文献情報
文献番号
201611006A
報告書区分
総括
研究課題名
今後の慢性腎臓病(CKD)対策のあり方に関する研究
課題番号
H28-免疫-指定-001
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
柏原 直樹(川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学)
研究分担者(所属機関)
- 岡田 浩一(埼玉医科大学 医学部 腎臓内科学)
- 守山 敏樹(大阪大学 キャンパスライフ健康支援センター)
- 南学 正臣(東京大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学/内分泌病態学)
- 丸山 彰一(名古屋大学 大学院医学系研究科 腎臓内科学)
- 要 伸也(杏林大学 医学部 第一内科学(腎臓・リウマチ膠原病内科))
- 藤元 昭一(宮崎大学 医学部 医学科血液・血管先端医療学講座/腎臓内科学)
- 旭 浩一(福島県立医科大学 医学部 生活習慣病・慢性腎臓病(CKD)病態治療学講座・腎臓内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
慢性腎臓病CKDに関する具体的対策を提言し、CKDの医療水準の向上を実現し、腎不全、腎代替療法への移行を阻止することを目的とする。具体的には、1)CKD発症予防、早期発見・早期介入、重症化予防の各段階での各種取組を評価、統括し、全国展開できる体制の構築を目指す。2)CKD対策に関与する各職種(かかりつけ医、腎専門医、保健師、栄養士等)の役割を明確化し、3)連携基準を明確化し、地域の実情に応じた柔軟性のある実施可能な連携方法を提示する。4)海外のCKD診療の実態を解析し本邦の実態と比較する。総じてCKD対策を牽引する司令塔、駆動力の構築を目指す。
研究方法
課題毎に研究協力者と研究チームを組み、研究を進めた。実施にあたっては、一般社団法人日本腎臓学会(理事長:柏原直樹)と緊密な連携の元で研究事業を実施した。
1)かかりつけ医、専門医への紹介基準の見直し及び腎健診における保健指導、特に医療機関への紹介基準の見直し
2)厚生労働省、AMEDで支援されるCKD関連公的研究の成果のとりまとめ(合同発表会の実施)
3)CKD診療における多職種連携体系の構築
4)高齢者の腎代替療法のあり方の調査と提言作成に向けて準備
5)CKD診療の国際比較
1)かかりつけ医、専門医への紹介基準の見直し及び腎健診における保健指導、特に医療機関への紹介基準の見直し
2)厚生労働省、AMEDで支援されるCKD関連公的研究の成果のとりまとめ(合同発表会の実施)
3)CKD診療における多職種連携体系の構築
4)高齢者の腎代替療法のあり方の調査と提言作成に向けて準備
5)CKD診療の国際比較
結果と考察
1)WEBアンケートを行い、CKD診療に関する代表的なガイドラインが腎臓専門医に十分普及していることを確認した。
国内のエビデンスを中心として検討し、蛋白尿・eGFRの取り扱いの改訂案を検討した。特定健診でのCKDの早期発見には、蛋白尿(±)の患者の慎重な対応の必要性が明らかとなった。医療機関への紹介基準について、eGFR<45未満(CKDステージ3b)とすることが妥当と判断した。
2)公的研究の成果を広く共有するための合同成果発表会を企画・実施した。
3)CKD診療を広く現場に浸透させるために、看護師(保健師を含む)、管理栄養士、薬剤師の3職種を対象とする「腎臓病療養指導士」制度を新設した。
4)高齢CKD患者の課題を抽出し、高齢者CKD診療における論点を整理した。
CKD有病率は加齢に伴い上昇する。高齢者のCKD対策では、個人の状況に合わせて、腎不全への進行阻止、QOL維持・向上、要介護状態への移行阻止等の包括的な対応が必要である。認知症の割合も60歳を超えると増加が顕著であり、認知症の存在はADLの阻害要因であることが明らかになった。QOLを配慮した高齢者RRTのあり方について、提言作成を目指した作業に着手した。
5)国際腎臓学会(International Society of Nephrology)におけるプロジェクトGlobal Kidney Health AtlasをもとにCKD診療の国際比較を行った。本邦におけるCKDの有病率は世界と比較し大差ないが、人口100万人当たりの透析患者数は台湾(3138人)に次いで世界第2位(日本 2411人)であることが判明した。本邦では透析導入後の死亡率が世界と比較し低いことといった背景が関係していると推測された。
