文献情報
文献番号
201611007A
報告書区分
総括
研究課題名
糖尿病及び慢性腎不全による合併症足潰傷・壊疽等の重症下肢虚血重症化の予防に関する実態調査
課題番号
H28-免疫-指定-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
大浦 武彦(医療法人社団 廣仁会 褥瘡・創傷治癒研究所)
研究分担者(所属機関)
- 東 信良(旭川医科大学外科講座・血管外科)
- 上村 哲司(佐賀大学医学部附属病院・形成外科)
- 中村 正人(東邦大学医療センター大橋病院・循環科内科)
- 大浦 紀彦(杏林大学医学部・形成外科)
- 小林 修三(湘南鎌倉総合病院)
- 市岡 滋(埼玉医科大学・形成外科)
- 菊地 勘(医療法人社団豊済 会)
- 秋田 定伯(福岡大学医学部・形成外科・創傷再生学)
- 田中 純子(広島大学大学院医歯薬保健学研究院 ・疫学・疾病制御学)
- 安部 正敏(医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック )
- 田中 康仁(奈良県立医大・整形外科)
- 安藤 亮一(武蔵野赤十字病院)
- 谷口 雅彦(聖マリア病院)
- 森田 隼人(シャボン玉石けん株式会社)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
1,600,000円
研究者交替、所属機関変更
なし
研究報告書(概要版)
研究目的
平成27年度大浦研究班は透析患者の四肢切断回避を提案し、
下肢末梢動脈疾患指導管理加算の保険収載を受けることが出来た。
これを受けて平成28年度は成果の調査と
指定研究班の任務である足病の知識と治療の普及・啓発を行う。
次いで、欧米では、透析に先んじて施行されている腎移植について
足病への影響についての研究を行い、下肢・足病重症化予防に繋げる。
下肢末梢動脈疾患指導管理加算の保険収載を受けることが出来た。
これを受けて平成28年度は成果の調査と
指定研究班の任務である足病の知識と治療の普及・啓発を行う。
次いで、欧米では、透析に先んじて施行されている腎移植について
足病への影響についての研究を行い、下肢・足病重症化予防に繋げる。
研究方法
課題1. 医療従事者のための足病治療・ケアの小冊子・補考の小冊子を創り普及活動を行う。
課題2. 慢性透析患者での四肢切断の新規発症とその要因調査
連結症例179,453例について、多変量解析による詳細な検討を行う。
課題3.診療報酬改定で「人工透析患者の下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設され、
その影響について3つの方法で調査した。
3-1 関東地区におけるアンケート
3-2 北海道・九州のアンケート調査
3-3 全国都道府県の登録数と透析クリニックとの割合
課題4 足病治療の目的“起立、歩行”の支援のための早期リハビリ介入の効果
課題5 糖尿病性末期腎不全患者における足病重症化予防に対する腎移植の有用性の検討
課題2. 慢性透析患者での四肢切断の新規発症とその要因調査
連結症例179,453例について、多変量解析による詳細な検討を行う。
課題3.診療報酬改定で「人工透析患者の下肢末梢動脈疾患指導管理加算」が新設され、
その影響について3つの方法で調査した。
3-1 関東地区におけるアンケート
3-2 北海道・九州のアンケート調査
3-3 全国都道府県の登録数と透析クリニックとの割合
課題4 足病治療の目的“起立、歩行”の支援のための早期リハビリ介入の効果
課題5 糖尿病性末期腎不全患者における足病重症化予防に対する腎移植の有用性の検討
結果と考察
課題1 医療従事者のための足病治療・ケアの小冊子・補考について、
特に入院せず免荷をしながら外来で行う足病の治療についてその意義を強調してある。
配布については、厚生省関係と保健所並びに関係学会とする。
課題2 多変量解析の結果、四肢切断発症のリスク因子は、
男性、低アルブミン、高CRP、高リン、糖尿病であった。
また、介入可能な因子として、栄養、炎症、リンと糖尿病管理である。
課題3
【3-1】診療報酬改定から約9か月後の東京都での調査では、
透析患者へのフットチェックおよびフットケア及び、
下肢血流検査を全患者に施行する施設が増加していた。
フットチェックおよびフットケアを行う職種の間には、
看護師が少なくなり医師を含む多職種で行う施設で行うというのが約60%まで増加していた。
下腿切断について、下肢切断部位としては膝下切断(BK)34.1%であり、
大切断が44.7%と約半数を占めていた。大切断されると、患者の歩行機能が著しく制限される。
循環器内科で下肢血管内治療を施行できる医師であることを条件としたところ、
これが51.9%までに減少していた。制限しなかった時、70.5%であった。
【3-2】 北海道・九州のアンケート調査について
2015年と2016年との下肢切断の比較では残念ながら切断の減少ではなかった。
