特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究

文献情報

文献番号
201610106A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性後天性全身性無汗症の横断的発症因子、治療法、予後の追跡研究
課題番号
H28-難治等(難)-一般-024
研究年度
平成28(2016)年度
研究代表者(所属機関)
横関 博雄(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科、国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 皮膚科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤貴浩(防衛医科大学校皮膚科学講座)
  • 室田浩之(大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学皮膚科学)
  • 渡邉大輔(愛知医科大学皮膚科)
  • 中里良彦(埼玉医科大学神経内科)
  • 朝比奈正人(医療法人同和会神経研究所神経内科)
  • 岩瀬 敏(愛知医科大学第2生理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患等政策研究(難治性疾患政策研究)
研究開始年度
平成28(2016)年度
研究終了予定年度
平成30(2018)年度
研究費
3,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では改正されたAIGAの診療ガイドラインにある診断基準、重症度基準、治療アルゴリズムを用いて本邦における全国的なアンケート用紙を用いた予後追跡調査を施行しAIGAの発症頻度、発症因子、悪化因子を明らかにするとともに重症度基準とQOLの相関関係、ステロイドパルス療法の有用性を検討して重症度基準、治療法を確立する。東京医科歯科大学、愛知医科大学、埼玉医大、千葉大学の皮膚科、神経内科では専門外来を開設し、多数のAIGA患者に診療を行っており豊富な経験がある。これを背景に、各科横断的にAIGAの発症関連要因、重症化の危険因子、予後関連因子を解明していきたい。このアンケート調査を用いた疫学調査の結果を参考にして診療ガイドラインを再度改定する。
研究方法
(1)2014年8月から2015年8月の期間に東京医科歯科大学皮膚科及び研究協力病院(埼玉医科大学神経内科と千葉大学神経内科)で入院検査を行いAIGAと診断した患者を研究の対象とした。2015年8月に研究対象者の検査結果をベースにした重症度評価と、患者自己記入方式によるDLQI調査を実施した。調査はAIGAの診断基準を満たした44名を対象に行われた。男女比は、男性30名(68%)、女性14名(32%)で、平均年齢は36.55歳(15~75歳)であった。研究対象者には本研究の主旨を文章で説明し、調査に同意頂ける方は、回答を返送する方式とした。本研究は東京医科歯科大学医学部倫理委員会の承認を得て倫理的配慮のもとに行った。
(2)AIGAの17例(36±12歳:mean±SD)を対象とした.このうち,13例は無汗期,8例は寛解期に血清CEA値を測定した.4例は無汗期から寛解期の変動を検討した.さらに,罹病期間,無汗の重症度(範囲),コリン性蕁麻疹の有無と血清CEA値の関係を検討した.
(3)AIGA 22例と年齢と性別を一致させた健常人22例の血清CEAを測定した。そのうちAIGA 12例では、皮膚組織でのCEA発現と暗細胞のマーカーと考えられるdermcidin発現を免疫組織学的に検討した。
結果と考察
今年度は登録された3施設において入院検査によってAIGAと診断した患者44名に対し、重症度評価と患者自己記入方式によるDLQI調査を実施した。AIGAの重症度とDLQIの相関関係、DLQIの下位尺度別の障害度を評価した。調査の結果、重症度が高いほどDLQIは強く障害されており、DLQIの下位尺度では、特にレジャー(社会活動、スポーツ)の障害が強かった。他の皮膚疾患との比較では、AIGA患者のQOLはアトピー性皮膚炎患者と同等かそれ以上に障害されている可能性が考えられた。AIGAの重症度が高いほどDLQIは強く障害され、従来考えられていたよりも広範に日常生活に支障をきたしていることが明らかとなった。AIGAは現在、厚生労働省の指定難病になっている。指定難病の申請書の重症度は無汗面積を基準として25%-50%軽症、50%-75%中等症、75%以上を重症としている。AIGA診療ガイドラインでは軽症をスコア1、中等症をスコア2、重症がスコア3としているがこのスコアとDLQIは相関係数が0.488でありガイドラインの重症とDLQIの相関係数より低い。この結果は指定難病申請書の重症度はガイドラインの重症度より患者のDOLを反映しない可能性があり再度、指定難病の申請における重症度を検討する必要性がある。さらに無汗症状と血清CEA値との関連性を検討した結果、血清CEA値は無汗症が改善すると低下し,無汗症の治療効果判定の指標となり得ることが明らかになった。また、AIGA症例の無汗部位では幹細胞の減少と汗腺暗細胞の脱顆粒と細胞収縮が生じていることが判明した。
結論
AIGAの重症度とDLQIは相関しており、重症者ほどQOLの障害が強かった。他の皮膚疾患との比較では、AIGA患者のQOLはアトピー性皮膚炎患者以上に障害されている可能性が考えられた。またAIGA患者は、うつ熱/コリン性蕁麻疹に伴う身体的な苦痛の他に、スポーツ活動や通勤通学や外出が制限されたりする点で、従来考えられていたよりも広範に日常生活に支障をきたしていることが明らかとなった。AIGAでは汗腺CEA発現増加に起因した血清CEA高値を認める.また、血清CEA値は無汗症が改善すると低下し,無汗症の治療効果判定の指標となり得る可能性がある.

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2017-05-22
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201610106Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,500,000円
(2)補助金確定額
4,467,000円
差引額 [(1)-(2)]
33,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,581,400円
人件費・謝金 0円
旅費 1,107,002円
その他 740,979円
間接経費 1,038,000円
合計 4,467,381円

備考

備考
33,000円 返還

公開日・更新日

公開日
2018-03-08
更新日
-