難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究

文献情報

文献番号
201610109A
報告書区分
総括
研究課題名
難病患者の福祉サービス活用によるADL向上に関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-027
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院臨床研究開発部)
研究分担者(所属機関)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学・疫学)
  • 糸山 泰人(学校法人国際医療福祉大学 神経内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「難病の患者に対する医療等に関する法律」の成立と施行により、難病患者の支援制度は整備されてきたが、就労系福祉サービス事業の利用(福祉的就労)については活用されているとは言い難い。われわれは25~27年度に難病患者および全国の作業所を対象に大規模調査を行い、難病患者で作業所利用経験者はきわめて少なく、福祉的就労を「知らなかった」という回答が70%に及んだ(有効回答数1023)。一方、職場で受けたい配慮として難病患者があげた項目(作業時間・内容・場所、通院・ケア等)は、作業所で「すでに行っている配慮」の項目と一致していた。すなわちすでにある程度環境が整備され、支援ニーズベースの就労系福祉サービス事業所を活用することで、難病患者の日中活動の幅を広げ、ADL、QOL向上を図ることが期待できる。本研究の目的は、主として在宅生活をおくる難病患者が就労系福祉サービス事業(就労移行支援、就労継続A型、B型)を利用し、ADL、QOL向上をはかる手法を開発、提言することである。同時に、難病相談支援センターを中核とし、障害福祉制度周知および地域支援ネットワーク構築の推進に益するために効果的なシンポジウム開催を実施し、効果を検証する。研究初年度である28年度は、(1)休職者の復職における就労系福祉サービス利用の実態調査、(2)難病患者の就労系福祉サービス活用によるQOL向上に関する研究、(3)福祉サービス活用による就労支援シンポジウムの開催、を行った。なお当研究では、難病とは障害者総合支援法の対象となる332疾病と定義する。
研究方法
(1)は、埼玉県および東京都の就労系福祉サービス事業所のうち、主たる対象者に「難病等」を含む103カ所に質問紙調査を行った。(2)は研究初年度であるので、対象となる難病患者の登録と評価を行った。被験者は、平成28年10月以降に国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局で利用決定した難病患者連続例で、6名である。(3)は、基調講演2件(福祉系就労支援研究および労働・障害者雇用分野研究の成果報告)と、難病相談支援センターが構成するパネルディスカッション(地域の医療、福祉、保健、労働関係者と当事者等をパネラーとする)を基本企画とし、当研究班とシンポジウムを共催する難病相談支援センターを募集した。またシンポジウム開催が地域支援ネットワーク構築にどのように資するかを検討するためシンポジウム開催半年後となる札幌シンポジウム実行委員会にアンケート調査を行った。
結果と考察
(1)は、有効回答48.5%(45カ所)で、「休職中の人が事業所の利用を希望したことがある」は4カ所、「利用したことがある」は1カ所であった。この事業所に聞き取り調査を行った結果、元の職場に復職可能とした好事例であった。(2)は、6名の対象者に利用開始時の評価を行った。(3)は平成29年1月29日に佐賀市において佐賀難病相談支援センターと共催でシンポジウムを開催した。参加者71名。また札幌シンポジウムの実行委員会への調査では、委員個人の意識・知識の変化は概ねあるが、就労移行に関する相談増加やあらたなネットワーク構築には結びついていないことがうかがわれた。
難病患者の就労系福祉サービスの利用がQOL,ADLを変化させるのか、という検討は同サービスのエビデンスを明らかにする上で重要と考える。休職期間中の就労系福祉サービスの利用については、主治医が「より効果的かつ確実に復職につながることが可能」と判断すれば支給決定が可能、と今後厚労省より通知される予定である。就職後に疾病を発症し、診断・治療のため一定期間休職し、復職を希望する難病患者は多く、現時点ではほとんど活用されていないが今後重要な選択肢の一つとなる。次年度はサービス利用開始時のケースをさらに増やすとともに、サービス利用1年後の評価を開始し、サービス利用の効果について検討する。また就労支援シンポジウムについては、シンポジウム企画は参加者に高い評価を受けるが、それが地域の支援ネットワーク拡大を進める契機とするにはさらに検討が必要である。来年度は3カ所でシンポジウム開催を予定しており、さらに工夫を重ねたい。
結論
難病患者が就労系福祉サービス事業(就労移行支援、就労継続A型、B型)を利用し、ADL、QOL向上をはかる手法を開発、提言することを目的とし、研究初年度である今年度は、休職者の復職における就労系福祉サービス利用の実態調査、難病患者の就労系福祉サービス活用によるQOL向上に関する研究におけるサービス開始時の症例登録および初回評価、を行った。また難病相談支援センターを中核とした地域支援ネットワーク構築の推進および障害福祉の制度周知を目的とした就労支援シンポジウムの基本企画を決定し、佐賀市において佐賀難病相談支援センターと共催した。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-31
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610109Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,600,000円
(2)補助金確定額
3,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 591,779円
人件費・謝金 1,936,390円
旅費 635,079円
その他 436,752円
間接経費 0円
合計 3,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2018-03-12
更新日
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