筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究

文献情報

文献番号
201610112A
報告書区分
総括
研究課題名
筋ジストロフィーの標準的医療普及のための調査研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-030
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
松村 剛(独立行政法人国立病院機構 刀根山病院 神経内科)
研究分担者(所属機関)
  • 高橋正紀(大阪大学大学院医学系研究科 機能診断科学講座)
  • 久留 聡(独立行政法人国立病院機構鈴鹿病院 神経内科)
  • 高田博仁(独立行政法人国立病院機構青森病院 神経内科)
  • 小牧宏文(国立精神・神経医療研究センター病院 小児神経科)
  • 尾方克久(独立行政法人国立病院機構東埼玉病院 神経内科)
  • 青木正志(東北大学大学院医学系研究科 神経内科)
  • 砂田芳秀(川崎医科大学 神経内科)
  • 西野一三(国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第一部)
  • 石垣景子(東京女子医科大学 小児科)
  • 松浦 徹(自治医科大学 内科学講座神経内科学部門)
  • 石崎雅俊(独立行政法人国立病院機構熊本再春荘 神経内科)
  • 木村 円(国立精神・神経医療研究センターTMC)
  • 中村昭則(独立行政法人国立病院機構まつもと医療センター 神経内科)
  • 西牧謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター病院 小児科)
  • 花山耕三(川崎医科大学 リハビリテーション医学)
  • 米本直裕(京都大学大学院医学研究科 医療統計学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
筋ジストロフィー医療は障害者医療政策の先駆けとして、専門病棟と研究班を核とした集学的医療により構築され、呼吸管理・心筋保護治療等による生命予後の改善などの成果を挙げた。一方、社会的環境の変化により、患者の生活の場は病院から地域に移行した。さらに、基礎的研究の成果が臨床段階を迎えつつあるなど筋ジストロフィー医療の環境は大きく変化している。これまでのシステムは、集学的医療のノウハウを地域医療システムに展開困難であったため、指定難病移行は標準的医療を普及させるための好機であり、そのための調査研究を行う。
研究方法
①診療実態調査
標準的医療推進のツールとして2014年に「デュシェンヌ型筋ジストロフィー診療ガイドライン2014」を発刊した。さらに、現在「筋強直性ジストロフィー診療ガイドライン」を神経学会主体で作成する準備を進めている。当班は、診療ガイドライン作成に協力すると共に、ガイドライン前後の診療実態を明らかにするための調査を行う。具体的には、ガイドライン前調査として筋強直性ジストロフィー、ガイドライン後調査としてジストロフィン異常症を予定している。
②診断手順作成
未分類疾患が多く鑑別診断が困難な肢帯型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、筋強直性ジストロフィー2型に対して標準的診断手順を作成する。
③介護者健康問題調査
在宅期間の増加は介護負担を増加させており、介護者の健康問題が患者の活動・QOLに及ぼす影響も大きくなっていることから、ジストロフィン異常症患者の介護者(両親)の健康管理についての調査を行い、変異保有女性の発症リスクについても検討する。
④アウトリーチ活動
地域での筋ジストロフィー医療体制構築を支援する目的で、保健師・難病相談員、療法士、教育関係者・医療従事者等を対象とした研修会等を行い、筋ジストロフィーに対する知識・技術普及を図る。研究班のホームページを構築し、質の高い医療情報、指導資料や説明書などを掲載する。
 (倫理面への配慮)
診断基準作成のため,倫理的問題はない.
結果と考察
 3月12日に班会議を開催し、各プロジェクトの担当者を決定。ワーキンググループにより作業を開始した。診療実態調査については、調査項目、調査対象の検討を開始。診断手順作成については、海外のガイドラインの検索など基礎資料収集を開始した。介護者健康問題調査については、これまでの研究結果も踏まえ、多施設で介護者の健康実態調査を行うための研究計画作成を開始した。アウトリーチ活動については、研究班ホームページ仮サイトを3月に立ち上げた。今後、本サイトの立ち上げについて準備中である。また、2017年度のリハビリテーション・関連職種セミナー、市民公開講座について下記の様に計画を立てた。
 これまで、筋ジストロフィー医療は専門病棟を有する国立病院機構を中心として担ってきた。しかし、生命予後の改善や生活領域の変化に伴い、患者の受診先は地域の医療機関が主となっている。在宅でのサービス利用についても、難病システムに入っていなかったことで、保健師の支援が受けにくいなどの問題があった。
 地域で専門医療機関と一般医療機関、保険・福祉・介護・教育機関が連携して筋ジストロフィーを診療していくための体制構築が重要で、診断手順作成やリハビリテーション・関連職種に対する教育活動は、こうした体制構築に不可欠なものである。
 また、標準的医療普及のツールとして診療ガイドラインは大きな役割を果たすが、その有効性評価と医療課題の検索を目的とした診療実態調査はガイドライン作成・更新における重要な基礎データとなる。
 筋ジストロフィーの生命予後改善は、介護者負担の問題を増大させた。ジストロフィノパチーにおいては一定の割合の母親が変異保有者であることから、加齢に伴い心筋障害や骨格筋障害などが懸念される。介護者健康問題調査は、介護者の負担軽減、女性ジストロフィノパチーの問題を明らかにし、患者家族のQOL向上に資することが期待される。
結論
本研究により、地域を単位とした筋ジストロフィーの標準的医療提供体制の構築が促進されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2017-06-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610112Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,100,000円
(2)補助金確定額
6,100,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,180,612円
人件費・謝金 147,280円
旅費 556,733円
その他 1,116,674円
間接経費 1,100,000円
合計 6,101,299円

備考

備考
自己資金 1,299円

公開日・更新日

公開日
2018-03-07
更新日
-