カーニー複合に関する疫学調査と診断基準の普及に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201610113A
報告書区分
総括
研究課題名
カーニー複合に関する疫学調査と診断基準の普及に向けた調査研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-031
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
向井 徳男(JA北海道厚生連 旭川厚生病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 哲男(横浜労災病院 内分泌代謝科)
  • 西條 泰明(旭川医科大学 健康科学)
  • 棚橋 祐典(旭川医科大学 小児科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
4,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カーニー複合(CNC)は粘液腫、皮膚色素斑、内分泌機能亢進状態を合併した症例をまとめ名付けられた比較的新しい疾患概念であり、2001年に海外から診断基準が提唱され、これまでに世界で700例以上の報告・症例登録のある多発性家族性腫瘍症候群である。約7割が常染色体優性遺伝形式で、残りは散発例とされ、遺伝子座位として2p16 (type2)あるいは17q2 (type1)との連鎖が示唆されており、本疾患には異質性がある。さらに、type1の原因遺伝子としてPRKAR1Aが同定されているが、type2の原因遺伝子は未だ同定されていない。type1患者ではPRKAR1A遺伝子のハプロ変異によって腫瘍抑制性因子と考えられるPRKAR1Aタンパクが不活性化され、ホルモン産生や腫瘍形成が促進されると考えられる。治療法も内分泌異常に対する対症療法以外は、腫瘍に対する手術で対処する以外にないというのが現状である。
疾患の希少性ゆえ、本邦におけるCNC患者の実態についてほとんど不明であったが、平成22年度に行った全国調査の推定で約40例存在することを初めて明らかにした。平成27年7月に新規指定難病となり、疾患概念についても以前よりは普及が図られたと考えられる。そこで、改めて全国調査を実施してCNC患者の本邦における実態把握をはかり、得られた情報を公開し、本疾患の認知向上、診療レベル向上を図っていく。これにより患者・家族のQOL向上につなげ、ひいては今後の医療・福祉の向上に向けた厚生行政にも資することが可能となる。特に把握した実態から、①現在の診断基準の整合性および有用性の検討を行うこと、②難病医療費助成制度への申請・助成の状況を検討すること、③長期的予後を含めた長期管理について検討すること、④既知の原因遺伝子であるPRKAR1A遺伝子診断の国内実施体制を確立すること、⑤症例の生体試料の収集・保管を行い将来的な本疾患の病因・病態解明に向けての国民的資産とすること、を主な目的とする。全国調査に際しては本疾患の症状が関連する学会と連携して行い、④に関しては未診断疾患イニシアチブ(IRUD)との連携をはかり、⑤に関しては難病研究資源バンクとの連携をはかる。なお、これらの研究を遂行するに当たっては1年目の研究実施期間が短いことから、平成29年度にまたがって実施することとする。
研究方法
CNC実態把握のための全国調査を関連する学会等の協力を得て、アンケート形式で実施する。個々の症例の臨床情報については患者個人票に基づく二次調査を実施し、収集した患者臨床情報を基に、多彩な症状の組み合わせからなるCNCの臨床的特徴や、現状の診断基準との整合性および有用性について解析・検討する。アンケート調査のほか、文献検索や学会発表演題検索等により症例経験のある医療機関や発表者を把握して直接連絡を取り、症例数を可能な限り増やすように努める。把握できた全症例について臨床情報を得られるように、回答者(主治医)に依頼していく。遺伝子診断や病理診断を含めた診断法、治療法と予後、長期の管理体制などを明らかにするとともに、それぞれの問題点を抽出していく。これらの検討から必要と判断されれば、現状の診断基準に代わって本邦における独自の診断基準の見直しや、長期の診療方針について検討する。
診断確定のためには既知の原因遺伝子であるPRKAR1A遺伝子異常の有無を明らかにすることが重要であるため、遺伝子解析を研究班として実施する体制を未診断疾患イニシアチブ(IRUD)と連携しながら確立し、希少疾患であっても、よりスムーズで費用効果の高い遺伝子診断を全国に向けて提供する。
また、CNC患者の生体試料収集を進めるため、難病研究資源バンク(医薬基盤・健康・栄養研究所)と協力していく。得られた臨床情報や遺伝情報、生体試料は稀少疾患である本疾患の今後の研究において多大な貢献を可能にすると考えられる。また、新たな原因遺伝子あるいは候補遺伝子が同定された場合、診断確定のための解析法を速やかに確立し、その解析を進める。
全国調査では患者の個人情報の収集を行うことになるが、得られる個人情報の管理を徹底するため、研究組織内に情報管理専門の研究協力者に置くこととする。
結果と考察
研究実施期間が短かったため、具体的な研究成果は得られていない。
本年度の研究実施期間があまりに短期間であったことから、研究の実質的なもの来年度に実施することとして研究計画を進めていきたい。
結論
新規に指定難病として認められたカーニー複合(CNC)の我が国における実態をできるだけ詳細に把握することを目的に全国調査を実施すること、また、希少疾患であるCNCの疾患認知を高めるために本疾患の疾患概念の普及に向けて診断基準利用の促進を図っていく。

公開日・更新日

公開日
2017-05-29
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610113Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,473,118円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 1,526,916円
間接経費 1,000,000円
合計 5,000,034円

備考

備考
自己資金 34円

公開日・更新日

公開日
2018-02-19
更新日
-