文献情報
文献番号
201611005A
報告書区分
総括
研究課題名
小児期あるいは成人移行の若年性特発性関節炎(JIA)の全国実態調査とその臨床的検討
課題番号
H28-免疫-一般-002
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
森 雅亮(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 生涯免疫難病学講座)
研究分担者(所属機関)
- 宮坂 信之(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科)
- 小池 隆夫(NTT東日本札幌病院/北海道大学内科、リウマチ学)
- 針谷 正祥(東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター・リウマチ性疾患薬剤疫学研究部門)
- 上阪 等(国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 膠原病・リウマチ内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(免疫アレルギー疾患等政策研究 免疫アレルギー疾患政策研究分野)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成28(2016)年度
研究費
4,800,000円
研究者交替、所属機関変更
該当なし
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、小児期のみならず成人移行を兼ねた若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis、以下JIA)全般の全国実態調査を行い、①JIAの小児期および成人移行後の診療実態を明らかにする、②JIAの病型毎の差異を明確にすることで、従来のJIA分類基準の妥当性を検証する、③小児から成人移行までのJIAを長期に観察することにより、寛解あるいは機能障害に至る予後予測因子を検証する、④今後長期的に継続して観察評価できる長期データベース構築のための基礎データを収集し、診断までの過程、治療、投薬内容を検討する、の4点に焦点を当てて、多角的に小児(JIA)と成人(関節リウマチ:RA)との異同について検証することであり、本研究初年度の平成28年度は小児期のみならず成人移行を兼ねたJIA全般の全国実態調査を行い、JIAの小児期および成人移行後の診療実態を明らかにすることとした。
研究方法
本研究におけるJIA患者実数調査は、本研究班研究、日本リウマチ学会、日本小児リウマチ学会の連携のもとで行われた、本邦初の本格的なJIA全国疫学調査であった。日本小児科学会専門医認定施設を対象にした小児期JIA患者の全国実態調査と日本リウマチ学会専門医を対象とした成人移行JIA患者の全国実態調査を施行し、現在の年齢が16歳未満あるいは16歳以上のJIA症例の実数を調査した。日本小児科学会専門医認定施設を網羅した小児期JIA患者の全国実態調査は、研究代表者である森が担当し、日本リウマチ学会専門医全般を対象とした成人移行JIA患者の全国実態調査は、研究分担者である宮坂、小池、針谷、上阪の4名にご協力を仰いだ。
結果と考察
2017年4月末日の時点で、前者の回答率は91.5%(519施設中475施設から回答)と極めて高い回答が全国規模で得られた。その結果、16歳未満のJIA患者は1704名、16歳以上は749名であったことから、統計学的解析を行い全国で小児科専門施設がフォローしているJIA患者は計約2,700名であることが判明した。一方、日本リウマチ学会専門医が所属している27都道府県83施設からも、16歳未満のJIA患者は29名、16歳以上は164名のJIA患者を診療しているとの回答があった。小児科以外のリウマチ科や整形外科においても、少なからず小児期から移行期にかけてのJIA患者を診療している実態が初めて明らかにされた。
本研究はJIAを小児科、成人診療科という垣根を超えたシームレスな形で長期にわたり観察しうる仕組みを構築する上で、必要不可欠な基礎情報を網羅的に収集しうる初めての試みであり、これまで断片的にしか捉えることができなかったJIAの自然史を大規模に俯瞰できる可能性がある。その中で、現在問題となっている移行期医療の現状と問題点を把握し、小児科および成人診療科の円滑な連携構築のための重要な情報を収集することができると考える。それに加え、移行期で生物学的製剤治療を受けているJIA患者は、成人になった途端に小児慢性特定疾病対策の医療費免除制度が使用できなくなり社会的に孤立してしまう実態も存在し、倫理的にも大きな問題として取り上げられてきており、本研究はその解決の一助になりうると考えられる。
本研究はJIAを小児科、成人診療科という垣根を超えたシームレスな形で長期にわたり観察しうる仕組みを構築する上で、必要不可欠な基礎情報を網羅的に収集しうる初めての試みであり、これまで断片的にしか捉えることができなかったJIAの自然史を大規模に俯瞰できる可能性がある。その中で、現在問題となっている移行期医療の現状と問題点を把握し、小児科および成人診療科の円滑な連携構築のための重要な情報を収集することができると考える。それに加え、移行期で生物学的製剤治療を受けているJIA患者は、成人になった途端に小児慢性特定疾病対策の医療費免除制度が使用できなくなり社会的に孤立してしまう実態も存在し、倫理的にも大きな問題として取り上げられてきており、本研究はその解決の一助になりうると考えられる。
結論
本研究の目的は、小児期のみならず成人移行を兼ねた若年性特発性関節炎(juvenile idiopathic arthritis、以下JIA)全般の全国実態調査を行い、①JIAの小児期および成人移行後の診療実態を明らかにする、②JIAの病型毎の差異を明確にすることで、従来のJIA分類基準の妥当性を検証する、③小児から成人移行までのJIAを長期に観察することにより、寛解あるいは機能障害に至る予後予測因子を検証する、④今後長期的に継続して観察評価できる長期データベース構築のための基礎データを収集し、診断までの過程、治療、投薬内容を検討する、の4点に焦点を当てて、多角的にJIAとRAとの異同について検証することである。本研究初年度の平成28年度は、小児期のみならず成人移行を兼ねたJIA全般の全国実態調査を行い、JIAの小児期および成人移行後の診療実態を明らかにした。本調査は、本邦初の本格的なJIA全国疫学調査であった。その結果、統計学的解析より、全国で小児科専門施設がフォローしているJIA患者は計約2,700名であることが判明した。また、小児科以外のリウマチ科や整形外科においても、少なからず小児期から移行期にかけてのJIA患者を診療している実態も明確になった。
公開日・更新日
公開日
2017-05-23
更新日
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