成人発症白質脳症の医療基盤に関する調査研究班

文献情報

文献番号
201610111A
報告書区分
総括
研究課題名
成人発症白質脳症の医療基盤に関する調査研究班
課題番号
H28-難治等(難)-一般-029
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
小野寺 理(新潟大学 脳研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 水野 敏樹(京都府立医科大学神経内科)
  • 池内 健(新潟大学 脳研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,840,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
成人発症の白質脳症には、禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症、那須・ハコラ病等が含まれる。本疾患群は、一般に進行性の運動機能障害と認知症を来たし、その療養も長期に亘るために、本人及び家族の負担も大きい。その為に、これらの疾患群の現状の把握と共に、そのニーズ、情報提供の必要性がある。
成人発症の白質脳症は、近年、遺伝子の単離が進み、疾患の同定が可能となってきた。しかし、その診断には諸症状がそろうことが必要とされ、早期診断には適切では無い。また臨床症状も多彩で有り、遺伝子診断無しでは生前診断が困難なことも多い。また、遺伝子診断陰性の症例も、まだ数多く存在する。それらの患者さんに対し、十分な医療体制が提供できていない現状がある。本研究申請では、これらの成人発症の白質脳症の早期診断を可能とし、適切な医療提供が行われるようにする事を目的とする。
本研究計画では、まず現在の診断基準の妥当性の評価、さらに、遺伝子診断によって既存の変異が否定された群の疾患群としての特徴の抽出を行い、これらの群の診断基準を作成することを目標とする。本年度は、今までの各研究班で、遺伝子異常が同定された方、同定されていない方のデーターベースを作成し、診断面での留意点について発信する。次年度は、同定されなかった方々についての疾患の特徴を明らかとし、疾患単位としての設立を目指す。
研究方法
本研究計画は今指定疾患となっている3疾患を中心に遂行する、禿頭と変形性脊椎症を伴う常染色体劣性白質脳症は主任研究者である小野寺が、皮質下梗塞と白質脳症を伴う常染色体優性脳動脈症は分担研究者である水野が、神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症は分担研究者である池内が、那須・ハコラ病は小野寺が担当する。各研究者は、当該疾患の遺伝子診断について全国規模で行ってきた実績がある。本年度は、その実績に伴い、早期診断を目標とした、診断基準の作成を行う。すでに遺伝子診断での確定例を多数保有しているため、それらの症例の医療記録を後方視的に検討することにより、早期診断のためのチェックリスト、診断基準を作成することが可能となる。このような基準は、当然、特異度は低くなると考えられるが、治療を考えた場合、以下に早期に見出すかが重要と考える。疾患概念の創出が確定したこれらの疾患に関しては。今年度は、CSF1R突然変異キャリアの臨床データを収集し、特定の調査シートを使用してデータを標準化した。
結果と考察
神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症は、コロニー刺激因子1受容体遺伝子(CSF1R)の突然変異に起因するまれな神経変性疾患である。臨床像およびMR画像所見が非特異的であるため、正確な診断は困難である。今回、本症に石灰化が高頻度に合併することを、側脳室の前角に隣接する前白質および頭頂皮質下白質の1mm CTスキャンを用いて、明らかとした。これらの石灰化は、対称的な"stepping stone appearance"を示し、矢状CT画像が有効であった。1例では石灰化は出生時から認めた。
さらにCSF1R変異を有する神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症の90家族122例を自験例、および論文より解析した。発症の平均年齢は43歳(18〜78歳)、平均死亡年齢は53歳(23〜84歳)、平均発症期間は6.8年(1-29歳)であった。女性の発症年齢は男性より有意に低かった(40対47歳、P = 0.0006,)。年齢に依存した浸透率は、男女間で有意差があった(P = 0.0013)。運動機能障害は、20代に病気が始まった女性で最も頻繁に起きた初期症状であった。脳梁の菲薄化、錐体路における異常信号強度、拡散強調画像による異常信号、および白質における石灰化は、ALSPの特徴的な画像所見であった。石灰化は文献よりも頻繁に報告された(54%対3%)。突然変異の79%がCSF1Rのチロシンキナーゼドメインの遠位部分に位置していた(102例)。明らかな表現型 - 遺伝子型の相関はなかった。
結論
神経軸索スフェロイド形成を伴う遺伝性びまん性白質脳症にて、特徴的な石灰化パターンは、診断に有効であることを明らかとした。 またその表現型は、性別によって影響を受ける事を明らかとした。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610111Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,992,000円
(2)補助金確定額
4,992,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,835,181円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 7,560円
間接経費 1,152,000円
合計 4,994,741円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-06
更新日
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