に実施した。プログラムは、講義と演習(グループワーク)で構成され、多くがマネジメントの内容で構成されている。小テスト及びアンケートの結果から、セミナーにおける各講義・演習の内容はほぼ理解することができており、当該セミナーの内容を推奨する傾向である評価が得られたことが明らかとなった。
 DAP導入セミナーは、QMセミナー既参加者及び院内体制整備の実施病院の職員32人(平成26年度)23人(平成27年度)を対象にDAPの手法を習得するためのセミナーを実施した。また、平成24・25年にQMセミナーに参加した者へのアンケート調査からは、QMセミナー参加後、約7割の参加者が院内において質向上のための取り組みを実施し、そのうち7割超で成果が認められたことが明らかとなった。フォローアップセミナーは、QM研修プログラムとDAP導入研修プログラムを一体化させた2日間の短縮版プログラムを開発し、セミナーを実施した。小テスト及びアンケートの結果から、セミナーにおける各講義・演習の内容はほぼ理解することができており、当該セミナーの内容を推奨する傾向である評価が得られたことが明らかとなった。
 DAPのデータ管理では、平成26年から28年度にHASはのべ14病院から8,853件、MRRはのべ12病院から1,803件のデータが収集された。平成29年1月末までのHASは50,572件、MRRは10,716件収集された。HAS全国データの解析では、医師、看護師など医療職種においては、一般に移植医療には6~8割が賛成であり、半数程度が、死後自分の臓器提供を希望していること、脳死を死の妥当な判定方法であると考えるものは、医師の5~6割に比較して、看護師では3~4割程度であることが明らかとなった。
 TPMの導入プログラムの開発では、TPMが提供しているe-learningコースのコンテンツの内容、e-learningの仕組みについて検討を行った、プログラムとしては有用であるが、インタラクティブなe-learningの方式では、学習スケジュールがタイトであり、学習時間の確保が課題であることからテキスト形式でのツールの提供が有用であると考えられた。
結論
 本研究では、ドナーを安定的・長期的に得られることが可能な院内体制構築のための標準的な手法の開発・人材の育成を目的とし、QMセミナー、DAP導入セミナー、フォローアップセミナーを開催し、急性期の医療機関におけるキーパーソンを対象とした人材育成を行なった。セミナーの評価では、各セミナーともに、小テストの事後の正答率が向上していること、セミナーの各講義・演習の内容は理解できていることから短期的な効果が認められたことが明らかとなったものの、最終的な評価指標である受講者の行動変容(院内でどのような仕組みの改善・構築を行ったか)については今後の検討課題である。DAPのデータベースは、HAS及びMRRのデータを継続的に収集し、解析を行うことにより、全国データとして経時的な結果を提示していくことは意義があるものと考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-07-03
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201612002C

収支報告書

文献番号
201612002Z