「今後の腎疾患対策のあり方について」(平成20年3月 腎疾患対策検討会)に基づいた腎対策にもかかわらず、透析導入患者減少の実現には至っていないなど、その成果は必ずしも十分ではない。CKD対策の全体像を把握し、研究成果を分析・評価し、研究資源配分の最適化を図ることが重要である。CKD対策を確実に推進し、CKDの医療水準を向上させ、新規透析導入患者の減少を実現する活動を強化する必要がある。
CKD対策として多彩な活動が展開されてきたが、それらを総括(司令塔)し、強力に牽引する駆動力となる組織の構築が必要である。指定難病である「IgA腎症」等については難治性疾患政策研究事業の「難治性腎疾患に関する調査研究」班等が存在するが、原疾患を問わず、全ての腎臓病・CKDを包括的に対象とし、牽引する政策研究班は存在しない。
今後は、関連学会や医師会等の協力も得ながら、全国市町村で実施可能なCKD診療連携プログラム、最適なCKD診療連携のあり方を提案する。地域の実情に応じ柔軟に対応すべく、複数のプログラムを提示することが重要である。
国内のエビデンスを中心として検討し、蛋白尿・eGFRの取り扱いの改訂案を検討した。特定健診でのCKDの早期発見には、蛋白尿(±)の患者の慎重な対応の必要性が明らかとなった。医療機関への紹介基準について、eGFR<45未満(CKDステージ3b)とすることが妥当と判断した。
2)公的研究の成果を広く共有するための合同成果発表会を企画・実施した。
3)CKD診療を広く現場に浸透させるために、看護師(保健師を含む)、管理栄養士、薬剤師の3職種を対象とする「腎臓病療養指導士」制度を新設した。
4)高齢CKD患者の課題を抽出し、高齢者CKD診療における論点を整理した。
CKD有病率は加齢に伴い上昇する。高齢者のCKD対策では、個人の状況に合わせて、腎不全への進行阻止、QOL維持・向上、要介護状態への移行阻止等の包括的な対応が必要である。認知症の割合も60歳を超えると増加が顕著であり、認知症の存在はADLの阻害要因であることが明らかになった。QOLを配慮した高齢者RRTのあり方について、提言作成を目指した作業に着手した。
5)国際腎臓学会(International Society of Nephrology)におけるプロジェクトGlobal Kidney Health AtlasをもとにCKD診療の国際比較を行った。本邦におけるCKDの有病率は世界と比較し大差ないが、人口100万人当たりの透析患者数は台湾(3138人)に次いで世界第2位(日本 2411人)であることが判明した。本邦では透析導入後の死亡率が世界と比較し低いことといった背景が関係していると推測された。
「今後の腎疾患対策のあり方について」(平成20年3月 腎疾患対策検討会)に基づいた腎対策にもかかわらず、透析導入患者減少の実現には至っていないなど、その成果は必ずしも十分ではない。CKD対策の全体像を把握し、研究成果を分析・評価し、研究資源配分の最適化を図ることが重要である。CKD対策を確実に推進し、CKDの医療水準を向上させ、新規透析導入患者の減少を実現する活動を強化する必要がある。
CKD対策として多彩な活動が展開されてきたが、それらを総括(司令塔)し、強力に牽引する駆動力となる組織の構築が必要である。指定難病である「IgA腎症」等については難治性疾患政策研究事業の「難治性腎疾患に関する調査研究」班等が存在するが、原疾患を問わず、全ての腎臓病・CKDを包括的に対象とし、牽引する政策研究班は存在しない。
今後は、関連学会や医師会等の協力も得ながら、全国市町村で実施可能なCKD診療連携プログラム、最適なCKD診療連携のあり方を提案する。地域の実情に応じ柔軟に対応すべく、複数のプログラムを提示することが重要である。
結論
平成20年度版「今後の腎疾患対策のあり方について」の更新にとどまらず、行政的に重要な課題となっているものの、さらに検討が必要と考えられる事項として、小児成人期移行医療(トランジション)、災害対策、人材育成、高齢者CKD診療のあり方、腹膜透析などの在宅腎代替療法のあり方、海外のCKD医療の現状と対策等についても調査・研究を行い、CKD診療の向上、末期腎不全への移行阻止に資したい。
公開日・更新日
公開日
2018-02-22
更新日
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