早期発見・早期治療の効果はまず足病数に反映し、次いで潰瘍の数に影響し、
最後に切断数の減少に及ぶものと考えられる。今後の調査を期待したい。
【3-3】 全国都道府県の登録数と透析クリニックとの割合は68.9%であった。
課題4 多施設(6施設)を対象とした遡及的調査を行った。
2012年4月から2015年3月間に下肢慢性創傷治療目的で調査対象施設へ
入院した症例は233名であった。早期積極的リハを含む7つの因子が抽出され
、その中で早期積極的リハがオッズ比も高く歩行再獲得率を向上させる独立因子であった。
また、創傷治癒率は早期積極的リハによって、創傷治癒率は影響を受けなかった。
創傷治癒率に関しては、対象者をCLI患者に限定した解析においても、
早期積極的リハが影響されなかった。強制投入法の解析も有意な関連を示さなかった。
課題5 平成28年1月に佐賀腎臓病協会主催の「足病を考える会」において、
大浦研究班との合同シンポジウムを行い、足病重症化予防としての腎移植について
講演討論を行った。その際患者会からも重症化予防としての腎移植の
有効性を明らかにする様にと強く要請された。
特に入院せず免荷をしながら外来で行う足病の治療についてその意義を強調してある。
配布については、厚生省関係と保健所並びに関係学会とする。
課題2 多変量解析の結果、四肢切断発症のリスク因子は、
男性、低アルブミン、高CRP、高リン、糖尿病であった。
また、介入可能な因子として、栄養、炎症、リンと糖尿病管理である。
課題3
【3-1】診療報酬改定から約9か月後の東京都での調査では、
透析患者へのフットチェックおよびフットケア及び、
下肢血流検査を全患者に施行する施設が増加していた。
フットチェックおよびフットケアを行う職種の間には、
看護師が少なくなり医師を含む多職種で行う施設で行うというのが約60%まで増加していた。
下腿切断について、下肢切断部位としては膝下切断(BK)34.1%であり、
大切断が44.7%と約半数を占めていた。大切断されると、患者の歩行機能が著しく制限される。
循環器内科で下肢血管内治療を施行できる医師であることを条件としたところ、
これが51.9%までに減少していた。制限しなかった時、70.5%であった。
【3-2】 北海道・九州のアンケート調査について
2015年と2016年との下肢切断の比較では残念ながら切断の減少ではなかった。
早期発見・早期治療の効果はまず足病数に反映し、次いで潰瘍の数に影響し、
最後に切断数の減少に及ぶものと考えられる。今後の調査を期待したい。
【3-3】 全国都道府県の登録数と透析クリニックとの割合は68.9%であった。
課題4 多施設(6施設)を対象とした遡及的調査を行った。
2012年4月から2015年3月間に下肢慢性創傷治療目的で調査対象施設へ
入院した症例は233名であった。早期積極的リハを含む7つの因子が抽出され
、その中で早期積極的リハがオッズ比も高く歩行再獲得率を向上させる独立因子であった。
また、創傷治癒率は早期積極的リハによって、創傷治癒率は影響を受けなかった。
創傷治癒率に関しては、対象者をCLI患者に限定した解析においても、
早期積極的リハが影響されなかった。強制投入法の解析も有意な関連を示さなかった。
課題5 平成28年1月に佐賀腎臓病協会主催の「足病を考える会」において、
大浦研究班との合同シンポジウムを行い、足病重症化予防としての腎移植について
講演討論を行った。その際患者会からも重症化予防としての腎移植の
有効性を明らかにする様にと強く要請された。
結論
①医療従事者のための足病治療・ケアの小冊子・補考について、特に入院せず免荷をしながら外来で行う足病の治療については、種々な分野に影響を及ぼしている。
②診療報酬改定から1年、フットケアや血流検査をする施設が多くなった。
③2015年と2016年との下肢切断数の比較では残念ながら切断の減少とはなっていなかった。
④早期積極的リハを含む7つの因子が抽出され、その中で早期積極的リハが歩行再獲得率を向上させる独立した因子であった。また創傷治癒率早期積極的リハは創傷治癒率に関与しないことが明らかになった。
⑤現在、腎移植を希望していない人の大半は諦めており、別な形で調査すれば透析患者の80~90%は希望していることが分かった。
②診療報酬改定から1年、フットケアや血流検査をする施設が多くなった。
③2015年と2016年との下肢切断数の比較では残念ながら切断の減少とはなっていなかった。
④早期積極的リハを含む7つの因子が抽出され、その中で早期積極的リハが歩行再獲得率を向上させる独立した因子であった。また創傷治癒率早期積極的リハは創傷治癒率に関与しないことが明らかになった。
⑤現在、腎移植を希望していない人の大半は諦めており、別な形で調査すれば透析患者の80~90%は希望していることが分かった。
公開日・更新日
公開日
2018-02-22
更新日
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