成人の骨系統疾患患者のQOLに関する研究

文献情報

文献番号
201610108A
報告書区分
総括
研究課題名
成人の骨系統疾患患者のQOLに関する研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-026
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
鬼頭 浩史(名古屋大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 大薗 惠一(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 芳賀 信彦(東京大学 医学部附属病院)
  • 三島 健一(名古屋大学 大学院医学系研究科)
  • 松下 雅樹(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 門野 泉(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 山下 暁士(名古屋大学 医学部附属病院)
  • 杉浦 洋(名古屋大学 医学部附属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成29(2017)年度
研究費
3,150,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
骨系統疾患は骨格を形成する組織の先天的な障害により骨格の形成・維持に異常をきたす疾患の総称で、450種類以上の疾患があるが個々の疾患は稀少であり、発生頻度、重症度分類、疾患概念など確立されていないものも多い。ほとんどは有効な治療法がない難病で、対症治療がなされている。低身長に対しては内科的には成長ホルモン投与が、外科的には骨延長術が、O脚やX脚などの下肢アライメント異常に対しては装具治療や矯正手術が、骨脆弱性に対しては成人における骨粗鬆症治療薬の投与などが行われているが、小児期における治療体系は充分に確立されていない。また、長期成績や成人期のquality of life(QOL)を検討した報告もほとんどなく、小児期に行われる種々の医学的介入の長期的な効果は明らかにされていない。本研究は成人の骨系統疾患患者のQOLを調査し、患者の生涯にわたる問題点を明らかにするとともに、QOLの低下に及ぼす因子を検討することを目的とする。
研究方法
名古屋大学医学部附属病院生命倫理委員会にて本研究実施の可否および留意点に関して審査を行い、まず研究デザインおよび要件を明確にする。名古屋大学整形外科、東京大学リハビリテーション科、大阪大学小児科に通院歴のある骨系統疾患患者、および各種患者会(つくしの会、つくしんぼの会、骨形成不全症協会、骨形成不全症友の会など)会員で10歳以上の患者を研究対象とする。それぞれの施設の倫理委員会の承認を得たのち、研究を開始する。対象患者に対し、郵送でQOL調査票を用いたアンケート調査を行う。QOL調査項目は患者主観調査として包括的健康QOLであるSF-36、EQ-5D、関節評価尺度であるWOMACとする。その他診断名、身長、体重、これまでの治療歴、医療機関への通院歴、合併症などについても調査する。名古屋大学に通院歴があるものに関してはアンケート調査のほか、下肢アライメント、下肢関節可動域を、骨延長術施行例では延長量などをカルテやレントゲンから転記する。
結果と考察
軟骨無形成症では当初の予定をはるかに上回る181例より回答を得た。そのうち、70例に対してSF36における結果を解析した。各年代群の3コンポーネント・サマリスコア(Physical component summary:PCS、Mental component summary:MCS、Role/Social component summary:RCS)のうち、PCS(10歳代:46.6、20歳代:45.5、30歳代:36.3、40歳代:27.9、50歳以上:18.3)はいずれの群においても国民標準値より低下しただけでなく、年齢とともに悪化し、40歳代および50歳以上の群は10歳代の群と比較して有意に低下した。一方、MCS(10歳代:56.8、20歳代:51.2、30歳代:54.3、40歳代:53.2、50歳以上:53.6)は国民標準値とほぼ変わらなかった。RCS(10歳代:49.2、20歳代:51.8、30歳代:49.5、40歳代:51.8、50歳以上:43.5)は50歳以上の群において国民標準値より低下傾向であった。また骨延長治療の有無別に評価すると、年齢は未治療群で26.2歳、治療群で26.1歳だった。PCS、MCS、ROSはそれぞれ未治療群では43.0、53.2、47.0、治療群は43.0、54.0、50.7でいずれの項目にも有意差は認められなかった。これらの結果から、軟骨無形成症における身体能力は健常人と比較して下回り、特に高齢になるに従い著明に悪化するが、精神的・社会的QOLは健常人とあまり変わらなかった。また、骨延長治療の有無によるスコアの違いも認められなかった。加齢に伴う身体的QOLの低下は、脊柱管狭窄症による下肢筋力低下や疼痛に起因することが考えられる。このことから、軟骨無形成症では壮年期にできるだけ身体的QOLを上げておくことが重要であると思われた。本研究により稀な骨系統疾患に対する臨床像、長期予後が明らかとなり、重症度分類を含めた疾患概念が確立することが期待される。また、成人期のQOL低下に及ぼす因子を同定することにより、小児期からの適切な治療方針、治療体系を提示することができ、難病に対する治療水準が向上する可能性がある。
結論
70名の軟骨無形成症患者のSF36の結果を解析した。軟骨無形成症では身体能力は各年代で国民標準値より下回り、高齢になるほど低下する傾向にあった。一方で精神的・社会的QOLの低下は認めなかった。

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-06-08
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610108Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,095,000円
(2)補助金確定額
2,885,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,210,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 934,966円
人件費・謝金 0円
旅費 517,917円
その他 487,845円
間接経費 945,000円
合計 2,885,728円

備考

備考
1,210,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-03-09
更新日
-